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■西村計雄の日本紀行 (2015年7月16日~10月12日、共和)

2015年10月04日 22時33分32秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
承前

 筆者が西村計雄記念美術館を訪れたのは2002年8月以来、ほぼ13年ぶりのことだと思う。

 西村計雄(1909~2000)は、小沢(こざわ)村(現在の後志管内共和町小沢)生まれ。
 東京美術学校を出て戦後の51年、パリに渡り、ピカソの画商として知られたカーンワイラーに評価されて、長くパリで活躍した画家。最晩年は東京にアトリエを構えた。

 記念美術館は小沢ではなく、昭和の大合併で誕生した共和町の役場に近い丘の上に建っている。

 今回の所蔵品展は、初期の作品から、渡仏後の東洋趣味を漂わせる半抽象画、さらに70年代以降に日本各地の印象を描いた連作まで、画業を全体的に振り返ってみる構成になっていた。

 渡仏前の作品では、35年「子供」から48年「父、久太郎」にかけて描かれた人物像が、たて位置の同じ大きさで、あたかも連作のようだ。タッチもよく似ている。

 48年「樗牛瞑想の松(仙台)」は、そもそもこういう松があるとは知らなかった。高山樗牛ちょぎゅうとは、ニーチェの紹介や小説「滝口入道」で知られる明治期の文人であり、西村計雄の時代にはまだ読まれていたのだろうか。

 70年代以降の「日本紀行」にあたるパートには、京都、桜島、支笏湖、層雲峡、余市、雷電など、道内外あちこちにインスパイアを得た作品が並ぶ。
 もとより空撮のようでもなければ観光絵葉書でもない。ただ、たとえば京都には五重塔や和風家屋の意匠が取り入れられたり、桜島の絵には噴煙らしきものが認められるなど、その土地土地で得られた印象がたくみに絵に反映しているといえそうだ。

 画面全体を覆う黒い線は、斜めに走り、作品に動感を与えている。
 これが、垂直と水平であったら、まったく違う感じが得られたであろうと思う。 



2015年7月16日(木)~10月12日(月)午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
月曜休み(月曜が祝祭日の場合は翌日)
西村計雄記念美術館(後志管内共和町南幌似143-2)




・中央バス「高速いわない号」の「共和役場前」から約850メートル、徒歩9分


参考
きょう、西村計雄(共和生まれ、パリで活躍の画家)が生誕100年

(この項続く) 


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