 | 果鋭 |
黒川 博行 |
幻冬舎 |
「悪果」「繚乱」に続く 元刑事の堀内と伊達シリーズ第三作
本の帯から
{右も左も腐れか狸や。
元刑事の名コンビがマトにかけたのはパチンコ業界。
出玉の遠隔操作、極道顔負けの集金力、警察との癒着・・・・。
我欲にまみれた20兆円産業の闇を突く。
デビュー35周年、
直木賞作家、渾身の最高傑作!}
{堀内信也、40歳。
元々は大阪府警の刑事だが、恐喝が監察にばれて依願退職。
不動産業界に拾われるも、暴力団と揉めて腹と尻を刺され、生死の境をさまよった。
左下肢の障害が残り、歩行に杖が欠かせなくなる。
シノギはなくなり、女にも逃げられる・・・・・。
救ったのは府警時代の相棒、伊達誠一。
伊達は脅迫を受けたパチンコホールのオーナーを助けるため、堀内に協力を求めてきた。
パチンコ業界ー。
そこには暴力団、警察も入り乱れ、私腹を肥やそうとする輩がうごめいていた。
堀内は己の再生も賭け、伊達とともに危険に身をさらしながら切り込んでいく。
ワルでタグなふたりがクズどもを蹴散らす痛快悪漢小説!}
三途の川を渡りかけ こちらに戻ってきた堀内だが足には障害が残りリハビリするほどの気はない
そこへ刑事時代に相棒だった伊達が一緒にやろうと連絡してきた
刑事ではなくなっても 不明なところをつめていくやりかたは互いに刑事時代と変わらない
二人に協力してくれる気のいい男達も
よく食事する場面が出てまいります
読んでいても胃もたれしてくるほども・・・・よく食べています
「疫病神」シリーズと重なる登場人物も
己の保身の為に人を殺し埋めた男
警察に居た時から悪く今はパチンコ業界に深く入り込んでいる男
悪い奴は嘘をつく
またも刺される堀内
物語後半では伊達も刺されます
しかし彼等は凝りていないように見えます
そんな彼等の登場する作品について 以前に書いたものです↓
「悪果」
破滅までは描かれていないが 暗い将来(さき)―金の切れ目は縁の切れ目―を予感させる 終わり方だ
太く短く
主人公は刑事
とは言っても理想に燃える正義の味方ではない
とても危ない世渡りをしている
マル暴担当
悪徳刑事
刑事としての仕事はする
だが余録に目を瞑ったりはしない
むしろ積極的に 金になる話を捜している
女もいる
彼は妻とは 同居している他人 夫婦とは もはや言えない
彼は何がしたかったのだろう
破滅と判りつつ 気付いていながら おちていく自分を 笑うのだろうか
小説世界にひきこまれ 読了後は ぐったりするような 疲労感
筋追って冷静に書くには 数日 まず自分の中で熟成させないと無理な気がします
今はただ読み終わった
読んだ
という状態
数日おいて また読み返したいと思います
なお 作者は週刊 新潮 にて連載中
こちらはシリーズ物なのですが 展開がなかなかハードです
主人公の目論見も 彼が疫病神と呼ぶ人間の見通し 計画も どんどん ずれていきます
こちらのが 少し軽いかもしれない
どんどん悲惨な状況になっていくのに笑えますから
表紙の葡萄の絵は とても落ち着いたものなのに 題字 悪果が でんとあるせいで 食べちゃいけないモノに見えてきます
この葡萄全体が 悪果なのか 離れてひと粒転がったのが 主人公なのか
転がっていく事はたやすい
転がり続けるのも ラクではない
悪果にも心がある
ひと粒 ひと粒に主張が あるように感じます
最低限 守りたかった男の仁義
読み手の性別 年齢でも 感想は異なるでしょう
ただ もし あなたが 初めて 黒川博行を読もうとするなら
創元推理文庫にある一連の作品から 読み進んできてほしい気がします
わくわくしながら書店を捜す気持ち
古い作品を古本屋さんで見つけた時の やった~と いうような気持ち
読みたい本を書店へ捜しに行く時から 読書の楽しみは 始まっている気がします
「繚乱」
一体 あんたらどんだけムチャすんねん!ーな二人 再び見参
大阪から離れ東京で杏子は店を出した その資金は出したものの定職には まだ就いていない堀内は元警察官 コワモテの刑事だった
女絡みのアクシデントで警察を辞めた元相棒の伊達が 大阪から訪ねてくる
伊達は競売専門の調査員をしていた
同じ仕事に就く堀内
関わった物件 調査対象は危ない匂いがした
途中で警察を辞めなくてはいけなかった男達
欲にまみれ 溺れ 足を引っ張り合う人間達
騙し合い
大金を得るも堀内の不吉な予感は当たる
刺されたのだ
表紙の装画は 奥様の黒川雅子さんの作品です 素晴らしい作品を描かれる日本画家さんです
装幀は 多田和博さん