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山本夏彦「祖国とは国語である」

2012-03-08 | カルチャー
故山本夏彦さんの『完本 文語文』を読む。
文語文とは奈良時代から1000年続いた
漢文の読み下し文のこと。関東大震災の
あたりでほとんど使われなくなる。



「口語文にもよいところはあると承知
している」と断りながら、失ったものは
モラルだと、語る。

「文語文のなかには共通のモラルが
流れている。それは芝居や講談落語にも
流れているのと同じもので、それを
私たちは失った」

芝居や落語を通じて生き方やものの道理が
身についたのは間違いない。



江戸末期や明治初期に欧米へ行った使節が、
歓迎され尊敬されているのはなぜだか長年の
疑問なんだけど、山本夏彦さんは「人が尊敬
されるのは通俗のモラルによってである。」
と語る。

学問や芸術ではない、たしなみがあるから
「ホイットマンの詩中にその挙措進退を賛美
されたのである。」

震災の時といった生命の危機に遭遇するとその
モラルが回復するのではないか。底流に残され
ていると思う。



「教育は前代の遺産を後代に伝えるもので、
だから本来保守的なもので、洋の東西を
問わず昔は古典を読むことだった。(中略)
極端に言えば十冊か二十冊である。」

文語文がわかれば1000年前まで戻れる。
源氏物語はじめ、古典がそのまま読めたのにね。



思想家のシオランの言葉を引用していて
「私たちは、ある国に住むのではない。
ある国語に住むのだ。祖国とは、国語だ。」


Emile Michel Cioran(1911 - 1995)

ルーマニア人のシオランは1937年26歳にフランスに
渡ってずっと住み着く。なのに10年間1947年までは
フランス語で文章を書いていなかった。

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