店の中に入ってきた瞬を見た盗賊たちは、瞬の言葉を聞いて立ちすくんだ。
「おまえらが特殊な道具を使って、この店に不法侵入したことはわかってるんだ」と、瞬は左腕のジェネレータにわざとらしく手をやりながら、ゆっくりと前に進み出た。
見れば、宝石店の従業員か、店主かもしれない人たちは、いずれも後ろ手に縛られ、粘着テープで口を塞がれて、出入り口に近い場所に転がされていた。外からは陰になって見えない場所で、事件が起こることを事前に知っていた瞬も、危うく見過ごしてしまうところだった。
「道具を持っているのは、おまえたちだけじゃないんだ」と、瞬は言いながら、凍りついたまま動かない盗賊たちに静かに近づき、この時代にあってはいけない、未来の道具を探していった。
「――おい。誰が動いていいと言った」と、瞬はリーダーらしい一人に近づくと、手首を突き出し、ジェネレーターを見せながら言った。「残念ながら、未来の道具を持っているのはおまえたちだけじゃないんだ。痛い目を見たくなかったら、さっさとおまえたちが持っている道具を置いて、ここから消えうせるんだ」
目出し帽を被った盗賊達は、瞬が手首に巻いているジェネレーターにビクビクしながら、宝石が溢れ出しているバッグを持って、後じさりに集まった。
「おまえらが持っている物は、なんだ?」
と、瞬が肩をふるわせてすくみ上がっている盗賊達に聞いた。
「……」と、もじもじしながら考えていた盗賊の一人が、飛び上がりそうな声で言った。
「なんだ。そうだったんですか、旦那」
と、一人の男が言うと、隣の男があわてて言った。
「なに言い出すんだ、ラッパ。おまえは黙ってろ」
と、リーダーらしい一人が、煩わしい目出し帽をおもむろに脱ぎ去って言った。
「下手なこと言うんじゃねぇ。計画が丸つぶれじゃないか」
「ボス? 見えてます――」
「おまえもか、ササキ」と、ボスと言われた男は、指をさされた自分の顔に目出し帽がないのに気がつき、凍りついたように瞬を振り返った。
「あきれたやつだな」と、瞬はため息を漏らしながら言った。「間抜けな顔が丸見えだ」
「旦那も、あの秘密の道具を手に入れたんですね」
と、ラッパと呼ばれた男が胸をなで下ろしたように言った。
「先にこの店に来ちまったが、欲しければお渡ししますよ」と、ラッパは持っていたバッグを前に突き出して言った。「私たちは、ここのオーナーに復讐がしたいだけなんです。だけど、いまは警察に捕まっちまって、手を出せないんです。だから、オーナーが経営していた店をハチャメチャにしてやれば、少しは気が晴れるかもと思って――」