道教大日本画研究室の学生たちが毎年1月に開いていた「にかわ絵展」が終了した後、その後、同大出身者による「にかわえ展」が2007年からその後を継ぐかのように、毎年開催されている。
今回は、会場をぱっと見渡すと、あまり大きな作品が見当たらないので、ちょっとおとなしいのかな~と一瞬思ったけれど、じっくり見ていくとなかなか意欲作の多い展覧会だった。
初めて設けたテーマが「うちわ」。
うちわに絵を描くのは浮世絵のころにもよく行われていた。ただ、消耗品なので、現代まで残っているものは多くない。いまでも、百貨店がお得意様に配るために、日本画家がうちわや扇子に絵を描くことがある。
出品者全員が取り組んだうちわ17個がずらっとならんでいるさまは壮観。富樫はるかさんのように、タブローの画風とはちょっと違った、イラストふうの絵を描いている人もいる。
不思議なのは、全員が左右非対称の独特の形状だったこと。
また、野口裕司さんは、動く映像をうちわの面に投影していた。ユニークな取り組みだが、こんな小さな映写機があることにビックリ。
朝地信介さんは、黒や赤、紫などさまざま色が明滅する地に、白いオバケやもちのような形が膨らむ。支持体がでこぼこで、ガンタックの跡まであるのがおもしろい。
富樫はるかさんは2枚組み。様式化・単純化された針葉樹の森が舞台。左の絵では、写実的に描かれた野草の中を朱のキツネが歩き、右の絵では、赤い服を着た少女が歩いていく。童話のような世界だが、模様が入った布を支持体に使うなど、装飾性に意を用いている。
藤山聡さんは題がユニーク。少女が自分の頭に銃口を突きつけているさまを白っぽい色調で描いた絵に、なぜ消費社会論で名高いフランスの社会学者の姓が入った題を付けているのかよくわからないが、おもしろい。
B室では、吉川聡子さんが圧巻。
シラカバ林の中の獣や鳥と7人の若い女性のさまざまなポーズを描いている。
とにかくいつ見てもうまいのだが、今回は、輪郭線を強調し、暖色のみを用いるなど、描法にも気を配っている。
彼女の絵はイラストレーション的だが、そのことが価値を低めているとはまったく思えない。永遠とか無時間性を感じさせる風景画や裸婦も結構だが、現代のファッションに身を包んだ女性を生き生きと描く彼女の絵を見ると「アクチュアル」という語を思い出させるのだ。決然と現在を描くのも、潔いことだし、彼女の絵が身近に、リアルに感じられる理由は、まさにそこにあるんだと思う。
池田さやかさん「淵 II」は、長方形の支持体を上下ずらして接合させた作品。群青の地に、裸婦がうつぶせに寝ている様子を上半身だけ入れているのだが、曲げた腕が極端に長く描かれている。
駒澤千波さんも、北海道教職員美術展などに見られたこれまでの作品と、かなり画風を異にしている。黒っぽい背景が何より珍しい。暗い海を泳ぐ熱帯魚と、へたり込むように坐る女性。不思議な三股の図形が水流のように画面をおびただしく横断する。
内藤まゆさん「季樹」は、ありえない1本の木がモティーフ。桜やアジサイ、菊などがおなじ樹上に咲いているのだ。さらに虹が架かってチョウが舞い、全体が幸福感に満ちている屏風仕立ての作。
百野道子さん「游」は、朱色のタコ。昨秋の道展出品作と似ている。
村木愛さんは、野原を覆い尽くす野草の群落としては、かなり寂しげなのが目を引く。
野口裕司さんは、カーブさせたアクリル板に墨をながした。
C室では、高さ1メートル弱の透明なアクリル板を屏風状にして林立させ、自作の音楽をながしながら抽象画のようなアニメーションを投影させるインスタレーションの個展も開いている。
出品作は次の通り。
朝地 信介「ゆらゆらと I」(S50) 「ゆらゆらと II」(S50)
池田さやか「淵 II」73×120cm 「アスパラガス」162×98cm
今橋香奈子「南風」S40
笠嶋 咲好「水中花」F30 2枚組
熊崎みどり「断片」65×106cm
駒澤 千波「夜気」91×181cm
富樫はるか「snow」M25 2枚組
内藤 まゆ「季樹」95×107cm 「花鏡」46×110cm
野口 裕司「ながれ」180×30×30cm
百野 道子「悠」F100
藤山 聡「ねぼけたボードリヤール」F20 「ゆめに咲いた輪のかずかずは起きてみた」F15 「白壁のヒト科ヒト目サルの文字は夕陽に映える」F8
丸野 仁美「過ぎる時」F6 4枚組
宮町 舞子「こねこ」F6
村木 愛「セイタカアワダチ草」F80
村山 聡「比翼」92×92cm 「苦花」51×36cm
吉川 聡子「私たちはここにいる」910×233.4cm
2010年1月11日(月)-16日(土)10:00-6:00(最終日-5:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■第3回
■にかわえ展(08年)
■第1回にかわえ展(07年)
■吉川聡子日本画展(09年1月)
□富樫さんのサイト「はるかはる」 http://harukaharu.fc2web.com/
□駒澤さんのサイト「KOMAKOMA」 http://chinakoma.web.fc2.com/
□吉川さんのblog「Blue Wings Blog」 http://pub.ne.jp/bluewings/
