木曜日、久々に池袋に行って来ました
「スロー・スモール・スクール 開講記念特別講義」に参加するためです。
なまけものクラブの辻信一さんの紹介する「懐かしい未来」のヘレナさん、「スモール・スクール」のサティシュ・クマールさんなど、世界的な活動家・思想家の影響を私はかなり受けてきました。
また、昨年から「セカンドスクール(第二の学校)」を作りたいな~、とずっと考えてきました。
現代の社会の問題はいろいろあるけど、その社会を作ってきたのは大人。
そんな大人は、子供に勉強をしろという前に、まず大人から勉強しなおさなくちゃいけない。
そして、社会の問題の縮図となっている学校の教育システムに縛られている子ども達にも、寺子屋のような「第二の居場所」となる「セカンド・スクール」を作る必要があるな~と。
子供にとって、第二の居場所を。
子供にとやかく言う前に、大人が学び直し、立派な大人になるための場を。
そんな「セカンド・スクール」を作りたいと考えてきました。
そんな時に、サティシュ・クマールさんの講演を聞き、大きな影響を受け、「スモール・スクール」のコンセプトを聞いて「すばらしいな、そんな感じのスクールを作ろう」と思ってきました。
そして今年、「スロー・スモール・スクール」を辻さん達が始める、という話を聞き、今回の「開講記念特別講義」を楽しみにしていたのです
「スモール・スクール」の具体的なカリキュラムみたいなものを参考にしたかったのですが、どうやらそれはこれからで、今回は「デヴィッド・スズキ」さんの講演が主のよう。
ちなみに、デヴィッドさんの娘さんで、1992年、リオデジャネイロで開催された環境サミットに際し、子どもの環境団体の代表として参加して一躍有名になった「セヴァン・カリス・スズキ」さんも一緒に来日して、「Love is the Movement!」という活動で日本を回ります。
ちなみに、それが子供ながらにして伝説のスピーチとなった映像です。
こんな娘さんが育つ偉大なる父。
そんな「デヴィッド・スズキ」さんのお話は、とってもシンプルで、わかりやすく、パワフル(誰もの心にとっどくメッセージ)」でした。
ということで、得意技の講義録を作りました。
以下、ご覧あれ
そして、頭だけでなく、実際に行動しましょう
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ある国際的な会議で、各国が、12%の自然を守っていこう、という話が出ました。しかし、実際に守れそうなのはたった数カ国と言われています。
逆に言えば、88%の自然を人間がどうしようとしてもよい、ということです。
地球には3000万種の生き物がいるのに、たった1種の人間が、88%を好き勝手に使ってよい、ということでさえ凄いことなのに、それさえ出来ないのです。
私はこういった講演会を良くしているので、こんな質問をもらったことがあります。
「どうして自然を守る必要があるのですか?公園があるから自然なんてそれでいいじゃないですか」
みなさんはどう思いますか?
これに答えるために、みなさんは、空想の中で、いまから40億年前にタイムスリップしましょう。
さあ、40億年前につきました。
ここにいると5分で私達は死んでしまいます。
生き物は1つも居ません。
どうしてか?
