5年前の香港のホテル。フカフカの絨毯が敷かれた廊下をエレベータのほうに歩いているとき
急にクラっと来てそのまま意識を失ってしまった。倒れる前、一瞬、これは容易ならざる事態だと
倒れながらも、手すりを探すようにしたのが最後の記憶だ。
次に気づいた時は、天井が見えて、どうやらエレベータの中で倒れているらしいと気がついた。
頭にコブもある。
どうやってエレベータの中に入ったのかもよくわからないが、エレベータはどこからも呼ばれないせいか
ドアは閉じているがそのまま動く気配がない。
ゆっくり起き上がって、ポケットに手をやると、眼鏡ケースが真ん中で大きくへこんでいる。
自力で部屋に戻り、ふと思いついてロビーのコンシェルジェを尋ねてみた。
「私は4号機のエレベータで倒れていたのだが、エレベータの中に監視カメラがあれば、どのように倒れてどのくらい倒れていたのか知りたい。」と伝えてみた。
コンシェルジェが、あわてた様子で、裏手に駆け込んだ。
しばらくして戻ってきた時は副支配人を伴っている。
「確かにお客様は倒れていました。」
「どのくらいの時間倒れていましたか?」と私。
「ビデオの記録からすると約7秒間です。」
「どんな風に倒れましたか。」
「開いたエレベータに入って左の手すりに頭をぶつけるようにしてそのまま倒れました。」
「そのビデオを見たいのですが。」
「それは、お見せできません。」
「セキュリティの方は、私が倒れた時、カメラがとらえていたのならすぐさま助けにかけつけるはずではありませんか。」
その後は、少しふらつくもののそのまま部屋に押し込まれて、看護婦は来るは、副支配人は
来るはで、部屋の中はごったがえした。
看護婦からは「日本に戻って、精密検査を受け他方が良い。」と言われたが、言われるまでもなく、そうするつもり。
ホテル内のレストランの食事券を置いていったのが、せめてもの「わび」のつもりなのだろう。
大騒ぎがひと段落したところで、女房がゆっくりとスパから戻ってきて、「何かあったの」と聞く。
「いや、大したことではないが、ちょっと死んでみただけだ。」
この倒れていた7秒間。
本人はエレベータに乗るつもりではいたが、入り口のはるか手前から記憶にないので、どうやって、エレベータの扉を開けて中に入ったのかわからないが、
エレベータの中での時間よりも長い時間、多分10秒以上は意識がないはずだ。
倒れる瞬間に「あぁ、このまま死ぬのか」と思った記憶がある。
次に、体全体が何とも温かい居心地の良いものにふっくらと包まれたような気分になって、
「これが死ぬ時感じることなのか。死ぬのがこんなに気持ち良いものなら少しもこわくはない」
広い空間、砂漠というか砂丘のふもと近くに、倒れているのではなく、何となく地面
ちかくに居る。
居ると言っても、地上に足をついているのではなく軽く浮いているようだ。
砂丘の上に広がる青い、雲ひとつない深い空が印象に残っている。
また、人っ子一人いないが、不思議とさびしい気持ちはない。
一瞬、残した家族のことが頭によぎったが、それよりもたちどころにあの砂丘の向こうに何があるのだろうか、行ってみようという好奇心の方が勝り、
大げさに言えばワクワクとした気分になって前世のことなどすっかり忘れてしまいそうになった。
いざ、砂丘へと思ったところで、意識が戻ったような気がする。
今は、人に話す機会がある度に、死ぬのは少しもこわくはないから安心してと話すようにしている。
急にクラっと来てそのまま意識を失ってしまった。倒れる前、一瞬、これは容易ならざる事態だと
倒れながらも、手すりを探すようにしたのが最後の記憶だ。
次に気づいた時は、天井が見えて、どうやらエレベータの中で倒れているらしいと気がついた。
頭にコブもある。
どうやってエレベータの中に入ったのかもよくわからないが、エレベータはどこからも呼ばれないせいか
ドアは閉じているがそのまま動く気配がない。
ゆっくり起き上がって、ポケットに手をやると、眼鏡ケースが真ん中で大きくへこんでいる。
自力で部屋に戻り、ふと思いついてロビーのコンシェルジェを尋ねてみた。
「私は4号機のエレベータで倒れていたのだが、エレベータの中に監視カメラがあれば、どのように倒れてどのくらい倒れていたのか知りたい。」と伝えてみた。
コンシェルジェが、あわてた様子で、裏手に駆け込んだ。
しばらくして戻ってきた時は副支配人を伴っている。
「確かにお客様は倒れていました。」
「どのくらいの時間倒れていましたか?」と私。
「ビデオの記録からすると約7秒間です。」
「どんな風に倒れましたか。」
「開いたエレベータに入って左の手すりに頭をぶつけるようにしてそのまま倒れました。」
「そのビデオを見たいのですが。」
「それは、お見せできません。」
「セキュリティの方は、私が倒れた時、カメラがとらえていたのならすぐさま助けにかけつけるはずではありませんか。」
その後は、少しふらつくもののそのまま部屋に押し込まれて、看護婦は来るは、副支配人は
来るはで、部屋の中はごったがえした。
看護婦からは「日本に戻って、精密検査を受け他方が良い。」と言われたが、言われるまでもなく、そうするつもり。
ホテル内のレストランの食事券を置いていったのが、せめてもの「わび」のつもりなのだろう。
大騒ぎがひと段落したところで、女房がゆっくりとスパから戻ってきて、「何かあったの」と聞く。
「いや、大したことではないが、ちょっと死んでみただけだ。」
この倒れていた7秒間。
本人はエレベータに乗るつもりではいたが、入り口のはるか手前から記憶にないので、どうやって、エレベータの扉を開けて中に入ったのかわからないが、
エレベータの中での時間よりも長い時間、多分10秒以上は意識がないはずだ。
倒れる瞬間に「あぁ、このまま死ぬのか」と思った記憶がある。
次に、体全体が何とも温かい居心地の良いものにふっくらと包まれたような気分になって、
「これが死ぬ時感じることなのか。死ぬのがこんなに気持ち良いものなら少しもこわくはない」
広い空間、砂漠というか砂丘のふもと近くに、倒れているのではなく、何となく地面
ちかくに居る。
居ると言っても、地上に足をついているのではなく軽く浮いているようだ。
砂丘の上に広がる青い、雲ひとつない深い空が印象に残っている。
また、人っ子一人いないが、不思議とさびしい気持ちはない。
一瞬、残した家族のことが頭によぎったが、それよりもたちどころにあの砂丘の向こうに何があるのだろうか、行ってみようという好奇心の方が勝り、
大げさに言えばワクワクとした気分になって前世のことなどすっかり忘れてしまいそうになった。
いざ、砂丘へと思ったところで、意識が戻ったような気がする。
今は、人に話す機会がある度に、死ぬのは少しもこわくはないから安心してと話すようにしている。
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