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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

中山七里著「ふたたび嗤う淑女」 〈実業之日本社文庫〉

2024-09-13 08:15:53 | 本と雑誌

 

 

 

 

 

最近ドラマ化された「嗤う淑女」

シリーズは「ふたたび嗤う淑女」「嗤う淑女 二人」まで刊行されております

 

「嗤う淑女」で死んだかと思われていた美智留

実は・・・・・

野々宮恭子と名乗る女性により人生が狂い破滅を迎えていく人々

この野々宮恭子は何者で何を目的に動いているのか

 

藤沢優美

唆され・・・思い込み 信じ込んでしまい 騙される

結果の破滅

そして彼女は 死を選んだ

 

伊能典膳

宗教団体にて信者獲得についての方策を考えていた男

そこに悪魔の囁きが・・・

聞いてはいけない助言に操られ

結果 信者たちからは裏切り者と思われて 悲惨な結末を迎える

 

 

倉橋兵衛

先代の政治家を支えてきた男は 後継者である先代の息子に物足りなさを覚えていた

操られ乗せられて 自分が政治家になろうとするも

資金集めで足元を救われる

莫大な負債を背負い 咎めた妻はこれまでの我慢も爆発してー

 

咲田彩夏

政治家の秘書として縁の下の力持ちとして仕え支えてきた忠実な女性

しかも夜のパートナーとして 生けるダッチワイフともなり男の欲望も処理させられてきた

 

「女」としての願い 揺れる心につけこまれて・・・・・

彼女は社会的な地位も失ってしまう

嵌められたのだ

 

 

柳井耕一郎

二代目政治家

学生時代 とんでもないことをしでかしており

だが当人に罪の意識はない

被害に遭わせた 己が乱暴した数多くの女性のことたちも忘れ果てている

柳井の毒牙にかかり娘は自殺 妻も娘の後を追うように亡くなった男がいる

彼は恭子の協力を得て 柳井の命を狙っていた

ところが同じ協力者のもう一人の女性の言葉に 恭子も生かしていてはいけない存在と信じてー

 

野々宮恭子の名前で生き延びていた美智留

彼女は野々宮恭子の名前の陰に隠れ 人を操る

そして 自分の身近に置いた人間すら いいように利用したあとは消していく

 

 

 

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誉田哲也著「ケモノの城」〈双葉文庫〉

2024-09-04 12:20:55 | 本と雑誌

 

 

保護を求めてきた少女にはまるで拷問されたような傷が全身にあった

剝がされた爪 火傷・・・・・

少女はどういう目にあってきたのか

少女と同じ家に暮らしていた女性の話も要領を得ない

警察側の我慢強い調べで どうにか浮かび上がってきたのは

 

平行して語られる若い男女の暮し

しかしそれは女性の父親が同居するようになってから・・・不穏なものとなっていく

 

人を操り金を巻き上げ 言葉と肉体への暴力で支配する人間

この人間により 虐げられていつしか自身の自由な意志も常識も奪われ

殺す側と殺される側へと・・・

死体の始末の方法も凄まじい

 

誰が誰を殺したのか

 

娘を守るために殺された父親

 

娘を守る為に妻を殺した男

他人の家に寄生し やがてはその家の主となり 己の快楽優先で人を虐待し死に至らしめる・・・・・

金も命も奪いつくしては移り住み生きてきた人間

えぐい 

 

文芸評論家の関口苑生氏の解説によれば モデルとなった2002年北九州市小倉北区で起きた凶悪監禁殺人事件があるのだと

ご記憶の方もおられるかもしれません

 

 

悪魔的な操りの支配下で 親は子を殺し 子は親を殺す そういう選択をさせられる

苦痛から自分が逃れたいが為に

そこまで追い込まれる

良識も思考力も奪われる

 

凄惨な場面の描写も繰り返しありますので 気の弱い方には無理かもしれません

食事しながら読むのは お止めになった方がいいかしらと

 

 

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下村敦史著「ヴィクトリアン・ホテル」〈実業之日本社文庫〉

