OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ハービー・ハンコックの気持ち良い系

2009-03-17 08:48:01 | Jazz

Speak Like A Child / Herbie Hancock (Blue Note)


昨日はハービー・ハンコックに対して、些か失礼なことを書いてしまいましたが、やっぱりこの人も、基本は気持ち良い系のピアニストじゃないでしょうか。

そのあたりが最も顕著に楽しめのが、本日ご紹介の人気盤でしょう。

録音は1968年3月5&6日、メンバーはハービー・ハンコック(p,arr)、ロン・カーター(b)、ミッキー・ローカー(ds) というピアノトリオをメインに、サド・ジョーンズ(flh)、ピーター・フィリップス(b-tb)、ジェリー・ドジオン(fl) というホーンセクションが彩を添えています。

A-1 Riot
 ハービー・ハンコックのオリジナル曲というよりも、マイルス・デイビスが前年に制作した名盤「Nefertiti (Columbia)」の初演バージョンが歴史的でしょう。しかし、この自作自演バージョンも、それに劣らぬというか、別の魅力に溢れた決定的な名演だと思います。
 それは緊張感漂うトリオのアンサンブルはそのままに、クールに突っ込んだマイルス・デイビスのバージョンよりは、柔らかなホーンのハーモニーが彩るテーマ部分の気持ち良さ♪♪~♪ そして続くハービー・ハンコックの流麗なモード節のジャズ的な快感に他なりません。ミッキー・ローカーのハードで軽いドラミングも良い感じです。
 う~ん、それにしてもイキそうでイカないハービー・ハンコックのアドリブは、いつまでも続くエクスタシー寸前の快楽がありますねぇ~♪ 業を煮やしたように入ってくるホーンセクションのハーモニーも、ギル・エバンスの風味を大衆的にしたような分かり易さが結果オーライだと思います。

A-2 Speak Like A Child
 そしてこれが、ソフトなボサロックの名曲名演♪♪~♪
 クールなハービー・ハンコックのピアノに忍び寄ってくる柔らかなホーンのハーモニーという、このアルバム全体の目論見を象徴する仕上がりだと思います。
 実際、この気持良さはお洒落なメロウフィーリング、あるいは黒人ソウル的な甘さ、さらにモダンジャズだけの粋な風情が最高に楽しめますよ。
 リムショット主体に余計な手出しをしないミッキー・ローカーのドラムス、絶妙の十八番もさり気ないロン・カーターのペースワークも素晴らしいと思います。
 またホーンアレンジは、またまたギル・エバンス流儀の膨らみがニクイところですが、なんかフワフワした女性ボーカルのスキャットが聞こえてきそうな雰囲気さえも感じます。

A-3 First Trip
 一転して軽快な4ビートによる楽しいピアノトリオの典型的な演奏です。その全体の流れをリードするロン・カーターのウォーキングベースも流石ですねぇ~♪ これも作者の強みというところでしょうか。
 ハービー・ハンコックのピアノも、マイルス親分との共演よりは遥かにリラックスしたムードが強く、思えば当時のハービー・ハンコックは長い間、正統派ピアノトリオのアルバムは作っていませんでしたから、このアルバムとこの演奏は、その飢えと渇きを癒してくれましたですね。

B-1 Toys
 これもギル・エバンスの影響下にあるホーンのハーモニーを活かした、新主流派ど真ん中のモード曲です。フワフワしたテーマアンサンブルから力強い4ビートのアドリブパートへと展開されるあたりは、ここでもロン・カーターのペースが大きな役割を果たしているようです。
 そしてハービー・ハンコックのピアノがファンキーな味わいも滲ませながら、実に厳しく、同時に和みを優先させた名演アドリブですよっ♪♪~♪ ミッキー・ローカーのドラミングもシンプルにトリオをスイングさせています。

B-2 Gooby To Childhood
 このアルバムの中では一番に深淵ムードの曲で、じっくりとしたスローテンポと重厚なホーンアレンジの妙の中、ハービー・ハンコックが極めて思索的なピアノを聞かせてくれます。
 このあたりは、今にもマイルス・デイビスのトランペットが聞こえてきそうな雰囲気になっていますし、リスナーもそれを期待するのが正直なところだと思います。しかし演奏が進につれ、ハッと気がつくと、完全にハービー・ハンコックのピアノに酔わされているんですねぇ~♪
 ちなみにこのアルバムのジャズ喫茶での定番はA面でしょうが、実はこの演奏ゆえにB面を鳴らす店も少なからずあると言われています。
 このクールでハートウォームなムードは、まさにハービー・ハンコックの真骨頂かもしれません。浮遊感に満ちた気持ち良さは、言わずもがなでしょうね。

B-3 The Sorcerer
 これもマイルス・デイビスの名盤「Sorcerer (Columbia)」で、堂々のアルバムタイトルとされたハービー・ハンコックの代表曲! その自作自演バージョンが鮮やかに楽しめます。とにかくスッキリとメリハリの効いた4ビートの快感と爽やかさえ感じるモード節が、最高です。
 そしてロン・カーターもミッキー・ローカーも、実に楽しそうですから、リーダーも十八番のフレーズを出しまくり♪♪~♪ わかちゃいるけど、やめられませんねっ♪

ということで、これもA面か? あるいはB面か? という論争ネタのアルバムでしょう。それだけ全体が秀逸な仕上がりで、しかも楽しく、心地良いのですから、人気盤になるのもムベなるかな!

ラブリーなジャケットも微笑ましく、それを見開いた内側からレコードを取り出すというアナログ盤ジャケットを実際に手にしてみれば、なおさらに凝ったコンセプトがニクイほどだと思います。これは見てのお楽しみ♪♪~♪

そしてハービー・ハンコックは既に述べたように、正統派ピアノトリオ盤を出していな時期が長かった所為で、ピアニストとしての評価は、このアルバムに集約されていたのが、当時の実情でした。

ホーンが参加した所謂セクステットでありながら、アドリブは完全にピアノ中心というも凄いと思います。ただし、個人的な欲望としては、こういう企画こそ、ハービー・ハンコックのエレピで聴きたかったというのが本音です。

リメイクしてくれませんかねぇ~。

コメント
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