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■東松照明写真展 太陽の鉛筆 (2016年4月23日~6月26日、札幌)

2016年06月14日 01時01分01秒 | 展覧会の紹介-写真
 戦後日本を代表する写真家、東松照明とうまつしょうめい(1930~2012)の写真展が札幌で開かれている。
 写真を撮る人、好きな人は見たほうがいいと思う。宮の森美術館によくある「好評につき会期延長」は、今展覧会は、たぶんない。次の展覧会が決まっているからだ。
 ただ、じゃあどこがいいのかと聞かれると、これほどことばで説明することがむずかしい展覧会も珍しいというのが率直な感想だ。

 代表作の写真集「太陽の鉛筆」が再刊されたのが開催のひとつのきっかけなのだろう。
 展示作は、この写真集から、沖縄を舞台に撮ったモノクロ37枚、沖縄から東南アジアに視野を広げたカラー20枚。1969~73年に撮影されたものが中心だ。
 それぞれのプリントには「黒島」「西表島」「伊良部島」「宮古島」などとさまざまな島の名がキャプションで付けられているが、使用機材など他の註釈はいっさいない。海外の場合は「台湾・基隆」「バリ島」「インドネシア ジョグジャカルタ」など、島ではない地名がついている。
 沖縄本島の写真はほとんどない。ずいぶんあちこちに行っているのだなあと感心する。

 とらえられているのは、竹馬に乗る人、舟をこぐ人、雑魚寝する男女、住宅地を横切る犬の群れ、大きな葉を頭につけた4人の人物、祭りなどさまざまで、まさにスナップとしか言いようがない。しかし、雑な感じは一切なく、さすが構図などは決まっている。
 人物や祭事が多いものの、たとえばこれらの写真群で最も有名であろう「波照間島」は、ななめに傾いた水平線の上に白い雲がぽっかりと浮かんでいるさまをとらえている。とりたててエキゾチシズムを感じさせるものばかりにレンズを向けているわけでもないのだ。

 筆者がいだいた第一印象は、意外と距離を取ってクールに見ているな―というものだった。
 東松は沖縄に移り住むほどだから、沖縄へ寄せる愛情は人一倍のはずなのに、写真からはそうした熱狂のようなものはあまり感じられない。少し下がって、冷静に視線を向けている。

 戦後写真史における東松の位置づけとして、森山大道や中平卓馬ら後続に大きな影響を与えたことがよく指摘される。
 たしかに森山大道が、けっこう当てずっぽうにシャッターを押しているかのように見えて適切な構図の作品を生み続けているのは、東松の薫陶や影響があってこそのようにも思う。そして、スナップを撮る行為において、森山も中平も、東松を乗り越えようとすることで制作を続けていけたのもまた確かなのだろう。



2016年4月23日~6月26日(日)午前10:30~午後7:00(入場~午後6:30)、祝日を除く火曜休み
札幌宮の森美術館(中央区宮の森2の11)
一般800円、60歳以上・高大生600円、中学生以下無料




・地下鉄東西線「円山公園駅」から、ジェイアール北海道バス「円14 荒井山線 宮の森シャンツェ前行き」「円15 動物園線 円山西町2丁目行き」「同 円山西町神社前行き」に乗り「宮の森1条10丁目」で降車、約370メートル、徒歩5分。
・地下鉄東西線「西28丁目駅」からジェイアール北海道バス「西20」「西21」(いずれも「神宮前先回り)に乗り「宮の森1条10丁目」で降車、約370メートル、徒歩5分。

・地下鉄東西線「円山公園駅」1番出口から約1.38キロ、徒歩18分。「西28丁目駅」から約1.43キロ、徒歩18分


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