2024-09-03 13:28:30 | 本と雑誌

 

 

高層ビルが建ち並ぶ都内の一等地に存在する『ヴィクトリアン・ホテル』は、地上九階、客室数二百八十室、贅を尽くしたレストラン七軒を誇る、日本有数の超高級ホテルだった。

従業員は二百五十名を超え、きめ細やかなサービスで国内外の客に愛されてきた。

その『ヴィクトリアン・ホテル』は、明日をもってその歴史にいったん幕を下ろす。

 

物語の始まりに掲げられた文章

この物語の舞台となるヴィクトリアン・ホテルがどういうものであるのか

それから登場人物それぞれの視点で物語は綴られていくのですが・・・・・

そこに巧みな仕掛けがあります

同じ名前でも・・・別の人物であったり

違う名前ながら 実は同じ人物だった

本名と筆名

芸名と本名

 

もしくは姓が同じだけの別人のことが語られていたりして

 

「え?」「え?」と思って読みながら 読了してから再び最初に戻り 時代の流れを確認する

 

読み始めはホテルで何が起きるかーと思いながら 描写される登場人物の気持ちに寄り添い 読み進んでいきますが

 

途中で ここは時代が違うよね

じゃあ現在はどこ ここはいつの時代を語っているーなどと

各々の時代 登場人物は最後につながります

 

そして『ヴィクトリアン・ホテル』は長い歴史にいったん幕を下ろすのです

 

SNSの心ない むしろ有害な投稿などで心傷ついた女優

羽振りのよい男

駆け出し作家

仕事先の金をくすねてホテルに迷い込んだ男

 

弁当屋を営む夫婦

それぞれが絡み合う物語

助けられたり ひと夜の恋もあり

 

ネット上での言葉についてにも ー考えなしに自分の浅い知識がすべて 自分が誰よりも賢いんだ 正しいんだーとの思い込みでーそういう厄介な人間ていますでしょー

実はただのクレーム人間 文句言いで 自分の思い通りにならないことが許せないーみたいな人間とかね

それは たぁだの我儘なのに

ー不快だから、という私情でクレームも罵倒も中傷も正当化されるー〈163頁より〉

そういう事例への的確な登場人物たちの言葉もあります

「そういうことだよ フィクションより生身の言葉のほうが何倍も切れ味が鋭い刃物なんだよ」〈66頁より〉

 

 

読みながら「これ」と思うところに栞代わりに綿棒を挟んでいました

言葉のやりとりで傷つく人へ向けてあげたい 読んでほしい言葉がいっぱいあります

 

世の中に悪意ある言葉を放つ人々は多い

特にネット上はね 自分の姿を見られないから

余計にねえ・・・・・

心優しい人が 温かな心を持つ人が傷つけられ辛い思いをするような そういう社会であってはほしくないーと願います

 

 

 

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望月諒子著「フェルメールの憂鬱」〈新潮文庫〉

2024-08-31 19:21:01 | 本と雑誌

 

 

 

 

「大絵画展」に続く絵画ミステリー 第二弾

シリーズ三作「哄う北斎」まで出ております

 

狙う絵画あり 標的あり

悪党に一撃加えられるカタルシスあり

獲物はうまく仕留められるか

仕掛けはどこかに傷がありはしまいか

最後の最後まで あの人は そうだったのか!!!なんて驚きもあったりしてね

 

誰かが誰かを騙している

 

今回 古い教会から盗まれた本当はとっても凄い価値〈があるかもしれない〉絵画

それを取り戻すように言われ 動く男はとっても大きな仕掛けをするんです

日本には 悪徳宗教法人の為に家庭は壊れ すべてを教団に捧げつくした父親は 医療費も出してもらえず亡くなり 自分の学費もままならず大学は中退せざるを得なかった青年がいれば

人々から金を吸い上げるだけの人間がいて 

 

「大絵画展」でも活躍〈暗躍〉した面々が それぞれの役割を果たします

細工は流々 仕上げを御覧じろ

 