それは酸素がないからです。
酸素は私達が生きていくために不可欠です。
酸素にはとても強い力があるんですね。
この酸素は生物が作ってきてくれたものです。永遠に生物が作ってくれるものです。
ここでの学びは『生命が酸素を作ってくれている』ということです。
さて、私達は科学者ですから、この時代に酸素がないというぐらいわかっていますから、酸素ボンベを持ってきました(笑)
酸素ボンベを持って、この40億年前の地球を歩いてみましょう。
少し歩くと喉が渇いてきました。しかし、この世界には水が無いのです。
あったとしても、岩山を洗い流す過程で鉄や色々な化学物質が入っている水しかなく、人が飲めるものはありません。
現在の私が住むバンクーバーには3つの水源があります。
そこには雨が降り、森を通り、土を通り、バクテリアが水をきれいにして飲める水にしてくれます。
40億年前とは違い、水を飲めるようにしてくれる生命がたくさんあるからです。
ここでの学びは『生命は水をきれいにしてくれている』ということです。
『生命は水の循環の中にある』のです。
さて、私達は40億年前の地球に水がないということぐらいわかっていましたから、水も持ってきました。
それでは歩いて色々探検してみましょう。
しばらく何時間も歩いているとお腹がすいてきました。
でも周りを見渡しても何もありません。40億年前の地球には植物も動物も生命は何も無いのです。
そうです、私達の体を作っているものは、かつては生きていたもの、植物や動物だったものなのです。
『自分の命を作っているものは、何かしらの生命』なのです。
さて、生命が居ないこともわかっていましたので、私達は種を持ってきました。
さあ、種をまこう、、、と考えても、そうです。播く場所が無いのです。
この時代には「土」が無いのです。
粘土、砂、砂利、岩はあっても、土が無いのです。
そうです。
『土は生命が創りだしている』のです。
動物、植物などの生命は、食べ物だけではなく、それを作ってくれる「土」も作っているのです。
さて、そういったこともわかってたので、食べ物を持ってきました。
さあ、これを焼いたり煮て食べよう、と考えます。
ところが、40億年前の地球には、燃やせるものが無いのです。
木、草、石油、コケ類など、燃えるものは全て生命だったものです。
『命が生まれる前は、燃えるものが無かった』のです。
さて、そういったこともわかってきたので、燃えるものも持ってきました。
さあ、火をつけよう!と思ったら・・・火がつきません。
そうです、酸素が無いからです(笑)
『生命は空気、水、食べ物、土、エネルギーを創り提供してくれている』のです。
自然は必要かって? もちろん、私達にとって、生命にとって必要なのです
anthropologyという地質学的な区分から言うと、人間中心の時代というは、歴史の中では急に起こったとされているんです。
人間が自然との関係を突然変えてしまったのです。
かつて、地球には1億以上の種は存在しなかったんです。ところが人間はひとつの種で70億にもなった。
そして90億までは増えると多くの学者が言っています。
この90億の1人1人が、空気、水、食べ物、酸素、家を必要としています。
そして膨大なエコロジカルフットプリントが使われています。
(※エコロジカルフットプリント:人が生きていくために自然にどれだけ依存しているかを現した指標。世界中の人が日本人のような生活をしたら地球は2個以上、アメリカ人のような生活をしたら5個以上必要、という計算になります)
私達の今の生活をキープするには、強大なテクノロジーが必要です。
車、電車、飛行機、全て地球から掘り起こされた資源を使っています。
そして、その93%が地球にゴミとして捨てられています。
19世紀以降、経済やお金が中心となり、私達は生きていくために必要なものを買うことをひたすら追い求める消費者になってしまっています。
私の母は私が小さい頃、いつも言っていました。
「大きくなったら一生懸命働いて、稼いだお金は、生きていくために必要なもののために使いなさい」と。
今の世の中に溢れるものは、どれだけ本当に必要なものなのでしょうか?