今回は、会場をぱっと見渡すと、あまり大きな作品が見当たらないので、ちょっとおとなしいのかな~と一瞬思ったけれど、じっくり見ていくとなかなか意欲作の多い展覧会だった。
初めて設けたテーマが「うちわ」。
うちわに絵を描くのは浮世絵のころにもよく行われていた。ただ、消耗品なので、現代まで残っているものは多くない。いまでも、百貨店がお得意様に配るために、日本画家がうちわや扇子に絵を描くことがある。
出品者全員が取り組んだうちわ17個がずらっとならんでいるさまは壮観。富樫はるかさんのように、タブローの画風とはちょっと違った、イラストふうの絵を描いている人もいる。
不思議なのは、全員が左右非対称の独特の形状だったこと。
また、野口裕司さんは、動く映像をうちわの面に投影していた。ユニークな取り組みだが、こんな小さな映写機があることにビックリ。
朝地信介さんは、黒や赤、紫などさまざま色が明滅する地に、白いオバケやもちのような形が膨らむ。支持体がでこぼこで、ガンタックの跡まであるのがおもしろい。
富樫はるかさんは2枚組み。様式化・単純化された針葉樹の森が舞台。左の絵では、写実的に描かれた野草の中を朱のキツネが歩き、右の絵では、赤い服を着た少女が歩いていく。童話のような世界だが、模様が入った布を支持体に使うなど、装飾性に意を用いている。
藤山聡さんは題がユニーク。少女が自分の頭に銃口を突きつけているさまを白っぽい色調で描いた絵に、なぜ消費社会論で名高いフランスの社会学者の姓が入った題を付けているのかよくわからないが、おもしろい。
B室では、吉川聡子さんが圧巻。
シラカバ林の中の獣や鳥と7人の若い女性のさまざまなポーズを描いている。
とにかくいつ見てもうまいのだが、今回は、輪郭線を強調し、暖色のみを用いるなど、描法にも気を配っている。
彼女の絵はイラストレーション的だが、そのことが価値を低めているとはまったく思えない。永遠とか無時間性を感じさせる風景画や裸婦も結構だが、現代のファッションに身を包んだ女性を生き生きと描く彼女の絵を見ると「アクチュアル」という語を思い出させるのだ。決然と現在を描くのも、潔いことだし、彼女の絵が身近に、リアルに感じられる理由は、まさにそこにあるんだと思う。
池田さやかさん「淵 II」は、長方形の支持体を上下ずらして接合させた作品。群青の地に、裸婦がうつぶせに寝ている様子を上半身だけ入れているのだが、曲げた腕が極端に長く描かれている。
駒澤千波さんも、北海道教職員美術展などに見られたこれまでの作品と、かなり画風を異にしている。黒っぽい背景が何より珍しい。暗い海を泳ぐ熱帯魚と、へたり込むように坐る女性。不思議な三股の図形が水流のように画面をおびただしく横断する。
内藤まゆさん「季樹」は、ありえない1本の木がモティーフ。桜やアジサイ、菊などがおなじ樹上に咲いているのだ。さらに虹が架かってチョウが舞い、全体が幸福感に満ちている屏風仕立ての作。
百野道子さん「游」は、朱色のタコ。昨秋の道展出品作と似ている。
村木愛さんは、野原を覆い尽くす野草の群落としては、かなり寂しげなのが目を引く。
野口裕司さんは、カーブさせたアクリル板に墨をながした。
C室では、高さ1メートル弱の透明なアクリル板を屏風状にして林立させ、自作の音楽をながしながら抽象画のようなアニメーションを投影させるインスタレーションの個展も開いている。
出品作は次の通り。
朝地 信介「ゆらゆらと I」(S50) 「ゆらゆらと II」(S50)
池田さやか「淵 II」73×120cm 「アスパラガス」162×98cm
今橋香奈子「南風」S40
笠嶋 咲好「水中花」F30 2枚組
熊崎みどり「断片」65×106cm
駒澤 千波「夜気」91×181cm
富樫はるか「snow」M25 2枚組
内藤 まゆ「季樹」95×107cm 「花鏡」46×110cm
野口 裕司「ながれ」180×30×30cm
百野 道子「悠」F100
藤山 聡「ねぼけたボードリヤール」F20 「ゆめに咲いた輪のかずかずは起きてみた」F15 「白壁のヒト科ヒト目サルの文字は夕陽に映える」F8
丸野 仁美「過ぎる時」F6 4枚組
宮町 舞子「こねこ」F6
村木 愛「セイタカアワダチ草」F80
村山 聡「比翼」92×92cm 「苦花」51×36cm
吉川 聡子「私たちはここにいる」910×233.4cm
2010年1月11日(月)-16日(土)10:00-6:00(最終日-5:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■第3回
■にかわえ展(08年)
■第1回にかわえ展(07年)
■吉川聡子日本画展(09年1月)
□富樫さんのサイト「はるかはる」 http://harukaharu.fc2web.com/
□駒澤さんのサイト「KOMAKOMA」 http://chinakoma.web.fc2.com/
□吉川さんのblog「Blue Wings Blog」 http://pub.ne.jp/bluewings/
ギャラリーミヤシタで
木村環さんの
「私たちはどこへ行くのか」
壁一面の大作が圧巻でした。
その後時計台ギャラリーへ。
吉川聡子さんの
「私たちはここにいる」
木村さんの作品と偶然にも
ほぼ同じサイズでした。
関連性も何もありませんが、
どちらも力作、大作です。
それは見に行かねば。
情報ありがとうございます!