新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

西洋医学の限界?:パラダイムシフトは重要だが、その段階ではまだないと思う

2012-07-23 21:31:10 | 医学系

こんばんは

 

今日は夕方から健康診断で異常のあった方々のところへ出向き、健康指導を実施して回りました。その前にもいろいろやることがあって(明日中に終わらせなくてはならない仕事が2つあるのですが、明日に回しましたw)、午前中はそちらをしていたのですが・・・・。

 

健康指導をして回り、何年かにわたって異常のある方々がようやく認識してくれたということがあり「生活指導」や「健康診断の説明」の重要性を改めて認識したところです。

 

ほとんどの方々は異常があるといわれても症状がなければ「指示がないから大したことはないのだろう」と思ってしまいます。そして症状が出たときには手遅れになってしまう。これでは何のための健康診断かがわからない。

今日は一人短くて5分、長い人だと20分ほどしゃべっていたのですが…それでもかなり「事実」を理解してもらえたと思います・。

 

やる僕もかなり根気がいるのですけど…(何十人と健診結果を持ちながら異常を言って回るわけですから)

 

さて、本日はこちらの記事が気になったので紹介します。

 

「西洋医学は限界」、自然治癒力の見直しを

 

 一般社団法人「国家ビジョン研究会」が20日に開いたシンポジウムでは、医師や看護師らが参加したパネルディスカッションが行われ、統合医療や看護、臨床研修制度など、幅広いテーマで意見が交わされた。シンポジストからは、「西洋医学は限界に達している」との声が上がり、薬に頼らない食事療法や、患者を内面から支える看護ケアなど、自然治癒力を高める治療の効果を見直す必要があるとの意見が出た。

 東京都新宿区の丹羽クリニック院長で、同区医師会理事の丹羽正幸氏は、治療法におけるパラダイムシフトの必要性を繰り返し強調した。開業後、4万人以上の難治性疾患患者を診察してきたという丹羽氏は、西洋医学だけの治療法が限界に達しているとした上で、「自然治癒能力がこれからのテーマになる」と指摘。体の各組織や精神までを多面的に治療する「融合医療」で、可能な限り医薬品を使用しないことが望ましいとした。

 また、社団法人「生命科学振興会」理事長の渡邊昌氏は、日本の医療費が増え続ける中で、経済的な観点から「食べること」の意義を指摘。糖尿病や高血圧など生活習慣病の治療では、食生活の改善の方が、医薬品の投与よりも効果が高い場合がある上、それが医療費の節約にもつながるとし、「患者が自己の治癒力を知ることが大事だ」と述べた。

■「日本版ACGME」の創設求める意見も
 一方、臨床看護学研究所の所長で、日本赤十字看護大名誉教授の川嶋みどり氏は、患者の高齢化や病院の在院日数の短縮化などで、看護の現場が危機に陥っているとし、「(患者の)手に触れ、癒やし、慰める方法から遠ざかっている」との懸念を表明。その上で、患者の生活を支える「療養上の世話」の重要性を指摘し、厚生労働省が検討している看護師の認証制度については、改めて反対の立場を示した。さらに、看護職員の配置人数によって入院料が決まる現行の診療報酬体系を改め、費用対効果や患者のQOL(生活の質)に基づいた看護の報酬に見直すよう求めた。

 このほか、野口医学研究所理事長でハワイ大教授の町淳二氏は、米国での臨床経験から、日本の臨床研修制度の問題点を指摘した。町氏は、米国では1980年代に、医師会の主導で「ACGME」が設立され、卒後の臨床研修の認可制が導入されたことを説明。学会が認定する日本の専門医制度では、臨床レベルの「標準化」が進まないとして、研修施設の認定を行う第三者機関が必要だとした。【敦賀陽平】

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さて、この話はとても重要なことだと思いますが、正直まだ早いと思います。何を持って西洋医学の限界としているかはわかりませんし、なんの疾患群が対象かもよくわかりません。

ただ、ここで書かれている「生活指導」「食事指導」などを本当にじっくり行うことは重要だと思います。

 

