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写真家・宮崎学『となりのツキノワグマ』

2013-12-15 | 農・生物
宮崎学さんの森の動物生態写真を清里フォトアートミュージアムで
見たことはここで書いたけど、クマが増えてるっていう本を読む。

彼のフィールドは中央アルプスなんだけど、1982年頃から自動撮影
カメラを設置して、定点観測を続けている。当初クマはほとんど写っ
ていなかったそうだけど、2005年に再開して驚きはる。



さまざまなクマ(イノシシも)がけもの道に仕掛けたカメラに写った
から。以前多かったノウサギ、アナグマはほとんど映らない。「わず
か20年の間に、自然は着実に変化していたのである。」

かれの好奇心は面白くって、次に遊歩道にカメラを設置する。すると
昼間はハイキングを楽しむ人達がたくさん通る道を、夜にはクマたち
が、「わが物顔に闊歩していたのである。」



彼の考察によれば、中央アルプスの森も放置され、様々な植物が繁茂。
「動物たちにとっては最高に住みやすい環境になっているのだ」と。
限界集落ではないけど、人口も減ってそうだから動物たち環境が好転
しているのかも。

「荒廃」とは林業を経済的視点でみて言っていることであって、
いま現在ある日本の山野は、樹木の側から環境を見ていけばけっ
して「荒廃」なんてしていません。

もちろん減っている動物もあるだろうし、ツキノワグマのなかでも、増
減グループ差はあるだろう。ちょうど鯨も50種類あるなかで絶滅の危機
にあるのは10種類程度であるみたいに(「鯨は絶滅寸前という誤解」)。



食べ物に関してだけど、ドングリが不作だとクマが里に出没するというの
は常套文句にすぎないと宮崎さんは批判する。ドングリだけ食べてるわけ
ない、と。木の実、果物、ハチミツ、アリのさなぎ、イワナやマス、鹿や
カモシカの弱った個体まで・・クマの糞の観察の賜物。

好き嫌いに個体差があって、たとえば、ハチミツが好きなツキノワグマ
は1割程度ではないかと、推察している。

冬眠する木の洞を作る実験をするため、クマ用の巣箱を作ったら遊びに
クマが入ったのも傑作。



最近のクマ調査では毛によるDND鑑定による研究も行われているそうだ
けど、有刺鉄線の罠をしかけて、通過するクマの毛をとるらしい。それ
も宮崎さんの手にかかれば、巣箱を調査したい場所にかけるだけで、鳥
たちが半径100メートル以内に落ちている毛を集めてくれるそうだ。

批判的精神と実験的精神に富んだフィールドワークがとても面白い。
彼のサイトは、こことかここ

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