【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「東京タワー」:フジテレビ前バス停付近の会話

2007-04-14 | ★虹01系統(浜松町駅~ビッグサイト)

もし自分の母親が東京に出てきたらどこに案内したい?
そりゃ、ここ、お台場だろう。
まあ、最新のスポットのひとつだもんね。
でも、映画の「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」の中で主人公のオダギリ・ジョーが母親の樹木希林を案内するのは、浅草や銀座で、お台場は出てこなかったな。
そりゃ、制作が日本テレビだもん、フジテレビのあるお台場なんか出さないわよ。まして、目覚ましテレビのオブジェがあるところなんか。
テレビの「東京タワー」はフジテレビ制作だったけどな。
スペシャルドラマも、連続ドラマもね。私は田中裕子が母親役をやったスペシャルドラマが好きだったけど。
しかし、やっぱり映画版のほうが良かったな。品格が違った。
そうね。東京に憧れて夢破れ九州に戻った父親と、東京に憧れて九州を捨てた息子と、憧れていたわけではないけれど東京に来てしまった母親の物語を実に丁寧に語っていたわね。
泣かせを狙って大仰につくりこんだシーンがなく、ある種淡々と話が運ぶが、それだけにふっと何でもない場面で涙が出そうになる。
人によってそのシーンは様々に違うんじゃないかしら。
どこにでもありそうな話の積み重ねがいつの間にか心の奥に忍び込んでくるっていうつくりだから、それが沸点に達するまでの時間が人によって違うのかもしれないな。目の前のできごとに涙するというより、話全体の流れに感動するっていう出来だもんな。
配役が豪華よね。
主人公がオダギリ・ジョー。次から次に映画出演が続くが、この映画でもいいかげんさと誠実さを持ち合わせたぴったりの役柄でいい感じを出している。父親役の小林薫も家族に対する後ろめたさと哀しさを背負った役をいつもながら上手に演じている。
小泉今日子とか、宮崎あおいとか、あんな使い方じゃもったいないでしょうというような。
しかし、見ものはなんといっても、樹木希林と内田也哉子親子の共演だろう。
共演というより、若い頃の母親を内田也哉子が演じて、年老いた母親を樹木希林が演じているんだけど、ほんものの親子だけに、全然違和感がないのよね。
内田也哉子は映画出演はこれが初めてらしいが、たいした存在感だ。やっぱり、かえるの子はかえるだな。
昭和30年代の東京タワーが出てくるっていうから「Always三丁目の夕日」みたいな映画になるのかなとも思ったし、炭鉱町の話って聞くと「フラガール」みたいな映画になるのかなとも思ったんだけど、どっちとも違ったわね。
それぞれとてもいい映画だったけど、映画として誇張した物語にすることで感動を誘っていた。「東京タワー」もそうすることができたかもしれないけれど、一組の家族の物語という部分を大切にしたぶん、落ち着いた雰囲気の普遍的な映画になった。ノスタルジーを前面に出すことなく、観た人それぞれが自分の父親や母親との関係を問い直す、奥深い映画になった。
まったく、観ている間じゅう、自分の父親や母親とのつながりをあらためて考えちゃったわ。そういう意味では、目が覚めるような映画よね。
目覚ましテレビ以上にな。


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ふたりが乗ったのは、都バス<虹01系統>
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