こんばんは
火曜日の予約記事ですが、ニュースでお伝えしたいものが見当たらなかったので生活習慣病の説明を僕がするときの文章を書いてみようかと思います。
今回は高血圧です。健康診断で引っかかって受診したということにします。
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○○さんは職場の健康診断で160/95と血圧が高かったということで、こちらを受診されました。今、気になる症状とか、何か気が付かれたようなことはありますか?
「いえ、あまりありません。ただ、血圧が高いので受診しなさいと言われてきました」
一般に血圧は140/90を超えると高血圧と言われます。ただ、家でリラックスしているときにはかった場合は135/85にするとか、いろいろありますが、いずれにせよ160/95というのは高いですね。
「はい。ただ、血圧が高くても私は何も自覚症状はないのです」
そうですね。血圧は高いだけでは自覚症状はなかなか出てきません。上の血圧が200とかになってくると頭痛などいろいろ症状も出てきますが、160くらいの血圧では症状はないかもしれません。
ただ、放置していると全身の血管が痛んできて、脳梗塞や心筋梗塞、いろいろ怖い病気にかかったりします。(リスクごとの表を見せて説明します)
「どうしたらよいでしょうか?」
一般に高血圧は生活習慣病と言われますが、意外と二次性…病気が隠れている場合があります。特にホルモンバランス、体の調整機構のバランスが崩れていることがあるのでそれは検査しないといけません。
その検査をしたうえでまずは生活習慣を変えていかなくてはいけないと思います。
今、○○さんは血圧が上昇してきていますので実はだいぶ血管は傷んでいるかもしれません。その血圧を上げる原因に関して考えてみましょう。
血圧とは血管にかかる圧力の事です。血管という土管の中を血液という液体が流れています。それを遠くに送るためにポンプ(心臓)で圧をかけて送っています。この土管はゴムみたいなものでできていて、圧がかかりすぎると「びよーん」と伸びて圧を逃がします。
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びよ~ん
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ただ、輪ゴムとかでも使っていると伸びなくなると思いますが、ずっと使われていると固くなってきて圧を逃がせなくなります。すなわち高血圧が生じているということは、少なくとも血管にそれなりのダメージはあることになります。
「なるほど。私の血管はもうダメージを受けているのですね」
ですので、血管に頼るのではなくて他のところ、血圧を上げないように気を付ける必要があります。
「どのようにして気をつければよいですか?」
まず、土管の大きさが変わらなかったら、圧力を構成する要素は「水分」になります。
「では、水分制限ですか?」
いや、違います。水は飲んでください。実は人の体の血液の量を決めるのは塩分なんです。塩分の濃度を一定にしようと体はしています。○○さんは味噌汁の味が濃すぎた、みそが多すぎた場合はどうしますか?
「水を足します」
身体も同じように塩分が多すぎる。これでは濃度が高くなりすぎてしまうからと、血管の中に水を一杯入れるんです。そうすると血管内に水が多くなって「血圧」は上昇します。
「なるほど。だから塩分制限が重要と言われるのですね」
そうです。他に果物や野菜の中に多い「カリウム」が塩分を逃がしますので、これを多く摂取した方が良いというのもあります。タバコも血管にダメージを与えますので駄目です。
「制限が多いですね」
そうですね。ほかに運動をして、ある程度体重をコントロールしたりする必要もあります。
生活習慣病と言っていますが、その生活習慣で血圧が上昇、病気が進行する方向に行く病気だということを言っています。
(一次関数のグラフを書いて)
○○さんの今の生活習慣ではこのような傾きになっています。今のままでは薬を使用しても血圧が上昇する方向に行く速度は変わりません。この傾きを生活習慣を変えることで、(傾きを下げる)血圧が正常になっていくかもしれませんし、正常にならなくてもそこで薬を使用すればその後進行する速度が遅くなります。
血圧を下げることは重要ですが、そのおおもとにある「血圧を上昇させる傾き」を改善させないとすぐに新しい薬を追加して…という「いたちごっこ」になってしまいます。
まずは検査をして、二次性の要素がないかを確認します。そしてこれから先ほど言ったような生活習慣の改善に努めてください。
塩分制限が重要ですが、体重管理ということも含めて「食べる量の制限」でもいいです。食べる量をへらせば自然と塩分摂取量も減りますので。
あとは適度な運動と野菜などの摂取に心掛けてください。
検査結果が出るのが数日後ですが、異常があればご連絡します。そうでなければ、まずは生活習慣の改善を心がけ、自宅でも血圧を測って経過を見てみてください。薬を使用するのは3か月後くらいの結果を見て考えましょう。
「わかりました」
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こんな感じで話しています。下の血圧が高い人は心臓の負担が患者さんが思っているよりも高いので気を付けましょう。
大学で生活習慣病まで相手にするとここら辺の説明を知ったりしなくてはいけませんので、余分な時間がかかってしまいます。だから、専門性の高い大学病院の外来ではできれば生活習慣病などは他の病院で診てもらってほしいといっています。
この辺の説明するのに最低で15分かかります。
生活習慣病と言われているものはこの説明が重要だと思っています。まぁ、たまに「さっさとくすりをよこせばいいんだよ」という方もいましたが(汗
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
僕の病気の説明(患者さん向け)シリーズ(?)
