ペコスブーツ


D810 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G

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行きつけの古靴のお店で、前々より欲しかったレッドウイングの古いペコスブーツを試着した。
ペコスブーツというのは、ウエスタンブーツから装飾を廃し、農作業用として発展したブーツだ。
サイドにジッパーなどなく、そのまま足を突っ込んで着用するだけの、長靴みたいなブーツである。

以前も書いたが、僕はふくらはぎが太くて、ウエスタンブーツは苦手である。
ウエスタン関係の有名な方が、履いてみなよとご自分のブーツを貸してくださったことがある。
ところが履いてしまったはいいが、脱げなくなりえらい事になった。

ペコスブーツをいざ試着しようとした時、あの時のショックが甦った。
ブーツの折れ曲がったところで、かかとが引っかかってそれ以上進まない。
足がブーツの中で斜めになった状態で止まってしまうのだ。
強引に押し込めば履けるかもしれないが、そのまま脱げなくなるのでは・・という恐怖感がある。

お店のオーナーは、絶対大丈夫だから履いてみろという。
入ったものは必ず脱げるから・・・というのだ。
途中で引っかかっていても、そのまま体重をかければ、スッポリ入るはずだと言われた。

そもそもペコスブーツは、靴紐で固定するわけではなく、ただ足を突っ込むだけの靴である。
グッドイヤー製法の靴は、底に敷き詰められたコルクが沈むので、使用していくうちに少し緩くなる。
その分は靴紐を締めて調整するのだが、ペコスブーツの場合それが出来ない。
そのためサイズ選びは慎重に行う必要がある。
最初から緩めなのは禁物で、ほぼピッタリのサイズを選ばなければならない。

オーナーが、脱ぐときは手伝うから、とにかく履いてみるようにと言う。
ペコスブーツを買う人は、最初は皆こうなのだそうだ。
その言葉を信じて、ブーツの耳をグイと引っ張って、上から少し体重をかけた。
曲がり角でつっかえていた足が、スポンと抜けるようにブーツの中に納まった。

入れてしまうと、悪くないフィッティングである。
形はまあまあ合っているようで、歩行しても踵はしっかりホールドされる。
サイズとしてはこれで適正かもしれない。
意外にもふくらはぎも余裕がある。
どうやらペコスブーツの場合は、曲がり角を足が通過できるかどうかが問題になるようだ。

ところが、案の定、脱ぐことが出来なくなった。
引っ張っても、びくともしないのだ。
椅子に座って片足を上げ、手で思い切り引っ張ってみたが、無理な姿勢であらぬ方向に力をかけるため、そのうち血圧が上がって、身体がつりそうになった。
冷や汗が出てきた。

お店のオーナーが、笑いながら靴を引っ張ってくれた。
ヒール部分を掴み、手前に回すように引っ張るのがコツのようだ。
グググ・・とブーツがずれてきて、スポッと脱げた。
ほっとした。

しかし、普段ひとりで履いたり脱いだりする時はどうするのだろう・・・
まさか毎回誰かの手を借りるわけにもいくまい。
何とも不可解な靴である。
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