五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 今月のナポレオン

2017年07月31日 | ◆[不定期] ヤングキング・アワーズ

ヤングキングアワーズ 2017年9月号より
 
 
 
 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 
 
 
 
 

●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)

 

 8月30日、コミックス13巻・発売! そんな今回、ミノタウルス!?

 円形闘技場に現れた牛頭の人間・・・
 そこはスペイン名物「闘牛」が行われる場所。

 観客たちは戸惑うものの、その人物がフランスの軍服をまといっているのを見て、
 軍団長のスーシェであることに気付きます。

 「フランス人が狂ったぞ」なんて言われてますが、はたしてスーシェは何を考え、
 何をなそうとしているのか、気になる冒頭となりつつ、今回の主役であるスーシェを
 強く印象付けていました。

 

 

 

 ルイ=ガブリエル・スーシェ。

 ランヌ存命時には、信任厚い副将格として活躍した人物。
 サラゴッサを陥落させ、甚大な被害が出たことを憂いている様子のランヌさんから
 「どうしたらいい?」と尋ねられ、スペイン人と協力して再建することを勧めています。

 このように、粗野さがなく、フランス軍では珍しく理性を重んじるタイプで、
 ランヌさんなどは、スーシェは自分より優秀かもしれないと言うほど評価しています。

 しかし「熱心な共和主義者だった」ことと「マッセナを嫌っている」ことが、
 出世が遅くなっている理由だと、自分で述べていたのは面白かった。
 実際、マッセナへの印象は悪かったようですね。

 それから、ランヌさんの推薦で軍団長となり、「混乱を治めるのは理性」の方針をもって、
 スペイン人への処遇を改め、きわめて忍耐強い、公正な統治をおこなっていたのは、
 まことに素晴らしいことでした。

 「怒りは恐怖から生まれる」と述べ、ゲリラの横暴に、民を殺して報復しようとする部下を
 諭していたのが印象的でしたし、さらに、兵士の非道な行為で被害を受けた女性を助け、
 公正な裁きをおこなっていたのは、もはや名判官といえるほどの活躍で、感服です。

 

 

 

 スペインの民の評判。

 スーシェが闘牛を禁止するのでは? なんて噂が流れているらしく、
 「奴にスペイン人の心はわからねぇ」とスペイン人には不評・・・と思いきや、
 治安や生活が良くなったことには、一定の評価がされている様子。

 学校や病院の建設もおこなったスーシェの施策は、人々に理解されているようです。
 それでも、スーシェが外国人であることで、無条件に受け入れられているわけでもない
 といった微妙なバランスが、不安要素になっていましたね。

 そんな中、ゲリラ掃討作戦をおこなうことになったスーシェ。
 スペイン人の協力が必要だと述べますが、さすがに無理だろうという空気が漂うものの、
 「最初から無理だと決めるな」と挑戦しようとするスーシェさんが、頼もしかった。

 

 

 

 牛頭のスーシェ、闘牛に挑む・・・!?

 スペインの民の協力を得るため、スーシェがとった行動は、理性とは正反対なもの。
 スペイン人について考え、彼の出した結論が「原始の力」に頼ることだったのは、
 スーシェという人間の本質を示しているように、感じられました。

 部下のアリスプさんに制止されるも、「理性的に考えたうえで理性を捨てたのだ」
 なんて言っているのが、もうたまりません。

 理性を重んじる人物でありながら、その奥底には、猛々しく荒々しい「原始の力」を
 秘めている熱い人間であることを思わせますね。

 そして闘牛では、有名な闘牛士を殺した牛を相手にするスーシェさん。
 スペイン人は興奮して、スペイン牛対フランス牛の勝負に熱狂しています。

 ギリギリの状況で、それでも微動だにせず、荒牛に挑む姿は、まさに戦士。
 「原始の力」に頼りつつも、きわめて冷静に対処していたことに、凄味がありました。
 いや、もう、カッコよかった!

 

 

 

 勝利と熱狂、そして理性。

 見事な勝利をおさめたスーシェさん、スペイン人の喝采を浴びていますが、
 「スーシェは関係ない」と大声で叫んで、あくまで牛と牛のケンカだっただけと
 述べていたのが面白い。

 そして、「スペイン人並にイカレてるぜ」なんて言われても、
 「それは否定しない」と笑顔で返していたのには、脱帽せざるをませんでしたよ!

 これにて、一気にスペイン人の心をつかんだスーシェさん。
 行政官として優秀だという話でシメとなっていましたけど、彼の担当した地域は
 実際に平穏だったようで、得難い人材だと感じさせれくれました。

 人によっては、ナポレオンの元帥の中で、最優秀という評価を与えられることもあるとか。
 考えてみると、本作でのドゼーのようなタイプなのかもしれませんね。

 ゆえにドゼーを失ったナポレオンがいかに苦しかったか、最後に引用されている言葉から
 察せられる気がしました。 「スーシェがふたりいたら・・・」 ドゼーがいれば・・・

 などなど、スーシェさんのスペインでの活躍が描かれた今回。
 乱世を生き抜くのに必要な熱狂の時代から、安定が望まれる理性の時代へ・・・

 そんな転換期が訪れつつあるために、スーシェのような人材が求められているのかも?
 なんて感じさせられながら・・・ 今後も楽しみです!

 

◆ ヤングキングアワーズ 感想

 



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