ヤングキングアワーズ 2013年10月号より
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
コミックス5巻、発売中! そんな今回、陛下が激怒!?
ミュラ&ランヌが、クトゥーゾフ率いるロシア軍の捕捉に失敗。
その結果、ロシア・オーストリア両皇帝との合流を許してしまい、油断のならない状況に。
そこで、ロシアに対して和平を申し入れたナポレオンだったものの、
使者であるドルゴルーキーは、とうてい受け入れられない条件を盾に、強気の姿勢。
その態度に激怒したナポレオン、ということでしたが・・・?
そこへやって来たミュラ。
義兄のご機嫌が最悪だと感じとった彼は、叱責されるだろうと覚悟を決めますが、
予想に反して、なぜか笑顔で迎えてくれるナポレオンに、思わず安堵するものの・・・?
ここでのナポレオンの“闇”の描き方、しびれましたね~。
はじめ、ミュラをなごませるように語りかける陛下でしたが、
まずミュラの失策を軽く責めるようにジャブをかまし、
そこから、「お前の行動は筒抜けだぞ」と暗に匂わすボディブロー。
そして、死の危険を感じさせる包囲網と、じわじわ迫る恐怖の演出が凄まじかった!
なんとか虎口を脱したものの、さすがのミュラも心胆寒からしめられたようで、
ナポレオンを評して、「まっくらな穴みたいな男だ」と言っていたのは印象深い。
使者に対する激怒も演技なら、ミュラへの態度もまた演技。
何が本当かわからない人間なんて、不気味以外の何ものでもありませんから。
これが後々のミュラ背反に、説得力を持たせることになりそうですね。
そして、ロシア皇帝アレクサンドル1世!
性格面や政策面で、奇妙に矛盾した印象を受ける人物ですが、
本作では、「ヨーロッパの平和に貢献しよう」と考える理想主義的な君主さま。
個性的なヘアスタイルとともに、なんとも憎めないキャラクターになっています(^^;
プロシア后妃ルイーゼとのやりとりでも、髪型のことを「面白い」なんて挑発されますが、
それに動じることなく応じていて、ふところの広さを感じさせるところが、イカしてました!
クトゥーゾフと、クロイセ。
ナポレオンの激怒を「焦り」と受け取ったアレクサンドル1世ですが、
クトゥーゾフ将軍は逆に、罠だと看破しているのはさすが。
それでも、決定権は皇帝にあると述べている姿からは、
彼の立場と忠誠心を感じられて、なんともやるせない気分に・・・
一方、クロイセは、爆薬を分けてほしいとクトゥーゾフに頼んでいますけど、
これが『ナポレオン~獅子の時代~』1巻の、あのシーンにつながるわけですね。
「家族とも会えます」と言っているのは、「死を覚悟している」という意味なのかも。
そう考えると、今後の展開を知るだけに、彼の悲哀がいっそう感じられてしまいます。
めぐりめぐって、ついに本作品は、ここへ“戻って”参りました。
歴史に残る戦い=アウステルリッツ!
その経過はすでに描かれているため、物語はここからどのように進行するのか?
この戦場が1つのターニングポイントとなることは間違いなく、期待せざるを得ません。
もちろん、今後も楽しみです!