儀式


D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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コードバンの靴を履こうと思い、棚から出してきた。
未使用のコードバンの靴を何足か持っている。
そのうちのひとつを、今日おろそうと決めていた。

あらかじめプロにお願いして、ピッカピカに磨いてもらった。
自分で磨いてもいいが、やはり専門家に磨いてもらう方がよく光る。
特にコードバンの場合は、その輝きこそが重要なのだ。

先週青山のお店に持っていき、磨いてもらった。
どう仕上げますか?と聞かれて、とにかく目一杯光らせてくださいと頼んだ(笑)
その状態でレッドシダーのシューツリーを入れて、棚に飾っておいたのだ。

おろす前に、ひとつ儀式がある。
皴入れである。
コードバンの場合、普通の革と違って、これをやらなければならない。
一度皴が入ると、もう2度と取ることが出来ず、その状態が永久に続く。
そのため皴を入れたいところに、最初に意図的に入れてやるのだ。

これには賛否両論あって、そんな事やる必要はないという意見もある。
しかし僕の場合足が偏平足ということもあり、大抵のアメリカ靴ではフィッティングが完璧とは言えない。
ボールの位置が合っていても、捨て寸は必要以上に大きい場合が多い。

そのため自然に任せて皴を入れてしまうと、予想外の変な場所に入ってしまうのだ。
以前新品のコードバンの靴をいきなり履きだしたところ、キャップ部分に横に皴が入ってしまった事がある。
ウワッと思ったが、これはもう一巻の終わりである。
今でもその時のショックは強烈な心の傷として残っている(笑)
だからこの儀式だけは、しっかりやるようにしている。

だが意外に難しい作業で、慎重に行わなければならず、思いの外緊張する。
具体的には、まっさらな状態の靴に足を入れて、皴を入れたいところにペンのような丸い棒を押し当てて、足をゆっくりと曲げて皴を強制的に入れてやるのだ。
皴の入れ方は人それぞれで正解は無いが、僕の場合1本目はなるべく水平に入るようにする。
左右の足の大きさが違うので、当然左右の靴の皴の入り方は、まったく同じには出来ない。
しかしかえってその方が自然な結果になる。

というわけで、廊下で新品のコードバンの靴に足を入れ、ペンを当てて皴入れの儀式を行った。
ウイングチップということで、パーツが複雑に組み合わさっており、皴の位置もなかなか完璧という訳にはいかなかった。
しかしまあ、何もしないよりはずっといい位置に入ったと思う。

いざ外出しようとしたら、雲が多く出ており、何となく怪しい空模様である。
ご存知の通り、コードバンは濡らしてしまったら大変である。
せっかく皴入れの儀式を行ったが、今日は履いて出るのは中止した方が無難のようだ。
結局シューツリーで皴を伸ばして、もう一度棚にしまった。
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