シュルレアリスムの団体として、太平洋戦争の前夜に発足した美術文化協会。全国規模の公募展のなかでは有名なほうですが、規模はさほどでもなく、くじ引きの結果、六本木の新国立美術館へ移転できず、いまも東京都美術館で3月に展覧会をひらいています。
北海道支部は毎年この時期に展覧会を開催していますが、顔ぶれが、新道展とかなりの部分だぶっているので、制作・出品はかなりタイヘンだろうと思います。
今回、永井唄子さん(北斗市)の出品がないようです。
平野真記子さんは新顔。
ソフトスカラプチャー2点を出品しています。
「心のうら側」はちょっとニキ・ド・サンファルを思い出させる、ポップな作風です。
「手を取り合って進む」は、巨大なバッグのようなかたちで、持ち手の部分が4本の白い手のかたちになっています。バッグの内側には、「どんどん」「もじょもじょ」など、意味のない文字が書かれています。
筆者は金子賢義さんには一度もお会いしたことがないのですが、都市が炎上するさまを描いた作品など、どこかたどたどしいタッチは、世を捨てた老人が現代文明を呪詛しているような恐ろしさを感じていました。
今回は、あらゆるものを塗り込めたような抽象画です。とくに「作品B」の黒さは、絵の具の下に何があるのか、空恐ろしさを感じさせるのです。
画像の右側にあるのは、三浦さんです。
黄緑の上にレモンイエローを奔流のように乗せて、水色の弧などを加え、軽快な画面を構成しています。
平野さんのソフトスカラプチャーの向こう側に見えるのは、大林さんの絵です。
大林さんは、以前は、荒れた風景に、得体が知れないしわだらけの物体が転がっている(うごめいている?)絵を描いていましたが、だんだんそのしわが背景にも広がっていき、いまでは、空をのぞくほぼ全体を覆うに至っています。
「前は気持ち悪いって言われてね。ほんとはもっとさわやかな絵をかきたいんだけど」
と大林さんはおっしゃっていましたが、本心でしょうか?
右側は、リアルな描写で廃墟のような風景を描く鈴木さんの2点。
ビリジアンの色面が、いつになくめだちます。
左側は藤野さんの「かみさまの椅子2」。
またも新作。精力的な制作には頭が下がります。
画面の隅々までを、白や水色の線の反復が覆っており、まばゆい宇宙空間のような酩酊する楽しさがあふれています。
右は、近年画風を変えた西田さん。
宇宙船の基底部にも、金属の花にも見える、中空に浮かぶ3つのものはなんでしょうか。
それにくらべると、砂漠のような地上をゆく23人と3頭の馬は、ひどく小さく感じられます。
小品「再会」は、性別不詳の、禿頭(とくとう)の人物の肖像です。
画風が変わったといえば、柳川さんの絵にもあらたに登場した要素があります。
灰色のやせこけた鳥3羽です。2点いずれも、中央部に、あまり大きくなく描いています。
羽の部分がやせていて、みすぼらしい感じがするので、飛べるのかどうか心配になってきます。
鳥の周囲は、風に揺れる布でたくさん埋め尽くされ、これまでの柳川さんの絵のトーンになっています。
出品作はつぎのとおり。
青山清輝(岩見沢)「存在-オブジェ的発想による空間思考'06-51」「存在-オブジェ的発想による空間思考'06-52」
大林雅(札幌) 「掃き溜め(A)」「掃き溜め(B)」
金子賢義(札幌)「作品D」「作品B」「作品C」
平野真記子(札幌)「手を取り合って進む」「心の裏がわ」
細野弥恵(札幌)「導く鳥 光もたらすもの1」
藤野千鶴子(札幌)「宙-かみさまの椅子1」「宙-かみさまの椅子2」
柳川育子(札幌)「迷鳥I」「迷鳥II」
鈴木秀明(函館)「残像」「人形のいる風景」
山形弘枝(函館)「鳴々I」「鳴々II」
西田靖郎(渡島管内八雲町熊石)「巡礼」「再会」
三浦恭三(小樽)「移行過程6」「移行過程5」
宮澤克忠(帯広)「ガングロ駒子のイタリア紀行」ほか小品2点
07年9月10日(月)-15日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■第34回(06年)
■第31回(03年、画像なし)
■第30回(02年、画像なし)
■第29回(01年、画像なし)