私は一番嫌いな言葉が「disposal(使い捨て)」という言葉です。
そういった言葉が聞こえると、子ども達の耳をふさいで「聞いちゃいけない!」と言いたくなります。
私はいつも持ち歩いているんですよ(と、言いながら1つ1つポケットから出して説明)
・箸
・ハンカチ
・袋
・万年筆
割り箸なんか見ると本当に嫌になってしまう。
万年筆はインクを変えるだけで、ずっと使えるんです。捨てる必要が全く無い。
そんなに難しいことじゃないし、とても価値があるし、気持ちがよいことなんです。
しかし、今の人類はいろいろな必要の無いものを作り、使い捨てをし、多くの生き物に多大な影響を与えてしまっているんです。
そんな人類も、生物学的に、DNAを見ればわかることですが、15~20万年前のアフリカに行き着きます。
みんなアフリカで生まれた人類に行き着くんです。
そして10万年もの間、95%が狩猟・採集をしていたんです。
ということは、移動するのが当たり前だったわけです。どこかの土地に住むのではなく、食べ物があるところに移動しながら10万年もの間、生きてきた。
生き方そのものが自然界に依存し、自分達は自然の一部であることを身をもって知っていたんです。
自分達は自然のおかげで生きることが出来ているということを。
1万年前、大きな変化が起きました。それが農耕です。
そしてこの1万年、人間のほとんどが農家でした。
1900年の時点で、人間の人口は16億人でした。
100万人以上住む大都市は世界で14都市で、ロンドンが既に650万人、東京は7位で150万人でした。
それ以外の人達はどこにいたか?それは田舎であり、地方のコミュニティーにほとんどが住んでいたんです。
そのほとんどの人は農家でした。農家だから、天気、気象など自然に敏感でした。
例えば、北国の農家であれば、冬に畑に積もる雪が夏の土に湿り気を与える、ということを知っていました。
虫達がいかに大切で、受粉などに役に立つか知っていました。
ある種の植物が窒素を地中に固定するということも知っていました。
農をしていた人間は、自分達が地球や自然のおかげで生きてこれている、そして自分達もその一部だということをわかっていました。
しかし、この100年で突然大変化が起きたのです。
1900年からの100年で、世界の人口は60億になり、人口が100万以上の都市は世界で400となりました。
東京の人口は世界1位となり、カナダの国の人口と同じになったのです。
トップ10位の都市の人口は1,100万以上なのです。
農民は大都市民になりました。
大都市では、もっとも優先順位が高いのは「仕事を得ること」になりました。
だから、経済がもっとも優先順位が高くなったのです。
欲しいものを買うためにお金を得ること、この仕組みを考えるのが経済なのです。
危機的なことは、自分達の健康や食べ物、生存が自然のおかげということを忘れてしまって、経済のおかげだと思ってしまっているということです。
森林伐採の例を言いましょう。
木を切ってお金を得ている人達は、それで生計を立てているのだから、森林伐採を止めようといっても、「うるさい」というのもわかります。
でも、私が知っている限り、環境活動家で森林伐採を永久に止めろ、という活動家は1人もいません。
みんな「あなたが木を切って生計を立てているように、あなたの子供も、孫も、ずっと同じように木を切り続けられるようにするべきです」と言っているんです。
しかし、彼らはこう言います「そんなことは無理だ。子供の代の時には木はもう無い」と。
私達は、自然界の中に生きているという理解が必要です。これは物理学的にも科学的にもみんな知っているんです。
人間が今のような状態なのは、頭脳のおかげで、その頭脳で人間だけが生態系に制限を受けていないような気持ちになってしまっています。
しかし、地球を取り巻く薄い空気の層の中に生きているということは、事実ですし、人類も条件付けられています。
私達は生まれた瞬間から死ぬまで、空気が必要なんです。これは誰もが知っている生物学の法則なのです。
だから、生きていくためにも、健康を保っていくためにも「きれいな空気」、これこそがもっとも優先順位が高いんです。
そして水も同じです。毒も化学物質も入っていないが必要です。
食べ物もです。私達は死んだ植物や動物を食べて、それを体の一部にしているのです。
そして、動くためにはエネルギーが必要です。
何世代にもわたって、空気、水、食べ物を創る土、エネルギー、そして生物の多様性、この5個が物理学的にも化学的にも生物学的にも絶対に必要なのです。
なのに何を大事にしているのか?
世界中の国々では土地や国の境界線を争って戦争をしています。
自然にとって国境など関係ないのに。
192カ国が集まりコペンハーゲンで開催された世界気候会議では、どの国がどれだけ削減するか、排出権をどうするか、といったことを延々と議論をしていた。空気に国境はないというのに!
チェルノブイリが爆発したとき、スイスで放射能が確認されました。
福島が爆発したときも同様です。
空気はとてもシンプルに世界中を循環しているのです。
人は色々な概念を生み出してきました。
経済、資本、起業、市場など。
これらは自然と全く関係が無い、全部人間の頭の中のことなんです。
昔は、どこの人もドラゴンや魔物を信じて恐れて生贄を出したり、祈祷をしたりしていました。
科学的にはこれらは人間が生み出した概念ということです。
でも、経済やお金も同じ人間が生み出した概念でしょ?
