チェイルチョアハヌン韓国ドラマ&韓国旅日記

韓国ドラマだ~いすき!
毎日韓国三昧な日々を過ごしています。
気ままな独り言におつきあいくださいませ。

創作「赤と黒」~新たなるラストシーンPart11~

2012-08-19 20:18:57 | 創作「赤と黒」
今回は 夏休みということもあって
ちょっと早いペースです。(^o^)



実際のドラマのラストシーンを利用して
創作でラストを考えてみました。
妄想の世界を
お楽しみ下さい。

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「なんですって?キム室長どういうことなの?」
テソングループの本社。社長室でテラは思わず
席から立ち上がった。幸い部屋には誰もおらず
取り乱したテラの様子を見られることもない。
「すみません。昨日はいつもと変わりなく
 散歩をされたりリハビリをされたりして
 いらっしゃったのですが…。
 付き添いの看護士の話では昼食をお持ちした
 ときにはもういらっしゃらなかったとか…」
「何が言いたいの?」
「看護士の話では,ふつう散歩に行くにも
 ナースステーションの前を通りますから
 見逃すはずはないと…テソン様が
 ご自分で密かに出かけられたとしか
 考えられないと言うのです。」
テラは受話器を置くと,顔を覆って大きなため息をついた。
切ない慟哭にも似たため息だ。
(ゴヌクが…テソンが…また,消えた。)

ゴヌクの意識が戻ってから しばらくして
父とウン部長とでゴヌクを見舞った時のことを
思い出す。
父とゴヌクは抱き合って涙を流していた。
ウン部長もハンカチで涙をぬぐう。
これが血のつながりというのだろう。
ただ見つめ合い抱きしめ合いそれだけなのに
深く静かな時間が過ぎ,最後は二人とも
穏やかな笑みをかわしていた。
「テソン…許してやってくれ。
 モネを,テラを…
 みんな私が悪かったんだ。」
「…父さん…ごめん。」
多くは語り合わなくても分かり合える
これが親子の絆なのだ。
ウン部長に父を病室から連れ出してもらい
テラは一人ゴヌクに対面した。
「テソン…ごめんね。
 こんなことになって…。
 でも,私…あなたに惹かれたわけがようやく
 分かったの。初めてあなたが家に来たときから
 ずっと私は自分を欺いていたから…
 だから,けなげに振る舞うあなたに
 惹かれたのよ。幼いあなたに。
 あなたのように素直に自分を表して
 生きてみたいと思ったの。
 ありがとう…あなたのおかげで
 私の足枷ははずれたわ。今,私は
 生まれて初めて誰の意志でもなく
 自分の意志で人生を歩いている。」
ゴヌクは伏し目がちだった視線を
テラに向けた。
「…姉さん。」


テラの頬を涙が伝った。唇をぐっと結んで
泣き出さないよう我慢する。
「…ごめん…姉さん。」
「…テソン。」
許し合い姉と弟に戻れた瞬間だった。

事件の後3ヶ月が経った。ゴヌクの体は
ほぼ元通りになっていた。リハビリも
もう必要ないくらいだったが,テラは
この際,徹底的に体の悪いところを
治療するように医者に伝えていた。
無理なスタントのせいで体の至る所を
痛めていた。歩くときに体をわずかに
傾けることがあったのはそのせいだ。

(あと少しで退院という時になって
 いったいどこへ…)
テラは携帯を手に取った。
「…もしもし,カンさん。
 父に内緒で探してほしいの。
 テソンが…病院からいなくなったの。」

創作「赤と黒」~新たなるラストシーンPart10~

2012-08-17 12:27:39 | 創作「赤と黒」

お久しぶりです。
 天候が不安定ですが
 皆様 お元気でお過ごしでしょうか?
 私の住んでいる地域では毎日 暑っ暑っ暑っ  です。
 

実際のドラマのラストシーンを利用して
創作でラストを考えてみました。
妄想の世界を
お楽しみ下さい。

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翌日 ジェインは 龍先生の工房を訪ねた。
電車に揺られて訪れる道中は
涙が止まらなかった。
一度 乗客の女性が
「大丈夫ですか?どこかお加減が?」
と心配そうに声を掛けてきた。
苦笑いしながらハンカチで涙をかくし
「大丈夫です。コンタクトがずれっちゃって…」
と苦し紛れの嘘でごまかした。

あのとき,こうしてたら…と
同じ言葉を何度も心の中で繰り返していた。
二人のテソン。ジェインにとっては
テソンとゴヌクだが,二人との思い出は
いつのどんな場面でも後悔に溢れていて
悔やまれることが多い。
唯一 楽しかった思い出。
ゴヌクと写真を撮ったあの小道での時間。
そして,龍先生のところへ向かうこの電車での時間。

「龍先生。お久しぶりです。」
工房で注文した材料の袋を覗き込んでいた龍先生の
後ろ姿にためらいながら声を掛けた。
前 来たときよりも一層たくさんのガラス作品が所狭しと
並べられている。製作意欲が増したと言っていた助手の
言葉を本当のようだ。


龍先生はゆっくり振り返ると
あまり表情を変えずに口を開いた。
「来たのか。」
「前回のガラスの仮面のことがどうしても
 気になっていて…もっと早くお詫びに
 来なければならなかったのに…
 すみませんでした。」
龍先生は別の袋の中を確かめながら言葉を続けた。
「気にするな。あんたが,壊したわけじゃないだろ。」
「はい。でも,同じ韓国の人間として恥ずかしくて…」
「作品に韓国も日本もない。あるのは作品に込めた
 想いだけだ。人の想いはどこの国でも同じだ。
 その作品を見る人の想いも…。壊れてしまうような
 作品に込められた想いなんてたかがそんなものだ。
 相手に伝わらないそんな表現しかできない俺の作品が
 未熟だったというわけだ。」
「………」
龍先生の口調は淡々としていたが
その瞳は穏やかだった。
(この感じ…誰だかに似ている?)
龍先生が似ているというよりも
この場所を支配している雰囲気が
誰かのそれに似ているような気がした。
「あんたも あんまり気にしないでいいよ。
 作品はどれでも貸すから。うちの助手と
 話して適当に決めるといい。
 じゃあな,ちょっと忙しいんでな。」
「はい,本当にありがとうございました。
 失礼します。」
ジェインは工房を後にして,待たせていた
タクシーに乗り込んだ。

工房の窓から走り去るタクシーを見ていた
龍先生が静かに口を開いた。
「なぜ,会わないんだ?」
工房の奥から一人の男が出てきた。
龍先生は男を振り返る。
「会いたい女にはちゃんと会って
 話さないと俺みたいになるぞ。」
男はふっと苦笑いを浮かべる。
「龍先生,お願いがあってきたんです。」
「?何だよ。言ってみな。」
男が窓辺に近づいてきた。
外の光が差し込んで男の横顔を照らし出す。
「ガラスの仮面を作ってほしいんです。」
男は…シム・ゴヌクだった。