OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

マーク・ボランの退廃ロッカバラード

2012-07-13 16:01:33 | Rock

Teenage Dream c/w Satisfaction Pony / Marc Bolan & T.Rex (EMI / 東芝)

急激なブームが去っていく時の非常な速さは、殊更芸能界では顕著ですが、しかしミュージシャンの場合は人気が下り坂の時期ほど、印象的な歌や演奏を残すことが稀ではありません。

例えば本日ご紹介のシングル盤は1970年代前半、爆発的に盛り上がったグラムロックの象徴的な存在だったマーク・ボラン率いるT.レックスが1974年春に出した1枚なんですが、トップテンに入るようなヒットにはならず、加えてバンド内のゴタゴタやメンバーチェンジ、さらには制作スタッフの離反等々が重なっていた時期とあって、極言すれば落目の証左とも言うべき扱いが一般的な評価かもしれません。

しかしサイケおやじにとっては、これがなかなか心地良い愛聴盤♪♪~♪

特にA面「Teenage Dream」はオールディズ調の所謂甘美なロッカパラードで、しかもバックの女性コーラスやチープさが不思議な刹那の魅力というストリングスに彩られて歌うマーク・ボランの諦めたような表現がたまりませんし、ドタバタしたドラムスや痩せたギターサウンドも良い感じです。

ちなみに当時のT.レックスはマーク・ボラン以下、相棒のミッキー・フィン(per)、そしてスティーヴ・カーリー(b)、ビル・リジェンドから交代したデイヴ・ラットン(ds) が主力メンバーであり、他にサポートでジャック・グリーン(g)、また女性コーラス隊として、後にマーク・ボランの子供を産んでしまうグロリア・ジョーンズ等々が参加しはじめた時期だったんですが、プロデュースとストリングスアレンジを担当していたトニー・ヴィスコンティとは、これが最後の仕事だったと思われます。

う~ん、尚更に退廃的なムードが強いのは、その所為?

と感じざるをえないほど、この「Teenage Dream」の醸し出すムードは良いですねぇ~~♪

一方、B面の「Satisfaction Pony」はハードロック系のギターリフを基調にした十八番のブギと新機軸のラップ系黒人音楽をゴッタ煮としたような、摩訶不思議なサイケデリックポップスで、個人的には意想外に跳ねまわるベースやヘタウマなギターがお気に入りなんですよ。

あぁ、こういう事をやってくれる臆面の無さこそが、マーク・ボランの魅力じゃ~ないでしょうか♪♪~♪

しかし結果的に、このシングル盤あたりを境にT.レックスは急速な人気の凋落が止まらず、アメリカに拠点を移すような行動から前述したトニー・ヴィスコンティとの決別、さらにはティラノ時代からの名コンビだったミッキー・フィンのグループ脱退と続く流れは、マーク・ボランという稀代のスタアが落目の反面教師的な立場に見られたんですから、本当に哀しいところ……。

ところが音楽的な部分で言えば、そういう現実の退廃があってこそ、実は真に輝いていくマーク・ボランの本質が浮き出していて、今となってはグロリア・ジョーンズを悪者にする事も吝かではない雰囲気が、個人的にプラスになっていたと思います。

そして皆様ご存じのとおり、マーク・ボランは1977年9月、グロリア・ジョーンズの運転する車の事故により他界……。

全てがそこへ収斂してしまった事により、なにか星屑伝説ばかりが強調されるのはツライですねぇ。

ということで、実はサイケおやじが一番好きなT.レックスは、一般的な人気が落ちていった時期なのです。もちろん直前まで続いていた全盛期も好きではありますが、後期のちょいと崩れた感じは唯一無二で、黒人ソウルミュージックの感染と恋煩いの如き音楽性は、誰のものでもありません。

繰り返しますが、一般的な人気が薄れたとはいえ、皆様にはノスタルジックなムードも強い、この「Teenage Dream」あたりからマーク・ボラン&T.レックスの後期再評価をお願い申し上げます。

コメント (4)
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