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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「われてもすゑに・・・―早智子―4」

2007-02-20 08:44:11 | 自作の小説

その日の行動が決して行き当たりばったりでなく 先輩が色々計画していたのだと あたしは知らなかった

見たかった映画

行きたかった店

先輩は あたしと会うより前に 珠洲香や美智留に ずっとずっと会いたかったのだと  先にあたしへの気持ちを友人達に伝えていたことも

そして色々 できる範囲で二人の友人と彼女達の連れは 協力したらしい

あたしが知るのは ずっと後のことになるのだけれど

マンションの前で軽い抱擁 キス一つ

そして先輩は帰って行った

もっと強引に出てよ 断れない拒否できない状況へいっそ持ちこんでよ!

あたしの中に そんな気持ちがある

みんなこんな気持ちを味わったのだろうか

これでいいのだろうか という迷いと

明日は三日目になる

夜中強くベルが鳴った「さっちゃん 向こうで急な事故があった

戻らないといけない」 別れを言いにきたのだ―と先輩が言う

あたしは また この人を失うのだろうか

それに耐えられる?

嫌だわ 嫌よ

「お餞別あげる」

あたしは先輩を押し倒した

きぬぎぬの別れ という言葉がある

朝までの数時間 あたしは全身に先輩を刻み付けた

「かまわなければ」先輩の心臓の音聞きながら あたしは言った

「パスポートとって 追いかけます」

「秋に迎えにくる」

そう先輩が言う あたしの髪を撫でながら

あたしは十年前 空港までは行ったこと 怖くて 顔を見られなかったこと その気持ちを話した

「サイズが合うかどうか 上着のポケットに指輪が入っている

ずっと渡したかった」 朝となり誕生石エメラルドの入った指輪をはめてくれた

「われてもすゑに あわんとぞ思ふ さっちゃんの好きなこの歌を 10年間ずっと繰り返してきたような気がする 胸の中で

秋になったら いや やはりそれまで待てないな

この件が片付き次第 帰ってくる

だから そうしたら」

でも 先輩は帰ってきませんでした

再び施設へ事故を仕掛けた相手を捕まえようとして ただ殺される様子が警備のビデオに残っていて

あたしは泣いて泣いて そして妊娠に気付きました

先輩の置き土産

今の時代 シングル・マザーはいっぱいいます

あたしも頑張ることにしました

そう いつか あの世にいったら 文句言ってやります

だけど それまでは


「われてもすゑに・・・―早智子―3」

2007-02-19 21:50:15 | 自作の小説

和やかな楽しい時間

挙式を控え美智留は少し遠いが実家で暮らしており 仁慶さんも彼女を送るので 四人一緒に出た

「じゃ気をつけて」美智留が手を振る 仁慶さんは ただニコニコと立っていた

見送る二人の姿が見えなくなると 「他に行くところは?」と先輩が聞く

「いいえ 今夜はもう・・・」

「十年分の空白を一日で埋めようなんて 無理なことは判ってるんだ」 自嘲するように先輩が言った

長い信号待ちの間 ぽつぽつと話し始める

「あの出国の日てっきり空港へ来てくれるものと信じ自惚れていた」

「君は―こなかった」

「あのシチュエーションでは 俺という男を拒めなかっただけか 後悔してるのか

いや嫌われたのかもしれない

だから送りに来てもくれないんだ

暫く落ち込んでいた」

「俺はできれば君を連れていきたかった ついてきてほしかった

だけど君はまだ学生だった

海のものとも どう転ぶかも判らない仕事 生活 確かな約束などしたくてもできなかった

そして君が誰か他の男のモノになっても仕方ない そう自分を誤魔化し続けてきた」

「十年 他の男を選ぶ時間が君にはあったんだ」

あたしには あたしの言い分 理由がある 「間違えないで! 別に先輩を待ってたわけじゃありません ただ ただ好きになれる相手に出会えなかっただけだわ おかしな勘違いしないで