新潮文庫版にはカラー口絵としてフェルメールの作品が8頁に渡りあります

これを眺めるだけでも楽しいです

作中にはこれらの絵画についての説明もありますし

描かれた時代背景も

解説はミステリ評論家の西上心太さん

 

どの登場人物が前作「大絵画展」と共通しているのか ついつい「大絵画展」を読み返してしまいました

 

以前に「大絵画展」を読んだ時に書いたものです↓

望月諒子著「大絵画展」 〈新潮文庫〉 - 夢見るババアの雑談室 (goo.ne.jp)

よろしかったら♬

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田村由美作「ミステリと言う勿れ」14巻 〈フラワーコミックス 小学館〉

2024-06-12 17:36:14 | 本と雑誌

 

 

物語の主役の久能整〈くのう ととのう〉クンと関わりある池本優人〈いけもと ゆうと〉巡査は妻の両親の家に妻子と向かう途中 事故に遭遇

妻子は他の人にお願いして避難させるが 自分は警察官としての責任感からも現場に残り

そこでトンネルの入り口も出口もふさがり閉じこめられてしまう

トンネルの中には どうやら殺人者もいるらしく・・・・・

池本は久能ならどう思考するかを思い描きつつ この窮地を乗り切ろうとする

 

 

さて別の物語

巡査部長の乙部克憲〈おとべ かつのり〉さんは自分の言動について悩んでいた

どうも余計な一言で相手の気分を害してやいまいか

などと

そこで一癖も二癖もありそうな人気カウンセラーの鳴子巽〈なるこ たつみ〉氏の話を聞くのだ

 

久能クンはライカさんと誕生日を過ごす

そこでライカさんから人が死んだ場所を教えられる

久能クンも知る警備員の言葉にある嘘・・・・・

それは何か

かつて死んだ二人の人間

その死の真相とは・・・・

 

なんてところでね 次巻に続きます

 

 

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染井為人〈そめい ためひと〉著「鎮魂」 〈双葉文庫〉

2024-06-11 23:30:14 | 本と雑誌

 

 

反社の集団の為に 学生時代 友人は暴力の被害者となり人生が変わってしまった

その正義感ゆえに社内でも浮いた存在であった中尾は その反社集団に属する男へのインタビューを偶然居合わせた店で聞いた

怒りがとどまらずインタビューを受けていた男が席を外した時に 記者に怒りの言葉を向けるが

その記者 天野は蛙の面に小便のような人を喰った態度

ところが その後 天野がインタビューしていた男 坂崎が殺された

人が恐れる反社の集団に属する男を殺したのは何者なのか

同じ反社集団の男たちが一人また一人と殺されていく

 

敵がわからず反社集団の男たちも疑心暗鬼に陥り 仲間を疑う者も

 

そんななか 殺人を犯し日本から逃亡していた反社集団の頭の男 石神がひそかに日本へ戻ってくるという

 

反社集団の男たちを殺す人間を賛美する者も現れる

それほどこの反社集団の被害者も多かったのだ

 

反社集団の暴力の被害に遭い 介護が必要な身となり 自殺した青年がいる

愛する男を守りたかった女性

その兄の存在ゆえに・・・・・

警察は罪を犯した兄を捕まえられず

兄の犯罪に苦しんだ両親は命を縮めた

 

目の前で爆死した愛する男

ならば 男が果たそうとして果たせなかったことを 自分が・・・

女は兄に銃口を向ける

 

事件を追っていた刑事は それを止められなかった

 

時に法律は犯罪者すら守る・・・

扱い方で法律は悪を味方しているように見えることもある

 

被害者はただ泣き寝入りするしかないのか

大切な人間が理不尽な被害者となってしまっても

 

ーこの先も犯罪はなくなりません。

残念ですが、それが現実です

ルールを守れる者と、守れない者。

この玉石混淆の社会を思うと、気が遠くなりますー

著者のあとがきの言葉も重いです

 

ただ法をおかす者

他人に被害をあたえる側が得をする社会であってはならない

そういう世界になってはならないーと思います

 

 

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堂場瞬一著「ブラッドマーク」 〈講談社文庫〉

2024-06-04 17:47:54 | 本と雑誌

 