また、僕も西洋医学と東洋医学の両刀使いでありたいと勉強しています。

理由は二つ

1つはものの見方が全く異なる二つの考え方を知ることは僕の見識を広げ、患者さんへの治療方法を広げてくれると思うから。実際に西洋医学を中心に漢方医療を少し加えることでかなりよい結果を得ていると自分では実感しています。まぁ、独学なので(少し手ほどきを受けたり、ツムラのセミナーには参加しましたが)すべてを漢方でというわけにはいきませんが・・。

以前も書きましたが漢方医学は「もっともよい状態」が中央にあるとすれば、病気の状態はいずれかの方向にずれているという考え方です。原因はいろいろありますが、ずれる方向と症状などで薬をチョイスしている感じでしょうか。同じ風邪であってもずれている状況(患者さんの体力だとか、時期だとか・・・・。これは西洋医学的にも説明できるんですよ)で使用する薬は違います。

また、前も書きましたが診察するにも西洋医学的な「原因」を中心に考える考え方と、東洋医学の「証」を見る考え方は診方、考え方が異なるので非常に診療している側としても面白いですし、患者さんには失礼ですが一粒で2度おいしい感じです。そしてそれが患者さんのためになるなら両刀使いが一番・・・という僕の結論です。

 

ただ、自然治癒力を高める・・・という「ちょっと気になる」書き方の記事だったので、記事の先生をGoogleで調べてみました。

http://www.niwa-clinic.com/chouatsumennekiryouhou.html

 

実際に免疫力というのは重要です。僕が血液内科医になったのは「免疫療法」に興味があったからと以前も書きました。免疫療法も調べると…例えばがん腫によって自然免疫が効きやすい癌の種類と、特異免疫が効きやすい癌種とがあります

なんとなくわかってきていますが、まだまだ何もわかっていないとも言えます。逆にこれが解明できれば「がん」に関してはどうにでもできると思います。僕が目指すのはそこです

 

西洋医学では原因にターゲットを絞るので「個々のがん腫」に対する薬剤を作る方向になると思います。薬剤のオーダーメイド化ですね。それは恐らく進めば癌を駆逐していくかもしれませんが、限界があるといえばその通りです

 

がんは一部はウイルスなどが原因のものもあります(ATLLやEBVが絡む各種のがん(咽頭がんや一部のリンパ腫、ホジキンリンパ腫など)、子宮頸がん、肝臓癌などなど)。しかし、基本的に「がん」という異常ができてしまったものを除去する機能が加齢とともに低下したり、がんが免疫から逃げる能力を防ぐことができれば・・・おそらく「がん」は駆逐できるのだろうと思います

 

僕は感染症や膠原病よりは「がん」は駆逐しやすいものだと思っています。

 

かといって、今の時点で免疫療法を主体にやろうなどというのはナンセンスに尽きると思います。

 

皆免疫も重要だというのはわかっていると思います。ただ、大きな枠組みよりは今は細分化した方が攻めやすいというのも事実だと思います。

慢性骨髄性白血病のように「異常な遺伝子」が作り出す物質を抑えてしまえば癌自体をコントロールすることができるようになるかもしれません。今はその流れです。

 

それがすべてではないのは事実ですが、免疫療法だけでどうにでもなるというのは今の時点では無理です。あくまで現時点での標準療法が上手くいかない人が「試すべき」ものだと思っています

もちろん、記事にも「可能な限り薬物を使用しない」としか書かれていませんがw

 

皆様はいかが思われますか?

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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10 コメント

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Unknown (風はば)
2012-07-24 12:28:42
丹羽正幸氏、渡邊昌氏、どっちもぐぐればアレな人だった。。。

こんなのに時間と予算をつぎ込むのは問題でしょうが、今のミンス政府は気付かんでしょうなぁ。。。(溜息)
Unknown (アンフェタミン)
2012-07-29 08:57:38
>風はば先生
おはようございます。コメントありがとうございます

まぁ・・・いろいろ問題のある企画だと思いますが、これに引きずられて変な方向に行かなければよいのかなぁと思っております。

また、コメントいただければと存じます

現代医学は不完全、ゆえにパラダイムシフトを免れることはできない (protomed69)
2013-03-23 21:21:17
>パラダイムシフトは重要だが、その段階ではまだないと思う

