OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

キャノンボールの最強バンド映像

2009-04-02 12:12:15 | Jazz

Cannonball Adderley Sextet 1962-63 (Jazz Shots = DVD)

これも最近入手した復刻映像♪♪~♪

さて、モダンジャズが最も幸せだった時代は1960年の前後数年間だったと、今更ながらに思います。

例えば白人ではチェット・ベイカーやディブ・ブルーベックのバンドが大ブレイクし、黒人ではジャズメッセンジャーズやマイルス・デイビスがメジャーと契約し、さらにセロニアス・モンクが白人中心のファンにウケ、スタン・ゲッツがボサノバでブームを巻き起こすといった、本当に素晴らしい状況でした。

キャノンボール・アダレイが率いたバンドも、その中で大活躍! 本日ご紹介のDVDは、1962年~翌年にかけて出演したテレビでのライヴショウを纏めたブツです。

メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ナット・アダレイ(cornet) の兄弟を中心にユセフ・ラティーフ(ts,fl,oboe)、ジョー・ザビヌル(p)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という全盛期のセクステットで、映像は全てモノクロです。

☆1962年11月、ロスでの収録:約27分
 01 Theme & Announcement
 02 Jessica's Birthday
 03 Primitivo
 04 Jive Samba
 05 Work Song
 06 Closing Theme & Announcement

 これは今までにも度々パッゲージ化されたアメリカの人気ジャズ番組「Jazz Scene U.S.A.」のリスマターで、結論から言えば画質&音質は過去最高のAランクです。
 オスカー・ブラウン Jr. のセンスの良い司会もさることながら、途中でインタヴューに応じながら、最後には番組を仕切ってしまうキャノンポール・アダレイが、なんとも憎めません。スタジオにはシングルヒットとなった「African Waltz」が入ったアルバムもディスプレイされ、おそらく番組への出演も、そのおかげかもしれません。
 肝心の演奏は、まさにそうした当時の勢いがそのまんまという凄い充実度で、バンドアンサンブルも鮮やかな「Jessica's Birthday」はアップテンポの痛快なハードバップ! ウネリを伴って豪快にドライヴしまくったキャノンボール・アダレイのアルトサックスが、とにかく強烈です。
 そしてタイトルどおり、原始的なモードを使った感じの「Primitivo」は、重厚にして緻密なバンドのアンサンブルと各メンバーのアドリブが深淵にして真っ黒! 竹笛やオーボエを神妙に吹奏するユセフ・ラティーフも印象的ですし、ジョー・ザビヌルのピアノが実にディープな心情吐露♪♪~♪ もはや単なるファンキーバンドから脱却したグルーヴの凄味が如実に出ていると感じます。
 しかし、やっぱりこのバンドはファンキーで陽気なノリが本来の魅力でしょうねぇ。それがお馴染みの「Jive Samba」と「Work Song」の2連発で最高潮♪♪~♪ ルイス・ヘイズのドラミングも実に爽快で、様々なビートをゴッタ煮とした美味しさが満喫出来ますよ。
 全篇を通して音質はモノラルミックスですが、各楽器のバランスも良く、キャノンボール・アダレイのアルトサックスは激しく咆哮し、ナット・アダレイやユセフ・ラティーフが持ち味を発揮すれば、ジョー・ザビヌルは相当に危なくっているとはいえ、まだまだ髪の毛があった時代の力演を披露していますし、サム・ジョーンズの堅実なプレイやルイス・ヘイズの上手さにも脱帽されると思います。

☆1963年7月、東京で収録:約55分
 07 Jessica's Birthday
 08 Brother John
 09 I Can't Get Started
 10 You And Night And The Music
 11 One Note Samba
 12 Work Song
 13 Scotch And Water
 14 Tengo Tango
 15 Trouble In Mind
 16 Jive Samba