 

人生半ばを過ぎた探偵はこの先のことも少しは考える

 

体力も落ちた 若い頃のようには走れない

それでも事件はやってくる

 

大好きな野球からみの仕事

ある選手をチームに入れるべきか否かの調査

けれどその調査中 誘拐事件が起きる

そして身代金を届ける役目に

 

さらわれた子供リリアン

その子供と調査中の選手との関係

人には誰しも過去がある

探偵にも

 

逆恨みされることも多々ある

それでも探偵は仕事を続けていくのだろう

おそらくは

 

 

 

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樋田毅〈ひだ つよし〉著「彼は早稲田で死んだ」〈文春文庫〉

2024-06-02 20:42:16 | 本と雑誌

 

 

1972年早稲田大学の中で革マル派のリンチに遭い死んだ学生がいる

著者は当時 この亡くなった学生と同じ早稲田大学の学生だった

 

やがて社会人となり記者となり

それから心にかかっていた事を本にされてきた

「記者襲撃赤報隊事件30年目の真実」

「最後の社主朝日新聞が秘封した御影の令嬢へのレクイエム」

学生運動のあれこれが新聞を賑わせた時代があった

当時子供だった私は どうして勉強する為に入ったはずの大学で勉強もせずに

何を革命ごっことか闘争に明け暮れている

果ては陰湿で愚かなリンチ殺人もあり

一体何をやっているんだー

そのように思っていた

 

これはその荒れた時代に大学生であった著者が自分の体験と 当時の事件に関わった人々にも話を聞いて書き上げた本

何故殺したのか

自分たちと違う考えの人間を敵と見做し 攻撃対象とし襲い掛かる

暴力的な人間

理想の社会を作るんだ

そういう考えは しかし偏った思想から未熟で悲惨な事件も起こす

革命に犠牲はつきものだ

邪魔する人間は敵だ

そういう時代があり 無駄に まったく無駄に奪われた命がある

己たちの危険思想に気づけず 偏った思想のまま生きている人間もいる

正義は人により異なるかもしれないが

歪んだ思想にとらわれたまま生き続けている人間もいる

 

リンチにより殺された青年には・・・殺されるべき理由など何ひとつなかった

 

 

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柚木裕子著「月下のサクラ」 〈徳間文庫〉

2024-06-02 11:02:19 | 本と雑誌

 

 

希望する部署への試験に失敗

しかし失格と言い放った黒崎は森口泉を彼女が希望する部署へ入れてくれた

泉の中に何を見てくれたのか

かつて死んだ友人がいる

泉は自身が信じる正義のもと 仕事をする

捜査支援分析センター 配属されて早々署内で事件が持ち上がる

金庫の金が盗まれている

そうして疑わしい人物が浮かび上がる

だがーその人物は死んだ

公安がその死体を発見している

 

公安が関わる死

泉には苦い思い出がある

黒崎は他の事にも気づいていた

怪情報の為に謹慎を命じられた黒崎

黒崎が依頼していた情報を泉が受け取りに行く

 

息子の罪を隠すために巨額の金が必要となった父親がいる

公安が仕留めたかった一味

署内の金庫の金を必要とした男と直接話そうとした泉は襲われて・・・・・

 

泉を救う為に一致団結する刑事たち

 

解説は文芸評論家の西上心太さん

 

シリーズ前作「朽ちないサクラ」は杉咲花さん主演で映画化され2024年6月21日全国公開だそうです

 

 

 

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中山七里著「能面検事の奮迅」 〈光文社文庫〉

2024-06-01 19:24:41 | 本と雑誌

 

 

過去の失敗から 感情を見せなくなった検事がいる

誰に対しても態度を変えず ただ真実を見極めようとする

不破検事・・・おかげで検察事務官の惣領美晴は・・・とてもとても仕事がしにくい

不破検事の真意が掴めない

何を考えているのか まったく感情は読めず

 

