変化の時というものは、こうもあからさまに訪れるるものだろうか。全てが今しかない、どうぞどうぞ、といっている。ニワトリがニワトリ小屋に追い込まれているかのよう、といえなくもないが。数年前から、気分はそちらに向かってはいたが、最後の引き金は母より顔を合わせていた、河本の眞寿美さんが亡くなったことだろう。河本に最初に顔を出した時は,まだ髪も真っ黒な五十代で、私も二十代の最後の年だつたろう。距離的なことも含め、あまりにも近かった。 引っ越したら懸案であった和風で行きたいところである。まずは室生犀星の撮影に使った金魚が金魚坂から来る事になっている。さらに置き床でも置いて、九代目市川團十郎や左團次の掛け軸でも掛け、江戸川乱歩の“現世は夢夜の夢こそまこと”の短冊を眺め暮らしたい。シミジミとした光景だが、それでいて制作の再起第一戦は、おそらく、全身に竹釘を打ち込まれ、血まみれになってうめき苦しむ三島由紀夫になるはずである。『椿説弓張月』の武藤太が仇を討たれる場面である。私にしたら、本人にやられていた聖セバスチャンの別バージョンを見つけた思いであり、私の見立て通り、当時の舞台のパンフレットに三島は〝私には堕落悪への嗜欲も潜み、その夢は、雪のふりしきる中に美女達の手で虐殺される武藤太に化身してゑる〟という一文まで、私に見つけられてしまった。「承りました。汚穢屋や、ドラゴンに噛み砕かれる王子、また背中の彫り物などと同様、やり過ぎ、過剰なご本人もやれなかった事は私にお任せ下さい。」
タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第16回『トラウマ』
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『石塚公昭 幻想写真展き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界