変な責任感じてほしくありません」

最後は悲鳴のような声になってしまった

「あの日 誰でも身を任せたというつもりか?」

「降りるわ!止めて」 「さっちゃん・・・」

「ばっ馬鹿にしないで ひょいと帰ってきて何寝言ほざいてんのよ」

「そう 帰ってきたんだ 君に」 先輩はアクセルを踏み込み逆にスピードを上げた

「ど 何処に行くのよ この人さらい!」

「そう君をさらいに戻ってきたんだ まだ一人だと聞いて もう一度ぶつかってみようと思った

また向こうへ戻らないといけない

次はいつ帰国できるか判らないんだ」

「間に手紙くれるとか電話かけるとか色々やりようはあったでしょうに」

「保険はかけたさ」

「え?!」

「あの夜 君が妊娠してくれれば 否応なく結婚にもっていける そう企んだ」

「な・・・」

「賭けには負けたが」

「ふざけるのも 好きだの愛してるの一言もなかったくせして 今ごろ 人をなぶらないでよ」

「あの日空港に来てくれたら 頼むつもりだった 大学卒業したら迎えに行ってもいいか―と

君は来てくれなかった

俺の自信は砕けた

君に嫌われた

そう思ったさ

忘れよう

でも そんな器用に切り換えられるものじゃない

とにかく会って ぶつかって 嫌われたままなら 望みないなら 仕方ない ただ一生のことだ 納得して諦めたい」

海岸通りを走り とんでもない遠回りしてから 車はマンションの来客エリアに停められた

「日本にはいつまでいるの?」

「あと十日」

「十日後は美智留の結婚式だわ」

友情か橋本さんの勤めるホテルでの式に決まったのだった

「見送りには行かないわ さよなら」

何処でもいっちゃえ!絶対見送りには行かないわ

先輩の言ったことなんて 一つも信じない

なのに また泣きながら眠ってしまったわ

翌朝 早目に出ることにして 歩き始めた前に 先輩の笑顔 「おはよう」 腕ひっぱり 車へ押し込まれた

「運転手しようと待ってた 送っていくよ」

「あのね~」

「本気なんだよ 用事終わるまで待っている」

頭がパニックを起こしていた

学校へはすぐ着き 「ありがと」そう言って降りようとした

どうやったか膝の上に押し倒され 強いキス一つ 「いっといで別嬪さん愛してるよ」

うっわ~~~

どうしよう どうしよう

そう うわずっている間に 用事は片付き 車へ戻ると
先輩は眠っていた

男なのに睫毛が長い

あの若い女の子とは どうなったんだろう

本当に本当に先輩は本気なのだろうか

あたしは一生この人と暮らしていけるだろうか

あ あたし英語できない 外国暮らしなんて 根本的に無理だわ

「見惚れるほど良い男だっけ」 先輩が薄目を開けた

で伸びしながら車の外へ出てくる

「車ってのは しんから眠れないな 肩凝る~」 ぐっと体を反らせた

「誰も頼んだわけじゃ」

「うん 時間を有効利用したかったからさ

メシでも食べよう」

明るく先輩が笑う

うじうじしてるのが ソンしてる気分になる

でもほうっておかれた十年が二日足らずで埋められた そんなふうに思われるのは いやだわ でも時間は少ない

ウルトラマンのカラータイマー 太陽電池みたいに音立て鳴っている気がするわ

先輩が連れて行ってくれたのは 橋本さんが勤務するホテル1階のくだけたレストラン

女性向けコースがお洒落で嬉しい

「おいしい?」 豪快に食べながら 笑顔で先輩が聞く