が1つのジャンルにしてもいいくらい有用な予感。
参考になるし、先生自身も改めて内容の整理になる
だろうし、公開する事の意味も大きいと思います。
私は毎回、会社の検診で高血圧と言われるんですが、
危機感というか、実際の行動に結びつくような説明を
してもらったという記憶がありません。
なんとなく"世間一般に"高血圧ってダメだから塩分
控えましょう的な?
今回の先生の説明で納得いったというか、程よい危機感
を持てたし、私にとって有用だったのは、
・血圧の上昇による血管の損傷の可能性・仕組みが分かり易い。
・塩分が直接ではなく、体が水で薄める事で血圧上昇という
説明から「確かに塩分控えめにしなきゃ」という実感に近い
ものを感じられた。
・果物や野菜をとる目的がカリウムの摂取(できるだけ食事で
摂りたいけど、忙しい時はサプリも選択肢にできる)
・食事制限も選択肢に入る。
そんな感じで私でも少し具体的な行動につながりそうな
説明でした。(全部守らなきゃダメ的な改善法は受け入れ
難く、背景を理解した上での選択肢が欲しかったのです)
質問があるのですが、30代で高血圧の指摘を受けた場合で、
原因が生活習慣としたら、生活習慣全体を変えるのは
難しいと思うのです。
例えば、平日は1日中PCモニタを見ての作業で、残業も
しばしば発生しており、生活のリズムは不規則でしか
ありえない。食事も外食に頼らざるをえない場合です。
週に2・3日(できれば1日)なら自由に何かできるし、
多少のお金も掛けられます。そんな状況で下の血圧が
高い人間が採用すべき習慣、アイデアなんてありますか?
こんばんは、コメントありがとうございます
このシリーズ(?)、実は「医学系」というところに集めてみております。まるるうさんがおっしゃるように「僕の知識の整理」にもなります。また、わかりやすくて役立つといっていただけるのであれば「週に1回」くらいはこのようなものを書いてみようかと思います。ありがとうございます。
30代の高血圧を「生活習慣だけですか?」と言われたら、否定はできませんが50代以上と比較すると「背後に病気が隠れていないか」を積極的に検査すると思います。(もし、検査を受けられた記憶がないようでしたら、一度検査を受けてみるのが良いのではないかと思います)
ただ、病気が隠れている、いないにかかわらず生活習慣を改善するのは重要だと思います。
生活習慣病の「生活習慣の改善」の3つの要素は「食生活の改善」「適度な運動」「肥満の改善」の3つだと思います
外食が多いということであればできるだけ野菜の多いものを食べるようにするとか、毎日野菜ジュースなどを飲む。
あと、時間のある時に1日30分以上の運動(早歩き程度でもよいかと)を行うなどが良いと思います。
まるるうさんが「生活習慣を変えてみよう」と思ったことが最も大事だと思います。
ちなみに失礼なことを伺いますが、下の血圧(拡張期血圧)が高めということですが、イメージとしては「心臓が休んでいる(もっとも楽な状態)になっても血圧が高い」という状況です。こういう方は少し体ががっちりしている人だったり、柔道などをしている方などが多かったりします。
もし、そういう印象で当たっているようでしたら「少し食べる量を減らす」+「適度な運動」の組み合わせが良いかもしれません。
乱筆を失礼いたしました。
また、コメントいただければと存じます