このように書き換えます。パラダイムシフトこそ重要であり、既にほぼ解明されている。ただし、それがどのようなものか、まだ公表されていないが

間違っていますよ。いつの時代でも、病に苦しんでいる者にとっては、現状を打破する治療法の出現を望んでいるはずです。医師であるあなたの個人的感想なのでしょうが。

Unknown (アンフェタミン)
2013-03-24 11:54:34
>protomed69さん
こんにちは、コメントありがとうございます

確かにパラダイムシフトは重要です。公表されていないがパラダイムが変わっていて・・・ということであれば、それこそ公表しないのは患者さんの不利益であり、人として間違っていると思います

protomed69さんの個人的考えに関しては理解できます。ちなみにこのBlogや前のBlog(もう8年から書いているので記事はすべて見れないと思いますが)で、僕は「がんに関しては駆逐できる疾患である」と考えているところです。

これは自然治癒力…と書かれていますが、免疫によることを考えています。しかし、現時点でわかっていることは「自然免疫(の極みは骨髄移植ですね)」で有効な疾患もあれば、「獲得免疫(がんワクチンなど)」やこの架け橋(DCとNKTとかですかね。うちの大学の免疫の先生が得意なんですよね)などもあります。

しかし、まだ治験をやっていたり、動物実験レベルであったりという段階です。

現状を打破する治療法の出現は誰しもが望むことです。僕が学生時代から言い続けている医師になってやりたいことはまさにこの「腫瘍の撲滅」であり、それがどこかですでに行われているのであれば、また別の仕事を探すことになるかもしれません。

しかし、まだ誰にでも提供できるような状況ではないこと、この記事に書かれていることは現実には時期尚早な気がしているというのは僕の考えとしてあります。

また、コメントいただければと存じます
人間機械論 (protomed69)
2013-03-24 16:25:30
私は、これまでのところガンにはなっていないようです。もっとも、病院に行って検査を受けたわけではありませんが、特に違和感を感じていないので。                 

さて、免疫についてですが。アレルギー性鼻炎、喘息、インフルエンザ、肝炎(アルコール性ですが)、関節炎や歯周病、アレルギー性皮膚炎など免疫が関与している疾患を経験しましたが、研究していたある物理療法だけで、即効的治癒可能です。つまり、病気が物理的現象であるということです。遺伝子異常や奇形、要手術、栄養の過不足、重金属の中毒などは除きますが。

免疫が主たる要因ではない多くの病気も同じことです。物理法則は、個人差、病名、症状、部位などに関わらず成立しているのですから。可逆性が期待できる病気については、うつ病も、肩こりも、冷え性も、理論を統一してしまえば、それ以上何か必要でしょうか。

疑似科学扱いされている代替療法が現代医学を上回る効果があるならば、間違っていたのは現代医学ということに。疑似科学批判をしている人たちは、疑似科学と未科学の判別ができていない。いずれ真正科学となる未科学も疑似科学として、批判することに快感を感じているのでしょう。

治療理論は、物理学を基礎とする科学の体系の中でどこに位置づけられるのか。科学の体系性や、科学研究の論理や方法をきちんと理解していれば、おのずと医学のあるべき姿が見えてくるだろうに。

人間機械論、現代では分子レベルですが、物理法則にしたがっているようです。
よくわかりません (アンフェタミン)
2013-03-25 22:18:30
>protomed69さん
こんばんは、コメントありがとうございます

ちょっと、僕ではお話になられている内容が理解できないかもしれません。
唯一の正しい理論があるかもしれません(例えば引力だったり)が、今の時点で代替療法が正しいとも何とも言えないのではないでしょうか。