「はい」こっちも笑顔になる

と見知った顔が近付いて来た

「オジョーサン」 フランツ・シュタインだった

「あら このホテルに?」

「おおウンメイ かんじま~す」

調子の良いフランツに 先輩の表情が険しくなる

「今日は ワタシまだ仕事残ってますね また電話していいですか」

微妙に外れたアクセントで にこやかに手を振りながら 店を出ていく

「知り合いか?」

「こないだ列車で乗り合わせたの」

何か言いかけ思いとどまり水を飲むと 急に笑顔になり 「このあとの予定は?」と訊いてくる

「べつに」すぐには思い付かなかった

「じゃデートしよう」

「デート?」

「映画見てボウリングして 歩いて 何か食べて話す 順番はどうでもいいが」

ふと 先輩と歩くのは これが最後になるかもしれないと思った

デート十年めで初めての

「嬉しいわ」 そう答えていた


樋口有介著「探偵は今夜も憂鬱」創元推理文庫

2007-02-19 15:21:17 | 本と雑誌

樋口有介著「探偵は今夜も憂鬱」創元推理文庫
妻子と別居中の元刑事でフリーライターの柚木草平が出会う三つの事件

「雨の憂鬱」縁談がある義妹に昔の男友達が現われた どうなっているか調べてほしいと未亡人の女社長に依頼されるが―あろうことかその依頼人が殺された

美しいが冷酷な女の姿が浮かび上る

「風の憂鬱」失踪した女優探しを依頼され その過去を辿れば・・・ ま でも 振り回されても 誰かがシアワセになる為なら 騙されるのもいいかもしれない

「光の憂鬱」消えた夫から三年ぶりの手紙

調べてほしいと頼まれ動く柚木だが・・・

消えた男は生きているのか死んでいるのか

謎が解けた時 探偵は溜め息をつく

酒も女も好きではあるが

そこそこにモテ またふられもする38才の男

ハードな過去を持ち 大人の余裕で軽く生き 自分すら笑い飛ばせる

そんな探偵に 会いたくは 口説かれてみたくは ないですか


樋口有介著「初恋よ、さよならのキスをしよう」創元推理文庫

2007-02-19 00:27:27 | 本と雑誌

樋口有介著「初恋よ、さよならのキスをしよう」創元推理文庫
元刑事で現在はフリーライターの柚木は妻子と別居中 娘にせがまれ行ったスキー場で かつての同級生に再会する だが彼女は ひと月後殺された

彼女は娘に「自分に何かあれば 柚木に連絡しろ」そう言っていたという

そして柚木は かつての同級生の中に犯人がいる そう気付くのだった

歳月は人をどう変えるのだろう

学生時代 同じ場にいた人間達を


樋口有介著「彼女はたぶん魔法を使う」創元推理文庫

2007-02-18 20:42:18 | 本と雑誌

樋口有介著「彼女はたぶん魔法を使う」創元推理文庫
元刑事のフリーライター柚木草平は夫持ちの元上司冴子の紹介した仕事を受ける

轢き逃げされて死んだ妹を殺した犯人を見つけてほしいというもの だが調べれば調べるほど いやなモロモロも見えてきて

柚木の離れて暮らす強い妻 そして娘

なぜかモテてしまう柚木だが そのタイミングがかなり悪くもある

確か土曜ワイドか何かで 鹿賀丈史さんでドラマ化されています

作者は「ぼくと、ぼくらの夏」でサントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビューされたそうです


佐々木丸美著「崖の館」創元推理文庫

2007-02-18 12:08:52 | 本と雑誌

佐々木丸美著「崖の館」創元推理文庫
冬休み高校生の涼子は大富豪の未亡人であるおばが世間から離れ暮らす「崖の館」を いとこ達と共に訪れる

二年前 結婚が決まっていた美しく聡明な従姉妹の千波は 事故か誰かの作意によるものか 崖から落ちて死んだ

同じ従兄弟の婚約者 研一を置いて

そして再び不可解な事件が続き 研一は落ちるが一命をとりとめる 眠ってる間に部屋を移動させられた者も

そして消えた絵

一番年下である涼子は やがて死んだ千波の日記を見つけた

巧みに織り込まれた言葉 犯人でない人間の暗示

最後まで美しい物語だ

作家である若竹七海女史の誠実で丁寧な解説によれば この作品は三部作なのだそうだ

巻末に訳者紹介とあるが これは著者紹介の物語であろう

それによれば 作者は1949年北海道生まれ 1975年「雪の断章」にてデビュー 1977年「崖の館」発表

「忘れな草」「水に描かれた館」「花嫁人形」「夢館」「罪灯」など そして2005年12月に亡くなられたそうです

その作品を読む人がいなくなれば 本を出してくれる出版社が無くなれば 作家は その作品は完全に死にます

逆に読者が存在し 作品を出す会社がある限り 作家と作品は生き続けます

思い返せばこの作品が発表された時代は 横溝正史 高木彬光 エラリー・クィーン

モ―リス・ルブラン ウィリアム・アイリッシュ フレドリック・ブラウン 柴田錬三郎 エドガー・ライス・バロウズ あたりを読み漁っておりました

そう閉ざされた館での連続殺人は 少女の発送ながら幾つか書いた記憶があります 美女 恋 複雑怪奇な人間関係 事件野鍵を握る双子の美少女 こみいった話ばかりを書いていた頃

ただ懐かしく思い出します

ミステリ作家になりたかった少女は 前人未到のトリックなど思いつけず 見事挫折しました

年若くして発表された作品を読むと 無駄に過ごしてきてしまった―と 自分をかえりみ 何も残せていない事が諦めの気持ちと共に けれど悔しいのでした


谷原秋桜子著「龍の館の秘密」創元推理文庫

2007-02-18 01:10:12 | 本と雑誌

谷原秋桜子著「龍の館の秘密」創元推理文庫
行方不明になった父を捜す資金作りにバイトに精出す高校生 美波には 事件に巻き込まれる才能があるらしい 憎らしいけどハンサムで明晰な頭脳持つ隣りの洋館に住む青年

世が世ならばお姫様の かのこ

宝塚の男役ばりの美形で脚が早い直海

頼りになる友人たち

京都でも バイト先でも殺されかかる美波

次作では どんな危険な目に遭うのでしょうか

行方不明のお父さんを見つけだすことが いつかできるのでしょうか


「われてもすゑに・・・―早智子―2」

2007-02-17 15:03:15 | 自作の小説

と肩を叩かれた

同時にボストンと紙袋にも手が伸びてきた

「おかえり でもって ただいま」

先輩・・・大山隆史だった

「な・・・んで・・・」

「美智留さんから聞いた 今日帰って来るって 会いたかったんだ」

荷物を強引に取り返す「じゃ望みは叶ったわね さよなら!」

向きを変えるとついて来た

「話をつけたい」また荷物を取って 取り返せないように広い肩にかけてしまう

「話って何? そうそう美智留から聞いたわ 結婚決まりそうなのですってね」

「決まって欲しいとは 願ってるさ」

人くった笑顔

かっときて殴ってやりたくなる でもあたしには そんな権利ないのだ 逆に泣きそうになる

「・・・ですか お幸せに」涙見られないように下向いて呟く

急いでタクシーに乗り込んだ

「おい荷物!」

「あげるわ 好きにすれば」

動揺!駄目だわ 小娘みたいに体が震えている

あたしは まだ好きなのだろうか

それとも これは ただの未練

料金払って部屋へ 予期していなかったと言えば嘘になる 先輩の性格からして あのままで すまさないことも分かっていたような気がする

「荷物なんて いらないと言ったじゃない」

凭れていたドアから おもむろに身を起こし 一歩先輩がこちらに近付く

「荷物の持ち主も欲しいんだ」

「ざ・・・ざっけるんじゃないわよ あたしは非売品なんですからね こっこの すっとこどっこい おととい きやがれ」

なのに先輩は爆笑した 「変わらないな~その罵詈雑言の選択 相変わらず可愛い人だ」

こ・・・こたえない人だわ 何処まで厚かましいんだろう

「荷物を届けて戴いて有難うございました じゃ失礼します」 ドア開けて荷物を入れた 「話はすんでない」

「お土産配ったり用事があるんです 明日は学校だし」

「運転手タダでしてあげよう」

「じゃ準備するから車で待っていて下さい」 部屋には絶対入れない―って眼で睨む

降参降参・・・といったふうに両手を振り おどけた仕草で先輩は廊下を去っていく

まったく!あんな男相手にどうすればいいんだろう 幼馴染みで初恋の相手で・・・初めての男性(おとこ)