不破は疑惑を持たれた高峰検事も取り調べることになるが

不破独自の視点で高峰の過去へとたどり着く

ある場所を使わせたくなかった・・・・・それゆえの・・・・・

妹のことを案じながら死んだ娘

愚かで未熟な若者たちは彼らなりに守ろうとした

支えようとした

 

犯した罪は裁かれねばならない

だがしかし

 

不破の彼なりのはからい温情に岬氏のみが気づいていた

 

解説はミステリ評論家の千街晶之さん

 

 

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堂場瞬一著「罪の年輪 ラストライン6」 〈文春文庫〉

2024-05-25 12:35:34 | 本と雑誌

 

 

50代半ばとなった岩倉は 後輩指導の為にも捜査一課に戻ってこい・・・

などと言われ悩む

現在の立川の街も気に入っているのだ

 

そうした中 起きた事件は 被害者も加害者も高齢者というもの

自首してきた三嶋の言葉から 岩倉は彼らの学生時代に起きた事件に思い至るが

 

どうにもすっきりしない気持ちで事件に取り組むこととなる

己の今後の人生

付き合っている女

 

自分はどうしたいのか

どう生きていきたいのか

何才になろうとも人は生き方に思い悩むのだ

 

やがて被害者の長年の許されぬ性癖が明らかとなり

 

家族にせめての安心感を与えんがために・・・・・存在を消してやりたかった

孫娘までもが その毒牙にかからぬように

 

教職にある者がしてはならぬこと

教師は・・・生徒の信頼を裏切る行為をしてはならない

 

「家族のために」

貧乏くじをひかされたような人生の中でも懸命に生きた男がいる

残り短い命なら せめて安心を遺してやりたいと思ったか

 

事件解決後

岩倉は捜査一課に戻る選択をした

まだまだ警察で生きていく

 

 

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望月諒子著「大絵画展」 〈新潮文庫〉

2024-05-20 07:47:15 | 本と雑誌

 

 

 

 

 

「大絵画」シリーズは「フェルメールの憂鬱 大絵画展」〈2016年〉

「嗤う北斎」〈2020年〉とあります

 

ーポール・ニューマンとロバート・レッドフォードに捧ぐーという一文が本作は掲げられております

かの「スティング」〈1973年 アメリカ映画〉

興味を持たれた方はこちらのサイトさんをどうぞ↓詳しいです

スティング (映画) - Wikipedia

最初に観る時は 騙されること請け合いのコン・ゲーム

誰がはめられているのか・・・

痛快 ごきげんな娯楽作に仕上がっております

 

そうこの小説も騙しのお話なのです

誰がはめられて騙されカモられているのか

騙す側は誰なのか

それはどういう動機で・・・と

いい家のぼんぼんながら長男の甚六で 母親に心配かけっぱなしの男は儲け話にひっかかり にっちもさっちもいかない羽目に

 

過去の借金ふくれあがり どうにかしなきゃとスナックのママは これも騙されて・・・追い込みかけられる身の上に

 

この二人と同じく どうにも追い詰められた立場にあるらしき男は とんでもない盗みの計画を実行する

しかし本当の目的は絵を盗むことではなかった

ある男への復讐

さて復讐は首尾よく成功するのか

それとも?!

 

こいつら みんなグルだった?!

 

新潮文庫版は カラーで物語に出てくる数々の名画も掲載されております

狂ったように高額に絵が買われていた時代もありました

 

丁寧かつ詳しい解説は 村上貴史さん

 

 

 

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「陰陽師0」〈文春文庫〉

2024-04-27 14:48:37 | 本と雑誌

 

 

 

原作 夢枕 獏

映画脚本 佐藤 嗣麻子

 

まだ陰陽師となる以前 陰陽寮の学生である安倍晴明

優れた資質あるゆえに 他の学生からは「キツネの子」との陰口も

 

この頃 安倍晴明は自分の両親を殺した人間を突き止めようとしていた

夢に現れる姿をつかみ見極めようともしていたが

 

伊勢の斎宮の任を果たし 都へ戻ってきた徽子女王

彼女の身辺に異変が起きる

ひとりでに鳴りだす琴

 

