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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「だんだん集まる」-1-

2018-08-20 20:29:19 | 自作の小説
勤めていた会社が倒産した
何の前触れもなく
給料日前日に

貼り紙があって会社には入れなかった

ー当社は倒産致しました
ですから給料は払えません
悪しからずー

社長の「あっかんべ~」が見えるような文面だった

抗議するとか訴訟に持ち込むとか これから頑張って活動しそうな元気な集まりも

しかし何をするにもお金がいる
生きて生活していかないといけない
仕事を見つけないと

家賃だって払えなくなる
大問題だ

まったく もう なんてこった

母親が暮らす実家は隣の県

実家に帰れば家賃はいらない

このトシで母親とまた暮らすのもなあ

それにあの人はちょっと いやかなり変わった人だし

ハローワークを信じよう
信じて進もう


そう思ってひと晩寝て・・・

郵便受けに求人のチラシが入っていた

古民家管理人求む・・・・・
家賃の心配なく住む家が確保できて そこそこの給料ももらえる

駄目モトで行ってみるか
いよいよあかんかったら 親孝行のつもりで実家に帰ろう

まだ貯金が多少あるうちに


聞いた事すらない場所を車のナビ頼りに目指した
大きな橋 小さな橋 ぐるぐる回る山道

行けども行けどもたどり着けず かなり不安になった頃
ナビが喋った
「目的地周辺です 案内を終了します」

勝手に終了するなよ!と思ったのだが ナビは沈黙

道の端に木切れがあり 何か書いてある

ーこの先 段々村ー

ー戻り道 熊 鹿 猪 猿 出没注意ー


遅ればせながら来たことを後悔し始めた

ここまで来たんだし 一応 行くかーと覚悟を決めて進むと
人間がいた!

住人は居るらしい

「おお 若者だ」

「息子の方が来たかいな」

「大丈夫かいね~」

「血がモノ言うじゃろ」

「ババ様の所へ連れていきゃあわかるわな」

なんか わらわら人が出てくる

のっそり歩いてきた 人としていい具合に枯れて見える少し痩せた男の人が僕に声をかけてきた

「古民家管理人の仕事の件でいらしたお方かな」

「はい 棺野守人(ひつぎの もりと)と申します」

「村に入る新しい人間は馬場の婆様に会ってもらうことになっている かまわんかな」

「はあ 別に」

するとその男はついてくるように言ってずんずん村の奥へと歩き始めた


車をロックして急いでついていくと一軒の家の中へ


梁がむき出しの高い天井 カタカナのコの字の廊下へと案内されて
高くなった畳に置かれた和風の椅子の中に婆様はいた

僕を一目見て その婆様は「よかろうよ」と一言

僕を案内した男に「唐のじ 気ィつけてみやれ」

「はい」とのみ唐のじと呼ばれた男は返事した


あとで その男の名が 馬場唐十郎と言うのだと知った

段々村には馬場姓が多く それで下の名前で呼ばれるらしい

でも僕は「馬場さん」と呼ぶようになった

管理を任された古民家はとても なんていうか馬鹿でかい家だった

蔵 納屋 

別棟なのと ところどころ家の中にも続きの蔵もあり
大広間が・・・とんでもなく広かった

古民家と言いながら水回りなどは手を入れてあり 寝起き用の部屋にはベッドやテレビもある
インターネットの設備も意外なことに整っていた


買物などは村のよろず屋さんで大抵の品は揃うし 足りないものについてはネットで注文となる

「空き家のままにしてくと アライグマとか鼠とか よからぬものが住み着くのでー」と馬場さんは管理人が必要な理由を言った


別な理由があるのではーと思ったが
古民家の管理だけで退屈なら 村のよろず屋が夜に働いてくれる人間を捜していると言う

「村のよろず屋」は店名で店主はコンビニを目指している・・・らしい

僕は一度暮らしていた町へ戻り住んでいた部屋を解約し 引っ越し荷物をまとめた

住所が変わることを母親に知らせると 段々村の名前を聞いた母親は一瞬絶句し 「ま・・・馴染めたらいいわねえ」
と何故か笑い飛ばしたのだった

妙な母親の態度に嫌な予感もしないではなかったが
もう引っ越してしまった


まさか化け物などは出やしまい



長岡弘樹著「道具箱はささやく」 (祥伝社)