手早く買ってきたお土産を仕分けし 相手達の都合を確認する

先輩の車で行くことは―ついでに乗せてもらった だけでは すませられないかもしれない そういう鬱陶しい気分も含んでいた

先輩が何を考えているのかは分からない だから運転手がしたいなら してもらおう

「橋本栄三郎さんと珠洲香が結婚したのは知ってる? まずそこに行きたいの」

「店で会った 橋本って豪快な野郎だね~ 家なら知ってる 一度遊びに行った」

先輩は帰国してから随分忙しく時間を過ごしたようだ

「わ いらっしゃい」マタニティを着た珠洲香がいた 「お茶入れるの手伝うね」 ついて台所へ行く

先輩は栄三郎さんと居間で話していた

「赤ちゃんのこと 美智留に聞いたわ おめでとう どっちか分かってるの?」

「ん・・・たぶん女の子らしいの ありがと」 静かに珠洲香がほほ笑む で 表情を変え「急な旅行だったわね なんか大山さん焦ってたけど」

「焦って?」

「早智子には旅行に行くような恋人がいるのか―とかね 美智留も随分きかれたみたい」

余り立ち入らない性格の珠洲香は 何か気付いているにしても それ以上言わず あたしはそれが有り難かった 小一時間ほどして失礼をし 次は仁慶さんと美智留のいる寺へ

そこも先輩は勿論知っているのだった

「坊さんへの認識をあらたにしたよ 侮れないな~」

先輩は屈託がない「君は我が家の関西電力だ!って 口説いたんだってね」

「とても良い台詞 言葉だと思うわ ご家族の方みんなに受け入れられて 美智留は幸せだわ」

運転席で先輩は少し黙り込んだ

しばらくして 「仲良し三銃士も残りは一人か―」

「職業病かしら 女教師はオールド・ミスになりやすいもの」

「あるもんか そんな事」 先輩は少し怒ったようだった

何考えているのだか わかりゃしない 気分屋なんだから

珠洲香と同じよに 美智留もお寺の駐車場まで 迎えに出てくれていた

「ショーファーつきだ~ 一人旅行なんてズルイんだから」

部屋へ入ると仁慶さんが鉢巻きして 胡麻をすっていた 「や!今うまい団子ができるからね」

「里芋潰して胡麻まぶして揚げた団子 美味しいのよ

食べてってね」 さっと紙袋受けとり 「お土産お土産なっにかな~」と美智留がガサゴソ開けていく

「あ それはね こちらのおかあさまへ 香り玉なの 美智留のは青い箱よ これがお菓子でね

そっち仁慶さんにキーホルダー 形が面白いでしょ? で仁慶さんのお父様には扇子にしたわ どうかしら 気に入ってもらえるといいのだけど」

「うわ~お金使わしたね ごめんね早智子」 つついと腕ひっぱって他の部屋へ

「逃げたんだって早智子? スーパーの前から自転車で 先輩てば むきになってね 早智子いないものだから 面白かったわよ

それだけ気になるんなら こんなにほっとくんじゃないわよ ねぇ」 美智留は やんちゃな顔で笑った

「おかしいよねぇ」

あっけらかんと笑い飛ばしてくれる美智留

友人それぞれの持ち味で気遣ってくれているのだった

団子ができると仁慶さんのご両親も加わり 思いがけず賑やかな時間を過ごした


チキンライスもどき

2007-02-17 12:52:11 | 食・レシピ

チキンライスもどき
チキンライスもどき
チキンライスもどき
チキンライスもどき
本日のお昼です

マカロニ入りポテトサラダ

素麺のお味噌汁

ハムと玉葱を炒め塩胡椒しスープで少し煮てから グリンピース ケチャップ 隠し味に 砂糖と醤油少々 ご飯を入れて ささっと混ぜて出来上がり

高齢の両親が食べやすいもの そうした調理方法を考えて作っていますが まだまだ未熟です


伯方雪日著「誰もわたしを倒せない」創元推理文庫

2007-02-17 09:12:05 | 本と雑誌

伯方雪日著「誰もわたしを倒せない」創元推理文庫
連作短編集ではあるが ひとまとめの長編でもある

犯罪者の記録と読んでも

誰も顔を知らない男 だがその体つきは格闘技ファンならば知っていた「覆面」

最強の男とは―八百長 ガチンコ 負けたくない男の気持ちは揺れて「偽りの最強」

「ロープ」あれれと思って読んでいると 作者の罠にはまっています 小説ならではのトリック 詐術が使われております

「誰もわたしを倒せない」最強と言われた男だが それには秘密が―

「エピローグ」ある男への葬送曲 挽歌と言ってもいいかもしれません

今後 化ける作家となる可能性は大です 次作を楽しみに待ちたいと思います


残り物カレーコロッケ

2007-02-16 17:48:17 | 食・レシピ

残り物カレーコロッケ
残り物カレーコロッケ
残り物カレーコロッケ
残り物カレーコロッケ
残り物カレーコロッケ
今回はじゃがいも10個 皮付きのまま茹でました ジャガ芋が茹で上がる少し前に卵も3個同じ鍋に入れます 混ぜた玉葱の小さく切ったのと鶏ミンチ カレー粉さん炒めます 皮むいて潰したじゃがいも 茹で卵スライサー利用で小さく切った卵を混ぜ 炒めた鶏ミンチと玉葱
それに残り物カレー入れ混ぜます 好みの大きさにまとめたら ちょい休憩 冷えたほうが作りやすいです

あとは小麦粉 卵 パン粉つけて揚げるだけ

かなり数できるので半分は冷凍します

ここまできたら 美味しくできてくれるのを祈るだけ(笑)

