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■第64回全道展 陳列と作品について(6月28日まで)

2009年06月26日 23時38分18秒 | 展覧会の紹介-団体公募展
 今回の全道展の陳列でいちばん目に付くのは、通称第2室といわれる、入場券売り場を通ってすぐの大きな部屋の変化である。
 この部屋は、いわば展覧会の「顔」であるという理由もあるのであろう。道展と全道展は、ここに彫刻をびっしり並べるとともに、絵画は2段がけにして、会員の優品や協会賞(最高賞)受賞作など多彩な画風の作品を並べるのが通例だった。
 そして、協会賞の作品は、絵画であれば、入り口から見える突き当たりの壁(第3室への通路のわき)と、相場が決まっていたのである。

 ことしは、ふだんなら協会賞受賞作を含めて2段がけで絵がならんでいた東側の壁が、会員の作品の1段掛けとなっていた。
 第3室以降は、会員の作品は1段掛けとするという、陳列の不文律を、第2室にも適用した格好だ。
 全道展でも、会員は号数制限があるはずだが、年に何人かは大きい作品を出せる枠がある(川本ヤスヒロは、その枠をよく活用して、超大作を出すことが多い)。第2室にならんでいた会員作品は、川本の「桂恋」をはじめ大型作品ばかりなので、この壁をその枠にあてたものと推察される。

 大作といえばもうひとり、度肝を抜くスケールの半立体を制作してきた深川の高橋要を挙げねばなるまいが、彼は退会したようである。

 なお、ことしの協会賞は2点で、絵画の佐藤仁敬は、北側の壁に展示されていた。もう1点、山口星子は版画のため、2階の版画部の中にあった。


 第3室以降は、コの字型の壁に会員が、固定壁に一般が展示されるのが常だったが、昨年の大量昇格のあおりで、固定壁にも主に新米会員の絵が並んでいたのが、ことしのもうひとつの特徴だと思う。
 それもあって、一般作品の多くが、2階の2段掛けの、上側に押し込められてしまったような印象を受ける。まあ、実力社会なので、やむをえないのだが…。


 そろそろ作品について述べよう。

 まず、絵画。
 会員はさすがに力作が多いが、総じて昨年までとの違いにとぼしい。

 その中で、本城義雄にはびっくり。
 昨年まで、古い道具類などを写実的に描いたスタティックな静物画だったが、ことしは画面中央に後ろ向きの裸婦が横たわり、古道具類が中景に配されたその向こう側には、風景がはるかに広がっている。70代の、あらたな挑戦である。

 中丸茂平
 枯れた草むらをリアルに描いているが、画面上方に空を渡っていく鳥の列が描きこまれ、草むらの中の「鳥の不在」を暗示している。
 鳥はかなり小さく、従来の遠近法がさりげなく無視されているのがおもしろい。

 個人的には富田知子、板谷諭使、鎌田俳捺子といったあたりが好み。板谷の作には癒やされる。
 近堂隆志の抽象大作も迫力十分だ。

 会友では、羽賀夏子の脱力さに、なんとなく心惹かれた。
 黒木孝子は、わずかに縦線が傾いたことにより、動勢が生まれたようだ。
 石本久美子は、モノクローム写真を思わせる画面。空襲や爆発事故の現場を思わせるなぞめいた光景。鈴木昭、西辻恵三、鳴海昭、そして会員の輪島進一、道新賞の平松佳和と、なんだかモノクロがはやりなのか!?

 協会賞の佐藤仁敬「paranoid II」は、床の上にすわりこんだキャミソール姿の女性と、そのすぐ上を飛ぶ馬をひとつの画面におさめたもの。女性の上に馬なんて、ふつうなら構図が破綻しそうだけどそうなっていないのは、この作者の伎倆のすごい高さを物語っている。

 松田知和「おなじ結末」が奨励賞。ずっと注目してきた人だったのでうれしい。
 この人の絵は、ただ「うまく」描くことよりも、心の叫びがこめられているように思うからだ。
 逆に言うと、全道展の一般クラスの絵は、「どう描くか」ばかりに気持ちが注がれていて、画家の強い思いを感じることがあまりないような気がしてならない。

 ほかに、海の上に浮かんだふしぎな物体を描いた池田宣弘「seanick」、夕暮れの街や道路を描いて元気良い上林潤子「ある日の街角 II」、こびとの人形や人物をたくみにちりばめた山下みちよも気になった。
 菅野真由も楽しい。いまの全道展に一番欠けているのは、こういうポップさや軽快さではないだろうか。  
 
 長くなってきたので以下別項


2009年6月17日(水)-28日(日)10:00-18:00(最終日-16:30)、月曜休み
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)




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