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■西村明美銅版画展 (5月16日まで)

2007年05月14日 20時47分23秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 札幌の銅版画家、西村明美さんの個展。
 札幌ではじつにおよそ15年ぶりの開催ということです。

 ご覧のとおり、植物がおもなモティーフ。とてもリアルに描写しています。ギャラリーがお花屋さんになったみたいです。
 ですが、いわゆるボタニカルアートと異なり、背景を白く飛ばしているわけではなく、百合などの花で画面をびっしりと覆ったり、あるいは明度を落として描写した花を、周囲に配したりしている作品が多いようです。

           

 技法はエッチングとアクアチントの併用で、最後にシュガーアクアチントをつかうこともあります。陰影はアクアチントでつけるそうです。
 何度も腐蝕をくりかえし、どれだけ腐蝕させたかで、明度が異なるとのこと。
「ただし、いったん液をふきとると、もうやり直しはきかないし、冬の間は(銅版が冷えているので)腐蝕の時間を、夏なら20分のところを1時間20分にするなど思い切り延ばすんですが、それでも狙ったとおりの黒が出ないことがあったりして、タイヘンです」
と西村さん。

 箔をつかった作品も多いです。
 刷りの終わった紙の上に銀箔などを貼り、さらにその上から、下の紙とおなじように刷った雁皮紙(がんぴし)を重ねた作品もあります。
 学生時代には油絵で抽象画を描いていたという西村さん。正方形のかたちにひかれるところもあるようです。
 「○、□、△に始まって、丸、四角、三角に終わる、みたいな。デッサンも好きだったんですが」

           

 順番が前後しましたが、冒頭の画像は、右から
「連続する日常」
「連続する感情関数 x=a」
「連続する感情関数 x=b」
です。いずれも近作で、あとの2作は、現在、東京・上野でひらかれている版画展(日本版画協会展)でも展示されているそうです。
 下のほうに見えるドーナツ型はハードディスク。あらゆることが記号化、デジタル化されていく現状に対する、作者の憂慮がそれとなく表現されています。
 西村さんの作品には、人物は登場しません。
「はっきりかくよりも、人間の存在を暗示させたい」
 近作は、人間を描かずに、精神的なものを表現した作品として、作者の新しい方向性をしめしているように、筆者には感じられました。

 西村さんはこの春、長い間フルタイムで勤めてきた専門学校の講師を
「(人生の)残り時間を考えて」
辞め、制作に専念することになったそうです。
 これまでは、休日に道展や版画展の作品を作ることはあっても、個展などはとても時間的な余裕がなくて、できなかったのですが、今回はひさしぶりに小品を5点制作し、展示するなど、あたらしい歩みを始めています。
 9月にも個展をひらく予定だそうです。


07年4月21日(土)-5月16日(水)10:00-17:00、日曜・祝日休み
ギャラリー山の手(西区山の手7の6)

□西村さんのサイト


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