では せこい計算 ひと袋5個100円のジャガ芋2袋 玉葱98円 卵1パック200円 6個使うから
20円×6=120円 プラス残り物のカレー

パン粉 小麦粉 適量 ひと袋150円としても ふた袋で300円ですね

この分量で大きさにもよりますが 36~40のコロッケが作れます

工夫して我が家にしかない味 また あれ食べたい

そう言ってもらえる料理 作っていきたいです

まだまだ誰にも負けない! そう断言できる得意料理が無いので 日々勉強です


「われてもすゑに・・・―早智子―1」

2007-02-16 14:20:31 | 自作の小説

{君は我が家の関西電力だ} 聞いた時は爆笑してしまったけど 時間が経つにつれ 言われた美智留が羨ましくなってきた

あたしには そんな事を言ってくれる男はいないのだ

あたしは捨てられた女なのだし

珠洲香絡みで知り合った仁慶さんと美智留は 両想いになったけれど

あたしと高倉さんは そういうふうになれない 気付いてしまった

高倉さんは凄くいい人なんだけど

あたしは自分を捨てた男を忘れられないのだ しかも行き掛けの駄賃みたいに 抱くだけ抱いて去っていった男なのに

恥ずかしくて親友にも言えやしない

あれから随分 恋に臆病になってしまった

人を好きになるのが怖いのだ

全部全部あの男のせいだわ

あたしは二十歳だった

だから甘い言葉に騙されたのよ 何が「早智子を離したくない」よ! あれがテだったんだわ ずっとずっと好きだったのに 馬鹿たれ

でも あれからアメリカへ行ったきり

きっと向こうで好き三昧しているんだわ

だから もう顔を見ることも無いでしょう

いい加減 引き摺るのやめなきゃ やめなければ

な・の・に―うげ・・・と思うことが起きた 「小松先生 さようなら」

「さよなら 春日さん 気をつけて帰るのよ」 「寄り道はなし はい分かっています」素直な言葉だが ちらりと舌覗かせるお茶目さ

明るい風紀委員は軽く手をあげ 校門を出て行く

やっと終業式 何ごともなく学期が終了すると ほっとする

以前なら こんな日は 友人達と会えたのだが とびきり仲の良い二人はそれぞれに忙しく誘い出せない

寿司でも買って帰り家で飲もう 馴染みの店へ行く気分でなく 駅前の小○寿司の出来合いを買った 侘しいものである DVDを数本借りてきて テーブルに置く

先にシャワーを浴び 楽な寝間着に着替え DVDつけてグラスにビールを注ぐ 箸を使わず手で寿司を摘む 生徒には見せられない行儀の悪さだ

友人達に置いていかれたような寂しさがある 職業柄 出かけて行き男をひっかけるわけにもいかない

体の中心から波のように淋しさがこみあげる 人恋しいのだ

誰かに抱き締められたい ただ一人の一番になりたい

神様 ハッピーエンドの恋物語をあたしに下さい

でも きっとその夜まともで堅気な神様は休憩中だったに違いない

明け方まで映画見続けて 起きたのは午後二時 すっびん隠しの眼鏡かけて 食べ物買い込みに出かけた

缶ビールのパック リースナブルなワイン オレンジ リンゴ 卵 レンジで温めるだけのたべもん 出来合いのお惣菜

