倉子城物語
格子戸
3
本城はぽっりぽっりと話し始めた。
秋の獲り入れを終えた頃、山陽道を二人の少年が京を目指し歩いていた。歩幅は軽やかだった。目は希望に満ちていた。
備中北房呰部の産まれ刀鍛冶の倅達だった。が、殆ど刀を打つ事がなく鍬や鎌を作り、たまに頼まれて鉈や包丁を拵えた。刀工國重以来の伝統の業は泰平の世では必要がなかったのも廃れるもとであったろう。
京までは同じ想い、先祖に恥じない刀鍛冶になろうが合い言葉であったが、純粋な少年の目に映ったのは綻びかけた散る前のあやうげな世情の波だった。
戦になる、その予感が斬れればいいだけの刀を造らせた。刀鍛冶は殺す刃を作ることのみに専念していた。
少年の一人はそれに嫌気がさし江戸へ出た。お玉が池の千葉へ通った。
もう一人は刀に拘って、辛抱し続けた。
「みつさん、あなたはいい父親を持ったな」と本城は言葉を落とした。
そして、
「人間とは、縦に生きる事しか出来ぬ者と、横にしか生きられない者がいる。今の歳になってもその何方がいいのかさっぱり分からん。まるで格子戸のようじゃ」
と呟いた。
「おとっちゃん、おっかさんのことを聞いていい」
みつは國蔵に本城の話を済ませた後に聞いた。
「おまえも分かる年ごろになったから・・・」
皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・
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