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■中橋修展 内包-内にあるもの black&blue (6月10日まで)

2007年06月10日 14時56分43秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 中橋さん(札幌在住)は、かつてはパステルで、シンプルな構図の絵画を描いていた。筆者が見始めた1990年代後半から立体も手がけている。
 とくにギャラリー門馬アネックスでの発表は、ギャラリー空間の特性を考え抜いた美しい展示になっていた。
 中橋さんが茶廊法邑(ほうむら)の空間に挑んだのははじめて。
 結論としては、アートスペース201での平面インスタレーションに近いが、そこから一歩踏み出したかっこうの展観となった。

 冒頭の画像は、会場の左側の壁。
 青と黒の、大きさもばらばらのキャンバスが、壁に不規則にかかっている。
 以下、左→奥(正面)→右→手前、というふうに視線を移動させると…。

            

 上方にある黒い丸ふたつは排気口であり、中橋さんの作品ではない。
 いっぽう、右下の壁にある黒い部分は、一見出入り口のように見えるが、中橋さんの手になる黒いキャンバスである。


            

 正面奥の壁に、黒と青をつなげた、縦長の、おなじ大きさのキャンバスが3枚ならび、右側の壁から、白い地に黒と青の矩形が描かれた作品が始まる。
 これが、いわば、新しい展開だ。


            

            

 作者ご本人によると、黒は宇宙、青は地球や人間をあらわし、最初、両者が混沌と入り乱れていたのが、自我の中で統一されていくプロセスを、画面全体で表現しているとのこと。
 つまり、白いキャンバスは自分自身であり、みずからの中に、宇宙が内包されているというのだ。
 私の中の宇宙-。ちょっとSF的で、哲学的なテーマだ。
 あるいは、青と黒の対立する命題が、白い画面でアウフヘーベンされているという、弁証法的な見方もできるかもしれない。

 しかし、そういう観念の解説がなくても、中橋さんのつくりだすシンプルな画面の乱舞は、じゅうぶんに美しい。
 中橋さんは、1回の個展でつかう色は、せいぜい1-3色。かたちも、バリエーションをしぼりこむ。すごく禁欲的な姿勢が、かえってひとつひとつの美しさを際立たせているのだと思う。


           

 なお、喫茶とギャラリーをつなぐ、カウンター席の背後の通路の窓際にも、黒い木製の球形の立体がひとつ置かれていた(艾沢さん以来、この場所に作品をそっと置くのがはやっているのかな?)
 同様の立体は、窓を超えて、喫茶部とギャラリーの間にある細長い庭にもいくつか配置されていた。

 画廊空間を一周して、外の世界へと旅立っていく中橋さんの思いを、象徴しているのかもしれない。
  

07年5月30日(水)-6月10日(日)10:00-18:00(最終日-17:00)、火曜休み
茶廊法邑(東区本町1の2)



中橋さんのサイト

06年の個展
■04年の個展
■03年の個展
■02年の個展


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