あれやこれやで山盛りのカゴに カート持つんだったと後悔しつつ― なんとか自転車に積み込む

乗ろうとして・・・妙な気配に振返る

腕に女性ぶらさげた男が こちらを見ているのだった

ぞっとした

最悪の! 男が連れている女性はひらひらワンピースにピンクのコート 化粧もバッチリ おまけに若い

気付かれたかどうか 必死に自転車漕いで逃げたわ

ああ 心臓に悪い

帰国したんだわ

荷物引き摺るように部屋に引き込み ドアを閉めた

荷物を置いて床にへたりこむ

蓋した記憶が溢れだす 先輩の送別会の夜 酔ってしまった あたし タクシーで送られる途中気持ちが悪くなり 何故かラブホテル

めまいがして動けず

先輩は何か言っていた トイレに行きたくて目がさめ 寒気がして風呂に湯をためた

さっと体を洗い浴槽につかったあたしは 迂闊にも 部屋からバスルームが見えるつくりなんて気付かなかった 眠っていると思いこんでた先輩は あたしを見ていたのだった

バスタオル持って あたしが浴室出るのを待っていた

あたしは 嫌と言えず ただ その腕の中に入っていった

―少なくとも初めての君は僕のものだ―

ああ・・・

何の約束もなかった

あたしは ずっと先輩が好きだったのだ

ばかみたいに

先輩が旅立つ日 見送りには行けなかった 空港の外までは行ったけど 顔を会わせる自信がなかった

それっきり

小松早智子は恋人一人作る甲斐性もないまま三十の大台に乗ったのだった

予定の無い一人暮らしの気楽さで あたしは数日旅に出た

また会ってしまうのが怖かったのだ 何しろ先輩の実家の寿司屋は あたしの住むマンションから徒歩ゆっくり歩いて10分の距離

レディースプランでエステしてもらって ご馳走食べて元気が出たわ

と美智留から携帯に電話があった

「どこって」

「うん学期終わったし ちょっとリフレッシュ 会議あるからまたすぐ帰る」

「ふうん あの先輩が帰国したわよ なんでも縁談の為なんだって」

「へ・・・え」 じゃきっと あのぶらさがってた彼女がそうなんだ

電話してきたのは珠洲香の妊娠を教えてくれたのだった

「隠してたもんよね~そろそろ5ヶ月ですって」 珠洲香はすらりとした長身だった

「どっちだろ 男の子かな 女の子かしら」 「かわいいだろ~な~」

なんかね~ 美智留と話しながら涙が出てくるのだった

「早智子 大丈夫?」泣いてるのに気付いて 気遣うような美智留の声

「ん・・・平気 少し寂しかったものだから美智留と話せて嬉しかった 電話くれてありがと」 日は続いていく 落ち込んでばかりもいられないのだ

帰りの汽車の中 斜め前に座ったドイツ人男性のお世辞は 気持ちを明るいものにしてくれた

「オジョウサン」カタコトの日本語

お世辞でも お嬢さん かなり嬉しい

彼は名刺をくれた

塾の講師をしているとか 日本のじゃがいもやソーセージは美味しいが 国のビールが恋しくなると言う

フランツ・シュタイン栗色の髪 茶色の眼

彼はなつっこい瞳をしていた

弾んだ気分になって荷物を転がし 駅を出る タクシー乗り場に向かって歩き始める