そういった経済やお金のことを恐れている私達は、昔のドラゴンなどを恐れていた人達を笑うことができますか?
経済がだめであれば、何でも生贄に差し出してしまう。
しかし、経済は元々は私達の暮らしを良くするためにあるものに過ぎないんですよ。
仕事は経済のためのもの、経済を成長し続けさせるために全てを差し出してしまう。
立場が逆転してしまっているんです。
自然を自分達のスケジュールにあわせようとするのではなく、私達が自然にあわしましょう。
今、大きな変化の時が来ています。
そして、こういった変化は世界の国々のトップや政治がリードすることはありません。
こういった変化はローカルコミュニティーで生まれるんです。
本当の人生、意味のある生き方を求める人達が、この変化を創っていくんです。
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以下は質疑応答の中のお話です。
Q:「もうだめじゃないか」と思っていることに対して。
カナダに最大の紅鮭の遡上する川がありました。
そこには3.000万~3,500万匹もの紅鮭が遡上するのです。
ところが環境が悪化し、4年前には100万匹に減ってしまったのです。
私は、これでもう絶滅するな、と落胆していました。
ところが国や地域の人がどうして紅鮭が減ってしまったか原因を探り、行動をした結果、なんと翌年にはこの100年間で一番の遡上があったのです!
たった1年で改善したのです。
こうなったのがどうしてなのか、誰もがわからないのです。しかし、実際に紅鮭が一番たくさん増えたのです。
自然は時には驚きを与えてくれます。
私達がちょっと貪欲さを抑えて一歩下がれば、自然界は私達が思う以上の恵みを与えてくれるかもしれませんし、与えてくれないかもしれません。
ただ、私達を驚かすほどの懐の深さがあるんだと思います。
子どもや孫達のために、最善を尽くしましょう。
ネルソン・マンデラは27年間、獄中に入れられていました。
その間、彼も絶望しかけたこともあるかもしれません。しかし、その後、大統領になったのです。
彼も獄中に居るときに、まさか大統領になるとは思っていなかったでしょう。
絶望するには、私達は何も知らなさ過ぎるのです。
Q:「デヴィッドさんが思う未来」について。
Biomimicry(バイオミミクリ:自然の英知を模すことにより、人類が抱えている問題を解決していくこと)という考えがあります。
私の未来のビジョンは、自分が空からその未来を見たとき、車も、ビルも、全てのものが、木の全ての葉っぱが太陽の方を向いているように、全てがソーラーパネルのようになっているものです。そしてみんなが家族で暮らしている。
これは1例で、政治家はビジョンを伝えません。ビジョンを持つことはとても大切ですね。
Q:「先住民族にとても大きな存在だと思っている」という意見について。
その通りだと思います。
私の幼少の頃は、おじいちゃん、おばあちゃんがいなかったのです。
私の父と母の代からカナダに移り住んだのです。だから、新しい国のカナダにも、古い国の日本にも、ルーツが無いのです。根っこがないのです。
500年前から植民地となってきたところは、根っこの無い人達が支配する国になったのです。
アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、アフリカ。全て植民地となった国です。つまり、根っこの無い人達が支配する国なのです。
だから、大地は彼らにとっては「利用価値があるだけの場所」なんです。
その場所と元々いた先住民族に対して、森は伐採し商売をするためにあり、大地は金儲けの資源に過ぎないのです。
先住民族は本来人間の持っていた自然とのつながりを体現してきた人です。
そういった人達が、先頭に立つ時代です。
今、カナダにパイプラインを作るということで、古代から続く森林が伐採されようとしていて大問題になっています。
そしてその反対の先頭に立っている人達は、まさに先住民族の人達です。
政府はお金で彼らを買収しようとしますが、誰もお金などいらないといいます。
お金より大切なものがあるのです。それは我々の生き方であり、自然との繋がりなのです。