 これは来日時に東京のTBSで収録のスタジオセッションで、前述したバンドに加えて黒人女性歌手のトニ・ハーパーが同行しており、「You And Night And The Music」と「One Note Samba」の2曲を歌っています。
 もちろん演奏はいずれも絶頂期の証明になっていますが、残念ながら画質はB……。それでも今まで出回っていたブートビデオよりは多少、マシでしょうか。ただし音質は相当に改善されています。
 演奏内容では、特に気になるトニ・ハーパーがリズム隊だけの伴奏で個性的な歌唱を聞かせてくれますが、ここは十人十色の好き嫌いかもしれません。
 個人的には後半の「Work Song」からが圧巻で、特にアダレイ兄弟が抜けてバンドメンバーに花を持たせたような「Trouble In Mind」が、ユセフ・ラティーフのディープなオーボエとジョー・ザビヌルの思わせぶりなピアノの名演で印象的♪♪~♪
 ちなみにユセフ・ラティーフはアドリブの中に中近東系のメロディやスケールを使うので、サイケおやじには苦手のひとりなんですが、このバンドの中では同様の試みも許容範囲だと思います。と言うよりも、実は凄い実力者だと痛感させられました。
 それとジョー・ザビヌルがビル・エバンスとウイントン・ケリーの中間のような、実に好ましい正統派ジャズピアノを披露して、好感が持てます。前年の映像と比較して、ますます存在感が薄くなっている髪の毛も……。
 肝心の主役、アダレイ兄弟は流石の大看板! キャノンボール・アダレイが「I Can't Get Started」のバラード演奏で兄貴を貫禄を示せば、ナット・アダレイは得意の作曲能力を遺憾無く発揮し、特にタンゴのファンキー的解釈という「Tengo Tango」では陽気なグルーヴが大爆発! その導火線となっているのがナット・アダレイというわけです。
 既に述べたように画質は良くありませんが、演奏そのものは秀逸ですから、十分に楽しめると思います。

☆1963年3月24日、スイスでの収録:約19分
 17 Jessica's Birthday
 18 Angel Eyes

 これが個人的にはお目当てというか、今まで全く観たことが無かった映像です。
 やはり同じバンドによる欧州巡業中にスイスで収録されたスタジオセッションで、画質&音質は一部で乱れもありますが、満足出来るAランク♪♪~♪
 ちなみにフィルムスタートのテーマにはキャノンボールらしく大砲のアニメを使い、そのバックには、やはりヒットしていた「African Waltz」が流されるというあたりが、なかなか当時の流行を物語っているのかもしれません。
 肝心の演奏は「Jessica's Birthday」が前記のパターンと同様に熱演! これが本場のハードバップだっ! というバンドの矜持が感じられますよ。
 そして緻密なアレンジを用いた「Angel Eyes」が、ユセフ・ラティーフの素晴らしいフルートを前面に出した名演♪♪~♪ 素直なテーマメロディの吹奏に寄り添うリズム隊ではジョー・ザビヌルが優しく、それでいてミステリアスなコード選びの伴奏で高得点ですし、主役を与えられたユセフ・ラティーフの丁寧なメロディフェイクも良い感じでしょうか。失礼ながら怪人的な風貌とは正反対のジェントルな演奏が、なかなか魅力的♪♪~♪ 十八番の唸り声奏法も憎めません。

ということで、全盛期だったキャノンボール・アダレイとそのバンドの真髄が楽しめると思います。とにかく各メンバーが物凄い実力者だったんですねぇ~♪ 特にユセフ・ラティーフは個人的には先入観があって、イマイチ好きになれないプレイヤーなんですが、ここでの真摯なジャズ魂には圧倒されてしまいました。

またウェザーリポートでのジョー・ザビヌル以前の姿を見せてくれる本人のピアノも魅力的で、やはり並々ならぬ才人の証明でしょう。

サム・ジョーンズとルイス・ヘイズという、真正ハードバップのリズムコンビが真髄を堪能させてくれるところも楽しく、もちろんアダレイ兄弟は手抜き無し! 演目がダブったりするとはいえ、そこはアドリブの世界ですから、それぞれに素晴らしいお楽しみが用意されています。

モダンジャズがもっとも大衆的だった当時の勢いが、ここに復刻されたのは喜ばしいですね。次は続く時期のロック&ファンキー時代を、ぜひとも観たいものですね。

コメント
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