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札幌国際芸術祭2014プレイベント第1弾「札幌の芸術文化史を知ろう!」 3・札幌アートのリニューアル

2013年09月12日 01時23分45秒 | 札幌国際芸術祭
 正式名称は

札幌国際芸術祭2014プレイベント第1弾「札幌の芸術文化史を知ろう!」札幌芸術文化史公開トーク 全10回開催 3・札幌アートのリニューアル―ベルリンの壁崩壊以降の流れ―

 タイトルが長いのは、この国際芸術祭がらみの催しの伝統なんだろうか。

 8月28日以来、毎週水曜の午後5時半から7時に、札幌駅地下歩行空間の北2条広場で行われており、きょうが3回目。
 ちなみに1回目は「国際芸術祭への軌跡」、第2回は「駅裏8号倉庫という現象」。
 また、第4回以降は
「札幌ビエンナーレ・プレ企画」
「地域のアートプロジェクト」
「札幌のアート界、現在の動き」
「北海道舞台芸術」
「札幌の音楽、先進的な試み」
「札幌のパブリックアート」
「北海道のアート史を振り返って」
となっており、いわゆる「美術」だけでなく、各分野に目配りした構成となっている。最終回は10月30日。
 司会はFM北海道で活躍する中田美知子さん。


 第3回は、映像作家で道教大教授の伊藤隆介さん、エスエア(アーティスト・イン・レジデンスなどを行うNPO法人)代表の柴田尚さん、札幌芸術の森美術館副館長の吉崎元章さんの3人が登壇した。
(ちなみに、芸術の森美術館の館長は第1回に登場しているが、道立美術館関係者・キュレーターは全10回を通して1度も出てこないのも、何気にすごい)

 タイトルのとおり、1989年に道立近代美術館で開かれた「RENEWAL-1990への前哨」展を柴田さんが回顧するところから、話はスタート。
 北海道の美術史的には、この「リニュアル」展は、北海道現代作家展や「TODAY」展に続く大型グループ展として期待されたが、わずか1度だけしか開かれずに終わってしまう。筆者はこの図録を一度も見たことがない。
 なので、参加者に、のちにデザイナーとして活躍することになる人が何人もいるという指摘は初耳だった。写真を見る限りでは、柴田さんや端聡さん、下岡孝之さんがいたようだが。
(なお、当時は「リニューアル」という語はまだ一般化しておらず、この展覧会は「リニュアル」と表記した)

 次に話を振られた伊藤隆介さんは「リニュアル」当時、米国にいたため、同展は見ていないとのこと。
 レーガノミックスが終わって不景気になり、絵が売れなかった時代の米国を振り返るとともに、ハンス・ハーケやポール・マッカーシーといった有名作家ですら大学などで教えないと食っていけないという話にそれていった。
 その後、柴田さんによる、フリースペースPRAHA(初期の)やエスエアの解説、吉崎さんによる、札幌芸術の森美術館開館時の狙いなど。
 中田美知子さんは、芸森というとサブカルにも強いというイメージがある旨の発言をしていたが、たしかに吉崎さんのいうとおり、海洋堂やガンダム、ジブリなどはいずれも21世紀に入ってからなのであった。

 締めくくりに、伊藤さんは、美術作家は美術作家と一緒にいないと育たないし、本物を見ることが大切なので、来年の国際芸術祭で大いに本物にふれてほしいと語り、柴田さんは「最近の口癖は『じゃ、君がやったら?』。エスエアも、誰もやらないから僕が始めた」と若者にハッパをかけ、吉崎さんは「若い世代は上の世代を否定しながら新しいものを作っていこうとするが、自分が上の世代になってみると、そうされるのが案外うれしかったりする」と若手の奮起を促すとともに「アートは作家だけじゃなくて、企画する人、パトロン、ボランティアなど、いろんな立場の人がさまざまにかかわっている」と話していた。


 話じたいがつまらなかったわけではないのだが、せっかく画像を投影しておいて、話とほとんどシンクロしていなかったのは残念。
 そして、話の内容と、タイトルが合っていない。少なくとも今回の話は、歴史の流れを学ぶというものでは、あまりない。

 あらためて気づかされたのは、1990年代半ば以降の北海道美術史が誰によっても書かれていないという事実である。
 1995年以前については、なかがわつかさ→今田敬一→吉田豪介さんの見事なリレーによってまとめられており、「北海道の美術史」(共同文化社)を読めば事足りる。しかし、95年以降については、簡単な歴史についても、皆無といってよさそうだ。


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2 コメント

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北海道美術ネットがあるじゃないか! (はしご)
2013-09-11 23:45:13
95年以降の北海道美術史。
それは梁井氏です!

…さておき。今田敬一よりなかがわつかさのほうがあとなんですね。
それにしても、色々言ってて面白い記事でした。さすがです!
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Re:北海道美術ネットがあるじゃないか! (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2013-09-13 00:48:53
まあ、わたしがやっているのは、歴史の素材みたいなもので、とうてい通史とは言えません。
通史は、もっと頭の良くて、いろいろ見ているキュレーターなどが書くべきでしょう。

ところで、なかがわの北海道美術の連載の方が、今田の「北海道美術史」より古いですよ。
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