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’文化’資源としての<炭鉱>展 I =12月27日まで 09Nov・東京(2)

2009年12月08日 23時45分16秒 | 道外で見た展覧会
承前

(このエントリの画像も、許可を得て撮影しています。All photographs are permitted.) 

 結論からいうと、こんなに興味深い展覧会はない。東京方面の方は必見だ。
 日本の近代の歴史をつくってきた要素のひとつである石炭産業に焦点を当て、おもに北海道(夕張、美唄、釧路など)、常盤(福島県)、筑豊(福岡県)の3炭田にある美術館などが所蔵する絵画、写真など数百点を展示している。
 また、隣接する区民ギャラリーには、世界的な現代美術作家である川俣正(三笠出身)の巨大な新作インスタレーションが展示されている。

 同館の方によると、もともとは川俣氏の新作展をやろうという話から始まったらしい。
 福岡県田川市につづき、道内やドイツ・ルール地方でも炭坑がらみのプロジェクトに取り組もうとしている川俣氏から、炭坑全体でやっては-という提案があり、準備を始めたという。何年も前から用意していたというわけではないらしい。
 ただ、地味な題材のせいか、入場者数は驚くほど少ないと、学芸員氏は苦笑しておられた。

 野見山暁治、横山操、佐藤忠良…らの絵画、北海道から出品された小林政雄、岡部昌生、畠山哲雄。筑豊を題材にしたザラ紙の写真集がベストセラーになった戦後写真界の巨人である土門拳。
 ほかにも向井潤吉、池田龍雄、佐藤時啓、奈良原一高ら、そうそうたる顔ぶれである。
 こういった一線級の画家や写真家たちも、たしかにすごいのだが、そのすごさに、無名な人々がのこした記録の絵や写真の迫力が拮抗きっこうしている。そこが、この展覧会のミソじゃないかと思う。
  
 冒頭写真は、福岡県田川市に所蔵されている、山本作兵衛の水彩画。
 炭鉱の仕事を半世紀にわたって務め、山をおりてから往時を思い出して筆を執ったという。1984年、92歳で亡くなった。
 絵描きとしては完全な素人で、絵の中に文字がたくさん書かれていたりするのだが、体験した当人でなければわからない迫真さがあり、かえって斬新だ。

 この絵にほれこんだ、「九州派」の画家、菊畑茂久馬が、東京の「美学校」の教壇に立つ際(1970-71年)、学生に模写させた油絵の大作も展示されている。これが、大変な迫力なのだ。 



 図録に載っているインタビューを読むと、菊畑さんは、美学校から先生になってくれと言われたとき、断る口実のつもりで、模写の話を持ちかけたところ、美学校側が夢中になってしまい、福岡から東京まで通う羽目になったということらしい。
 200号キャンバス9枚である。黙々と模写し続けた学生の皆さんもすごいし、場所や画材を提供した美学校(現代思潮社)もえらい。
 なお、当時の学生の中に、南伸宏という名が見えるが、これはのちの南伸坊氏ではないだろうか?

 ついでに言えば、当時のポスターの写真は、図録には収載されていないようだが、独特の極太明朝体は、赤瀬川原平氏の手描きではないだろうか? 





 このペースで書いていくといつまでたっても終わらないなあ。
 上の画像は、夕張の美術館で、来訪者を出迎えていた山内壮夫「労働のモニュメント」。
 いささか本題から外れるが、この作品でも、サインは「YAMAUTI」となっている(YAMANOUCHI、ではない)。

 後ろにならんでいるのは、80代でいまも健筆をふるう福岡出身の画家、野見山暁治の絵画。


この項続く

2009年11月4日(水)-12月27日(日)10:00-6:00(入場-5:30)、月曜休み(祝日は開館し翌火曜休み)
目黒区美術館(目黒区目黒2-4-36)http://www.mmat.jp/



・JR山の手線「目黒」駅から徒歩9分

□コールマイン研究室 http://coalmine.jugem.jp/
□毎日新聞「アートの風」(参考) http://mainichi.jp/tanokore/art/002578.html
□あおやぎ通信(参考) http://yaging.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-2afa.html
□Diary written with English language skill at dog level(参考)http://blogs.dion.ne.jp/drawinghell/archives/8923997.html

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