勤めていた会社が倒産した
何の前触れもなく
給料日前日に
貼り紙があって会社には入れなかった
ー当社は倒産致しました
ですから給料は払えません
悪しからずー
社長の「あっかんべ~」が見えるような文面だった
抗議するとか訴訟に持ち込むとか これから頑張って活動しそうな元気な集まりも
しかし何をするにもお金がいる
生きて生活していかないといけない
仕事を見つけないと
家賃だって払えなくなる
大問題だ
まったく もう なんてこった
母親が暮らす実家は隣の県
実家に帰れば家賃はいらない
このトシで母親とまた暮らすのもなあ
それにあの人はちょっと いやかなり変わった人だし
ハローワークを信じよう
信じて進もう
そう思ってひと晩寝て・・・
郵便受けに求人のチラシが入っていた
古民家管理人求む・・・・・
家賃の心配なく住む家が確保できて そこそこの給料ももらえる
駄目モトで行ってみるか
いよいよあかんかったら 親孝行のつもりで実家に帰ろう
まだ貯金が多少あるうちに
聞いた事すらない場所を車のナビ頼りに目指した
大きな橋 小さな橋 ぐるぐる回る山道
行けども行けどもたどり着けず かなり不安になった頃
ナビが喋った
「目的地周辺です 案内を終了します」
勝手に終了するなよ!と思ったのだが ナビは沈黙
道の端に木切れがあり 何か書いてある
ーこの先 段々村ー
ー戻り道 熊 鹿 猪 猿 出没注意ー
遅ればせながら来たことを後悔し始めた
ここまで来たんだし 一応 行くかーと覚悟を決めて進むと
人間がいた!
住人は居るらしい
「おお 若者だ」
「息子の方が来たかいな」
「大丈夫かいね~」
「血がモノ言うじゃろ」
「ババ様の所へ連れていきゃあわかるわな」
なんか わらわら人が出てくる
のっそり歩いてきた 人としていい具合に枯れて見える少し痩せた男の人が僕に声をかけてきた
「古民家管理人の仕事の件でいらしたお方かな」
「はい 棺野守人(ひつぎの もりと)と申します」
「村に入る新しい人間は馬場の婆様に会ってもらうことになっている かまわんかな」
「はあ 別に」
するとその男はついてくるように言ってずんずん村の奥へと歩き始めた
車をロックして急いでついていくと一軒の家の中へ
梁がむき出しの高い天井 カタカナのコの字の廊下へと案内されて
高くなった畳に置かれた和風の椅子の中に婆様はいた
僕を一目見て その婆様は「よかろうよ」と一言
僕を案内した男に「唐のじ 気ィつけてみやれ」
「はい」とのみ唐のじと呼ばれた男は返事した
あとで その男の名が 馬場唐十郎と言うのだと知った
段々村には馬場姓が多く それで下の名前で呼ばれるらしい
でも僕は「馬場さん」と呼ぶようになった
管理を任された古民家はとても なんていうか馬鹿でかい家だった
蔵 納屋
別棟なのと ところどころ家の中にも続きの蔵もあり
大広間が・・・とんでもなく広かった
古民家と言いながら水回りなどは手を入れてあり 寝起き用の部屋にはベッドやテレビもある
インターネットの設備も意外なことに整っていた
買物などは村のよろず屋さんで大抵の品は揃うし 足りないものについてはネットで注文となる
「空き家のままにしてくと アライグマとか鼠とか よからぬものが住み着くのでー」と馬場さんは管理人が必要な理由を言った
別な理由があるのではーと思ったが
古民家の管理だけで退屈なら 村のよろず屋が夜に働いてくれる人間を捜していると言う
「村のよろず屋」は店名で店主はコンビニを目指している・・・らしい
僕は一度暮らしていた町へ戻り住んでいた部屋を解約し 引っ越し荷物をまとめた
住所が変わることを母親に知らせると 段々村の名前を聞いた母親は一瞬絶句し 「ま・・・馴染めたらいいわねえ」
と何故か笑い飛ばしたのだった
妙な母親の態度に嫌な予感もしないではなかったが
もう引っ越してしまった
まさか化け物などは出やしまい
