■Lucky Man / Emrson, Lake & Palmer (Cotillino / ワーナーパイオニア)
プログレやってるミュージシャンは必然的に大作主義なんでしょう、レコードはアルバムメインで作るのを普通にしていたのが1960年代後半からの流れでありましたが、しかし一流の人気バンドであればこそ、例えばムーディー・ブルースやプロコルハルムの様にシングルヒットを出す事も義務付けられていました。
というよりも、そうしたシングルヒットがプロモーションには絶対に必要だったわけで、新作アルバムの発表や巡業の集客を狙っての策略が音楽ビジネスの常識という事なのでしょう。
で、本日掲載したのはエマーソン・レイク&パーマー=ELPの初めてのシングルヒット盤で、ご存じのとおり、彼等のデビューアルバムからカットされたものです。
ところが驚いた事には、後にメンバーが語ったところでは、この「Lucky Man」がシングルカットされ、しかもヒットしていた実態を知ったのは、ELPが巡業でアメリカに到着した1971年のその日だったそうで、ヒットするのは嬉しい反面、これは決して自分達の音楽を象徴していはいないっ!
曲を書いたグレッグ・レイク以下、メンバー全員が、そう思ったというのですから、穏やかではありません。
う~ん、そうでしょうねぇ~。
だって、ELPと言えば、1970年の公式デビュー時からキーボードロックの王者として、激烈なライプパフォーマンスと構成力豊かな音楽表現をウリにしていたのですから、確かに優れた楽曲の「Lucky Man」にしても、小品であるがゆえに、その一部にしか接することが出来ないフォーク調の音楽世界は、ELP絶対主義には馴染まないはずです。
しかし、既に世界中から期待される次のアルバム制作に些か迷いがあったというELPは、それによって大作指向に邁進する決意を固めたそうで、もちろん完成したのは、あの傑作「タルカス」だったのですから、何が幸いするかは分かりません。
ということで、文字通り、結果オーライのラッキーな名曲として、サイケおやじは後追いの感慨に耽ってしまったというわけです。
ただし、ELPはそれなりにヒット狙いの楽曲を作り、シングル盤を以降も出し続けていったのですから、決して頑固な面々の集まりではなく、そこにグループ自らの意思があるか、否か!?
そういう拘りが一流の証明と思うばかりです。