案じた源博雅は 安倍晴明に助力を乞う

陰陽寮の師たちをさしおき まだ学生の身の清明に・・・・・

 

それを妬む者は学生ばかりではなかった

 

陰陽寮で学ぶ貴族の子弟が 自宅の井戸で死体となり見つかる

得業生の座をめぐり 陰陽寮の学生たちは 師から出された課題に血眼になり取り組むが

 

野心に富む男は 他者の仕掛けた罠に気づけず 清明を捕らえようとする

 

蟲毒という恐ろしい業がある

壺に様々な毒虫・生き物を閉じこめ 殺しあう生き物の最後に残ったモノを使う

 

己の野望・欲望の為には 他の命など顧みず ただ利用するのみ

そういう人間のかけた術が 清明までもとりこもうとするのだが

 

博雅の奏でる笛の音が・・・・・

まがいものなどではなく「本物」に 卑小な人物が手出ししようとしたことが そもそも間違いではあった

 

それでも清明を追い詰めた火竜

生命を奪われた多くの者たち

 

事が片付いてから 

清明には その能力にふさわしい場が与えられようとしていた

 

 

映画のノベライズ

 

 

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松嶋智左著「匣の人」〈光文社文庫〉

2024-04-24 15:47:58 | 本と雑誌

 

匣・・・・・この作品では交番を意味する

匣の中の人

交番の中の人 おまわりさん

私たちは遠方に出かけた時 知らない土地で迷ったら・・・交番を見つけると安心する

何か困ったことがあれば・・・おまわりさんを頼りたい

 

ナビもスマホもある世の中で何を言っているんだーと 思われるかもしれないが

 

交番の中の人も同じ人間

悩みや迷いだって抱えている

苦しいこともある それでもー

この「それでも」って案外・・・いえ一番大切ではとも思う

 

育った家庭環境から家族に馴染めず 自分の居方がわからず 居場所も見つけられないまま 社会人になった青年がある

彼の中には正義感もあたたかで優しい心もあるけれど 自分では見失ってしまっている

他人との距離 付き合い方もよくわからない

親が 特に母親が教えるべきところを 教えてもらえずに育ってしまったのだ

男社会ゆえか職場での理不尽なパワハラも経験し バツイチでもある交番勤務の警察官・巡査部長の浦貴衣子〈うら きいこ〉は 自分の新人歓迎会を「体調が悪い」と欠席するような青年と 交番で組むようになる

この厄介な扱いが難しい若者の育成も期待されて・・・・・

夫婦喧嘩の仲介やら 交通事故 痴呆症抱える徘徊老人の保護 起きる様々な事件・事故などなど

仕事は多岐に渡るのだ

同性の上司からの昇進試験を受けるようにと言われ続けているが 勉強にも自身の過去から身が入らない

嫌な思いはしてきた

 

続くバイクによるひったくり

そしてある施設で見つかった死体

何故殺されたのか

捜査が始まる中 浦と組む青年・・・澤田里志〈さわだ さとし〉巡査の様子がおかしい

殺された男の死体が見つかった場所の二階に拘る

彼はあることを確認したかった

死体が見つかった場所 その建物について

何故 澤田は入ったことがない建物の情報を持っていたのか

浦の奮闘と澤田の持つ情報で捜査は進むが

 

澤田の知る少女が行方不明であることがわかる

澤田はこの少女を案じて捜していたのだ

消えた少女・・・・・

浦は 澤田を心配し 彼を信じて動く

そして

殺人犯にもたどりついた

 

 

人として警官としての 澤田の成長

謎を解くちりばめられた破片

この同じ主人公の新しい物語も読みたくなります

 

解説は文芸評論家の細谷正充〈ほそや まさみつ〉さん

 

 

 

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馳星周〈はせ せいしゅう〉著「少年と犬」 〈文春文庫〉

2024-04-23 13:19:15 | 本と雑誌

 

 

 