物理法則に従うものは当然従いますし、たとえばいろいろなところで書いていますが宇宙など環境が変わったことで、いろいろな病気が発生するかもしれません。

僕は少なくとも一つのものが正しいと言い切れるほどの自信はありませんし、唯一の真理を見つけ出せるほどの能力はないと思っています。

おそらく今後も医療だけでなく、化学も進歩し続けるのではないでしょうか。

また、コメントいただければと存じます
生物物理学的思考 (protomed69)
2013-03-26 13:43:02
現代医学では、生化学や分子生物学によって、生命現象を化学反応の集積と考えていますが、現代科学では化学は物理学の一部となっています。異なる分野と考えられていた物理学と化学は、量子化学を介在して、物理学を基礎とする一つの体系になっているのです。

           
その影響は、医学にも及ぶはずであり、これまでの化学反応によって説明していた治療理論は、物理法則によって説明される。つまり、これまでの薬物療法は特殊理論となり、物理療法が一般理論に。それによって、薬物では治療困難であった病気が、物理療法によって簡単に治癒可能になる。
Unknown (アンフェタミン)
2013-03-27 22:08:32
>protomed69さん
こんばんは、コメントありがとうございます

漸く何をおっしゃっているのかが理解できてきました。全てが原子…もっと言うなら中性子や陽子、電子といったものでできていてそれらを自由に操るようなことができるようになれば病気も解決するでしょうね。

ただ、それはかなり難しいのではないでしょうか?
僕はそちらの分野に関しては知識がないのでよくわかりませんが、その考え方は面白いですね。

物理療法…というよりも物体そのものを変えてしまえるような世の中になれば…ということでしょうか?

また、コメントいただければと存じます
Unknown (protomed69)
2013-03-28 08:59:50
コメント休止にしようと思っていたのですが、疑問が提示されたので少し書きます。

病気が発現するのは、分子生物学が明らかにしているように分子レベルです。それ以上でも、それ以下の階層でもない。その分子の状態は物理法則に従っているはずですから、物理的に制御できる可能性が。物理法則は個人差などに関わらず成立するので、それに基づく治療法は幅広く適用できるでしょう。

鍼灸などの物理療法が多くの病気に適用できるのはそのためです。ただし、鍼や灸では原理的に限界があるし、手技では効果が不安定である。さらに陰陽五行論などの思弁的説明が行われ、科学的検証に耐えうる法則化・理論化ができなかったために疑似科学扱いされてきた。

「代替医療のトリック」など疑似科学批判書において否定されていますが、論理的に粗雑な思考による攻撃です。疫学に用いた検証法は、臨床にも適用できると考えるなんて間違いです。研究対象や研究目的が異なれば、論理や方法も異なってくるので、他分野において成功した研究方法を安易に援用してはならないことさえ理解できていない。人体に何らかの法則性があるならば、統計学の適用なんてNGです、統計学なんてランダムであることが前提なのですから。所詮、検証法に過ぎず、法則性を探究するものではないので、治療理論確立に寄与するものではない。法則性があるならば、治療に応用すればよいのです。

まあ、そんなことを生物物理学的に考えてきたわけです。物理学というものは、最終的に一つの答えを求めるようとする。理論の統一ですね、医学が科学であるというならば、当然、そのような形になっていくべきだと。
Unknown (アンフェタミン)
2013-03-29 23:07:06
>protomed69さん
こんばんは、コメントありがとうございます

おっしゃられていることは理解はできます。DNAであろうとなんであろうと物理…原子とかそういったレベルで考えることができれば、そこが原点です。

しかし、今の時点ではミクロの(性格にはナノレベルは普通になってきていますので、原子レベルでと言いなおします)レベルで医学を語れるほどは発展していないように思います。
DNAをはじめとしたもの、また例えばある種の腫瘍などでDNAだけでなく、その機能が消失する(エピジェネティックな変化)ことがわかっていますが・・そう言った変化がprotomed69さんがおっしゃられるように、原子レベルで語れるようになれば素晴らしいことだと思います。

今の現代医療ではそこまでの話は出ていませんし、少なくとも僕はどうやったらよいのかはわかりません。

物理学の造詣が深い方が、医療・医学のことも同様に造詣が深く、そういう分野を開発していただければ、また面白くなると思います。
ぜひ、そういう話があったら、また教えてください。

また、コメントいただければと存じます

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