2018-08-20 15:10:18 | 本と雑誌
道具箱はささやく
長岡 弘樹
祥伝社



「声探偵」
尾行していた男が急に振り向き・・・尾行と気付いた男は逃亡
ある会場の中に潜り込まれてしまった

この後の幾つかの短編にも登場する南谷刑事が逃げた男を見つける為に相棒の北山が考えた方法とはー
相手に花を持たせてやろうという心意気も嬉しい



「リバーシブルな秋休み」
幼い子供は両親に別れてほしくない
お父さんとお母さんと一緒に生活していたいのにー
仕事をやめたくない母親
彼女は少し意地を張っていたかもしれない
けれどどちらが子供のことを考えていたかに 別れて暮らす夫が子供にしてあげていたことで気付いた




「苦い厨房」
作った料理で勝つ為にせこい事を仕掛けたけれどー
負けたくないその気持ち
でも 押し入った犯人を捕まえる為に相手がしたことでー




「風水の紅」
幸運の時間を化粧でつくるポイントメイク

うまくいってない姑が怪我をした
最後には大やけど

そこを小姑から言われて

姑が用意していた水・・・その水の意味に思い当たる
もしや姑は本当はー



「ヴィリプラカの微笑」
繰り返される夫婦喧嘩
家事をしないと責める夫

ある像を使って互いに言いたいことは交互に言おうと決めて

階段から落ちて死んだ夫

夫が妻に用意した履物にはある仕掛けが

夫婦はどちらも互いに殺意を抱いていた・・・・・



「仮面の視線」
人を殺した男は疑心暗鬼になっていたのか
身の安全の為に自分の姿を見たと思った男は更なる殺人を

だがー相手は見ていなかったー
不要な殺人であったかもしれない



「戦争ごっこ」
思春期の言動に見えて よく周囲のことが見えて 実に考えた行動をしていた息子

痴呆症から家からいなくなり行方が分からない祖父を見つける為の わざとのー



「曇った観覧車」

病気で入院中の友人への気遣いは 男が自分への好意を告白したことで無駄になった
むしろ害になり友人の命を縮めてしまった

だから彼女はー



「不義の旋律」
妻を殺された男が密会するようになったのは夫持ちの女

女はロケットに男との写真を入れていて

その中を女の夫は見て

全てに思い至った男は不倫を止めるー女と別れる選択を



「意中の交差点」
娘に恋人か思う相手がいないか調査してほしい
その仕事を引き受けた探偵事務所の女性はこの仕事が終われば やめて帰郷し結婚のことを考えようと思っていたけれどー

調査対象の娘のしていた偽物のショパールの時計

別な人間は そこから娘の思う相手に本気だと気付く



「色褪せたムンテラ」
息子の入院している病院にいた南谷刑事は事件に遭遇してしまう

心配して息子の病室へ向かうと息子がいない

息子を探す南谷は意外な人物と遭遇

その人物こそはー




「遠くて近い森」
遠縁の男と暮らしていた少年
彼は遠縁の男が経営する宿を手伝っている
そこに現れた女性客の様子は・・・・

姿を消す少年が世話をしていたペット

遠縁の男は少年との別れにそなえた行動をとっていた




「虚飾の園」
ストーカー被害に悩んでいる若い芸能人
マネージャーがストーカーを捕まえて動けなくしてくれたがー

マネージャーの娘もデビューを控えていた

親は娘の為に どんなことでもしてしまうのだ




「レコーディング・ダイエット」
増えた体重を気にして食べたものを記録していくばしかのダイエットに成功した医師
彼は患者にもそれを勧めた
話のとっかかりとして


医師を襲う続く事故
実はそれはー
ここでも南谷刑事さん登場場面あり



「父の川」
妹は可愛い
姉は妹と似ていない

離婚を決めた両親
きっとどちらも妹をほしがるにちがいないと思う姉

一緒に行った川遊びで様子がおかしかった父は川に流されー

父の気持ちを考えた姉娘はー



「ある冬のジョーク」
完璧な犯行だと思っていた男だったが
男の反応から南谷刑事は気付いた

笑い上戸の男は何故ジョークに笑わないか





「嫉妬のストラテジー」
自殺を図った恋人
もう自殺しないようにと医師が仕掛けたのは



「狩人の日曜日」
南谷刑事の後輩刑事は 犯行予告の電話をかけてきた相手のためらいに
自分の知る人間が犯人ではないかと考え始め


今の状態の自分の声を知っている人間に思い当たる

犯人に犯行を起こさせない為に ちょっとしたことを思いついた

その思い付きは成功し犠牲者は出なかった





様々な道具
ニヤリとしたり おっそろしいなと思ったり


冒頭の「声探偵」の時に結婚間近で課長からの指示を受けていた南谷

その後の作品には高熱で入院する息子がいて


最後の作品では刑事課長になっています


短編集ですが 時間は流れています