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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

葉室麟著「雨と詩人と落花と」 (徳間文庫)

2020-01-31 14:47:23 | 本と雑誌



本の裏表紙の言葉から
ー時は大塩平八郎の決起など各地が騒然としている激動期
天領豊後日田の広瀬旭荘(ひろせ きょくそう)は私塾・威宜園の塾主として二度目の妻・松子を迎える
剛直で激情にかられ暴力をふるうこともある旭荘だが 本質は心優しき詩人である
松子は夫を理解し支え続けた
しかし江戸で彼女は病魔に倒れる
儒者として漢詩人として夫としてどう生きるべきか
動乱期に生きた詩人の魂と格調高い夫婦愛を描く!-


解説は文芸ジャーナリストの内藤麻里子さん
その中で著者の人柄にも触れておられます


旭荘の最初の妻あさは 夫の暴力に耐えきれず出ていきました

新しい妻の松子を迎える日となっても こんな自分がまた妻を持っていいのかー
そう旭荘は考えています
激しやすく手も足も出る夫ー
しかしまだ若い松子は 夫という人の繊細さ いきどころない思いに気付きます

もう なんてできた女性だと思うのですが
普通なら泣いて逃げて帰ります 出ていきます
殴られて蹴られて
理不尽な!我慢なんてできるものですか


手を上げて―暴力をふるった自分に傷つき苦しむ旭荘
その苦しみをどうにかしてあげたい妻


もっと学のある女性なら夫を理解し助けになれるのではー

自分を支え続けてくれた妻が一人息子を連れて 江戸に出てきてくれてー
旭荘は喜びます

夫の傍にいたいと九州から出てきてくれた妻は 松子は病気になりー

妻が此の世から居なくなったらー
旭荘の献身的な看病が始まります

学者であり詩人であった旭荘

旭荘の妻は 松子でなければならなかった

そう何故なら彼は 初めて松子に出会った時 桃の精のようだと思い詩を吟じていました

桃花多き処 是(これ)君が家
晩来何者ぞ門を叩き至るは
雨と詩人と落花なり


この無器用な男は そのことを妻に話してやれば良かったのに
「あの時 わたしたちは出会ったのだ」

旭荘が言葉をかけた時 松子の命の火は消えていた



著者 葉室麟氏は北九州市小倉区生まれ

実在の人物を扱った作品も多いです
資料を読み込み想像の翼を広げ 物語を編み上げていく
どれほど大変な作業でしょう

解説によれば この本は著者の死後 世に出た一冊だそうです