yuuの夢物語

夢の数々をここに語り綴りたい

麗老の華 1.2

2011-02-09 22:45:02 | 創作の小部屋
春は花夏ほととぎす秋はもみぢ葉


麗老の華

1・・・(1)

 車を駐車場にきちんと止めたと思ったが左に切りすぎていた。そんな事が最近増えていた。
 このあたりで定年か・・・。そのことで逢沢雄吉は心を決めた。相談する人はいなかった。妻は二人の子供を残してあっさりとなくなっていた。二人の子供たちも年頃を迎え相手をどこからかみつけて巣立っていた。
 おかげで家のローンも完済していたから退職金と年金で食べていけることに心を撫で下ろしたが、一人の家での生活がどうなるのか不安はあった。一人二人と家を出て行き寂しさを持ったがそれは一時のことで、南向きの和室に万年床を敷いて過ごしたのだった。休みの日にはカーテンを開きサッシを開ければ日差しは布団を乾かしてくれ、きれいな空気を満たしてくれた。そのことに雄吉は満足していた。
 まだ幼かった子供たちを残されたとき、どうなることかと案じたがどうにか育てることが出来た。やれば出来る物だと言うことをそのとき知った。
 雄吉は定年に対してあれこれ考えてはいなかった。下請けに行く事も出来るがといわれていた。が、前のように車を停車できないことで区切りをつけたのだった。それと年ごとに寒さに対して体が適応しなくなったこともあった。下着を二枚着なくては過ごせなくなっていた。

麗老1・・・(2)

「下車するの」
「車が真っ直ぐ駐車できなくなったから、降ります」
「それなによ」
「切っ掛け」
「そうなんだ」
「そう」
「これから国家公務員になるんだ」
「年金生活」
「羨ましいわ」
「手足もぎ取られるようで、ほんと寂しい」
「年取らないでよ、真っ赤なスポーツカーを買って颯爽と生きてよ」
「これから考えるよ、何かを作らなくてはと思ってる」
「それでどうすんの」
「なによ」
「女作って子供作って・・・」
「そんな歳でもないよ」
「一休さんは八十で子をなしたって・・・」
「羨ましいね」
「奥さん亡くしてどうしてたの」
「忙しかった」
「もう、色気がないんだから。男は少し悪の方がもてるのよ」
「いいよ、もてなくても」
「いい人紹介しょうか」
「また来るよ」
「逃げるのね」
「ああ」
「まだ寒いから、暖かくしてね」
 雄吉は仕事から帰ったら近くの居酒屋で時間をつぶすのを日課にしていた。あまり飲めないので燗を二本と旬の魚料理を食べるのであった。


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