倉子城物語
格子戸
1
鶴形山には、観竜寺と阿知神社がある。また、北側は墓地となっていて、沢山の石塔が立ち並び、彼岸と盆には香が立ち昇る。
山を下りると倉子城で一番賑やかな本町へ出る。低い軒の商家が並んでいる。旅篭、小間物屋、提灯屋、研ぎ屋、化粧(けわい)屋、陶器屋、この道筋に来れば何でも揃った。 大店は汐入り川に面して並んでいたが、小商いの商家は裏道の本町通りに集まっていた。村人の出入りが多いのは何でも揃うこの通りであった。
秋の祭りの頃のことである。
「おみつ、阿知の神様へ御参りしてもいいよ」
と女将が帳面をつけていた顔を上げて、空雑巾で格子窓を拭いている小働きのみつに声をかけた。
「いいのでしょうか」とみつは心の表情を顔に表して言った。
「素隠居に生剥げが剽軽に舞って賑やかだょ」
素隠居というのは、ひょつとこに似た面を被りおぶりの内輪を持って煽り、村人に福を授けるというもので、生剥げは天狗のような面を被り荒法師が持っ鳴物の杖で村中を歩き災難を追い払うというものであった。
みつが、木賃宿「波倉」に小働きとして奉公にあがったのは十二の時だった。それから三年が過ぎていた。
みつには母がいなかった。尋ねると死んだと父は顔を背けて言った。それから母のことは聞いたことがなかった。
倉子城から浜の茶屋を通り生坂の峠を越えた西に広がる地がみつの産まれた清音と言う土地であった。
「波倉」の女将はみつの伯母であったから優しさと厳しさで、嗜み躾はとくに喧しかった。ぞんざいな扱いは受けなかった。
皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・
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別の角度から環境問題を・・・。
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