その犬は外見からシェパードと和犬の血が入っているようだ

とても賢く人間の内面まで見抜けるようにも思える

まだ仔犬の頃に東北の震災に遭い 飼い主を喪った

そうして 犬は会いたい人間に会うために行動する

会えるかどうかも分からないのに・・・その人間を捜して長い長い旅に出た

ー会うためにー

ー必ず 会うのだー

この強い意志

その旅の途中で様々な人間に出逢っていく

 

「男と犬」

震災後の街で 定職を見つけられない男は その首輪に多聞とある犬と出逢う

男は 痴呆症の母と介護する姉の為にも大金を必要としており それでやばい仕事を引き受ける

 

多聞を昔飼っていた犬の名前で呼び 男が多聞を連れていくと元気になる母親

その姿に生気を取り戻す男の姉

守り神と言って仕事にも多聞を連れていっていた男

だが幸運は続かず やっかいごとが起こり 

男は命を落とすのだ

 

「泥棒と犬」

男の犬の多聞を欲しがっていた泥棒は 事故の現場から無理やり多聞を連れ去る

一緒に故国へ連れ帰ろうとしていたが

彼もまた

彼の持つ金を狙う組織から逃げられず

死んだ

 

「夫婦と犬」

夫は山で出会った犬に命を救われた

犬が吠えなければ 熊に遭遇するところであったのだ

夫には働き者の妻がいた

夫を愛して一緒になった妻だが 夫のあまりの身勝手さに疲れてしまっている

そして夫もこのままではいけないとわかりながらも

あと5年・・・などと思っている

けれど どんな形でか 終わりはやってくる

 

「少女と犬」

事故で両親が死んで 自分も片足を失い 移動は車椅子

少女は死のうと思って東尋坊へ下見に

そこで犬と出逢った

何故だか その犬が気になる少女は 

自殺しないか その身を案じてくれた男性に その犬を捜してくれるように頼んだ

男性は犬を見つけてくれた

少女は犬と暮らしたくて リハビリを頑張り 義肢をつけて歩けるようになる

これまで苦労をかけた祖母に楽させてあげたいーとまで考えられるようにもなった

犬は川に流されていた仔犬を岸にひっぱってくる

少女はこの仔犬を育てようと思う

犬が少女のために届けてくれたようにも感じて

 

「娼婦と犬」

女は山の中で怪我をしている犬を見つけ動物病院へ連れていく

惚れた男がどうしようもないクズ男

そこで どんどん落ちていってしまったけれど 心優しい女

犬と暮らすうち 女は落ちていくだけの自分

これまでのどうしようもない生き方を思い返す

そして 自分が犯した罪の清算を考えて・・・・・

 

 

「老人と犬」

妻が病死後 娘とも折り合い悪く独り暮しの老人は・・・ひっそりと生きて死ぬのも悪くないと思っていた

彼もまた病気を抱えていたから

そんな彼の庭に現れた犬

老人は猟師で以前は犬もいた

もう死んでしまったが

犬のいる暮し

それは温かさをくれる

老人の前にどうして犬は現れてくれたのか

もしや一人きりで死なせないためにか・・・・・

 

 

「少年と犬」

震災後 話さなくなった少年がいる

笑顔も見せなくなり 海に怯え

だから両親は熊本県へ移住し 農業に従事

その少年・光が笑顔を見せる 

言葉も話し始めた

 

父親が出逢った犬を連れてきたから

その犬は少年がまだ幼い頃 公園で出会った犬だった

初めて会った時から犬も男の子も

犬は少年を捜して捜して 長い長い旅を続けてきた

やっとやっと会えた

続くはずだったのに

熊本県にも地震が

 

 

少年を庇うように犬は 多聞は死んでしまった

少年は自分の中に多聞はいるという

 

いつか姿を変えて多聞が少年のもとへ戻ることがあればいい

ーなんてことをね 思いました

小説だけれど

 

解説は作家の北方謙三さん

自身と犬とのことについても触れておられます

 

犬は愛情深くとても賢い生き物です

幾千倍もの愛情を返してくれる

幾万倍もの力で包んでくれる

これまで一緒に暮らして 先に逝ってしまった犬たちに想い馳せながら

「ありがとう ごめんね」

 

 

 

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