何の前触れもなく
給料日前日に
貼り紙があって会社には入れなかった
ー当社は倒産致しました
ですから給料は払えません
悪しからずー
社長の「あっかんべ~」が見えるような文面だった
抗議するとか訴訟に持ち込むとか これから頑張って活動しそうな元気な集まりも
しかし何をするにもお金がいる
生きて生活していかないといけない
仕事を見つけないと
家賃だって払えなくなる
大問題だ
まったく もう なんてこった
母親が暮らす実家は隣の県
実家に帰れば家賃はいらない
このトシで母親とまた暮らすのもなあ
それにあの人はちょっと いやかなり変わった人だし
ハローワークを信じよう
信じて進もう
そう思ってひと晩寝て・・・
郵便受けに求人のチラシが入っていた
古民家管理人求む・・・・・
家賃の心配なく住む家が確保できて そこそこの給料ももらえる
駄目モトで行ってみるか
いよいよあかんかったら 親孝行のつもりで実家に帰ろう
まだ貯金が多少あるうちに
聞いた事すらない場所を車のナビ頼りに目指した
大きな橋 小さな橋 ぐるぐる回る山道
行けども行けどもたどり着けず かなり不安になった頃
ナビが喋った
「目的地周辺です 案内を終了します」
勝手に終了するなよ!と思ったのだが ナビは沈黙
道の端に木切れがあり 何か書いてある
ーこの先 段々村ー
ー戻り道 熊 鹿 猪 猿 出没注意ー
遅ればせながら来たことを後悔し始めた
ここまで来たんだし 一応 行くかーと覚悟を決めて進むと
人間がいた!
住人は居るらしい
「おお 若者だ」
「息子の方が来たかいな」
「大丈夫かいね~」
「血がモノ言うじゃろ」
「ババ様の所へ連れていきゃあわかるわな」
なんか わらわら人が出てくる
のっそり歩いてきた 人としていい具合に枯れて見える少し痩せた男の人が僕に声をかけてきた
「古民家管理人の仕事の件でいらしたお方かな」
「はい 棺野守人(ひつぎの もりと)と申します」
「村に入る新しい人間は馬場の婆様に会ってもらうことになっている かまわんかな」
「はあ 別に」
するとその男はついてくるように言ってずんずん村の奥へと歩き始めた
車をロックして急いでついていくと一軒の家の中へ
梁がむき出しの高い天井 カタカナのコの字の廊下へと案内されて
高くなった畳に置かれた和風の椅子の中に婆様はいた
僕を一目見て その婆様は「よかろうよ」と一言
僕を案内した男に「唐のじ 気ィつけてみやれ」
「はい」とのみ唐のじと呼ばれた男は返事した
あとで その男の名が 馬場唐十郎と言うのだと知った
段々村には馬場姓が多く それで下の名前で呼ばれるらしい
でも僕は「馬場さん」と呼ぶようになった
管理を任された古民家はとても なんていうか馬鹿でかい家だった
蔵 納屋
別棟なのと ところどころ家の中にも続きの蔵もあり
大広間が・・・とんでもなく広かった
古民家と言いながら水回りなどは手を入れてあり 寝起き用の部屋にはベッドやテレビもある
インターネットの設備も意外なことに整っていた
買物などは村のよろず屋さんで大抵の品は揃うし 足りないものについてはネットで注文となる
「空き家のままにしてくと アライグマとか鼠とか よからぬものが住み着くのでー」と馬場さんは管理人が必要な理由を言った
別な理由があるのではーと思ったが
古民家の管理だけで退屈なら 村のよろず屋が夜に働いてくれる人間を捜していると言う
「村のよろず屋」は店名で店主はコンビニを目指している・・・らしい
僕は一度暮らしていた町へ戻り住んでいた部屋を解約し 引っ越し荷物をまとめた
住所が変わることを母親に知らせると 段々村の名前を聞いた母親は一瞬絶句し 「ま・・・馴染めたらいいわねえ」
と何故か笑い飛ばしたのだった
妙な母親の態度に嫌な予感もしないではなかったが
もう引っ越してしまった
まさか化け物などは出やしまい