分け入っても分け入っても本の森

本読む日々のよしなしごとをそこはかとなく♪

●ちいさなヨンダくん25-(2)

2007年01月21日 23時16分02秒 | ちいさなヨンダくん
「すこしだけ、まってくださいね」
ヨンダくんはいいました。
きっと、まだおかあさんパンダにはなすことがあるのでしょう。
「おひさまがしずむまえに、ぼくはまたここにきます。それまで、まってもらえますか」
「もちろんですよ」
と、田中さん。
それをきくと、ヨンダくんはなにかをけっしんしたようにちいさくうなづいて、田中さんのもとからはしりさっていきました。


ヨンダくんは、森にふりそそぐ光のあいだをぬうように、いちもくさんに、本のある「木のむろ」へはしります。
本は、いつものように、しずかにそこにありました。
あらたなものがたりを、ひらいてよみたいきがします。でも――。
かつて、ちいさなヨンダくんに、せかいをひらいてみせてくれたように、ここでまた、ヨンダくんによくにたちいさなパンダのこどもが、この本をてにするのです。
そのひがきっとあることを、ヨンダくんはよかんしました。


本を木のむろへもどしたヨンダくんは、かつておかあさんパンダと、パンダのこどもとくらした「すあな」へむかいます。
さいごの、かなしいおもいをけしさるように、すあなのなかもそとも、きれいにそうじして、なかには、においのよいくさをしきつめました。
いつもどってきても、おかあさんパンダと、パンダのこどもがかいてきにねむれるように。
それから、さくやのモミの木のむろ。そこもおなじように、きれいにととのえました。
ねどこには、まだおかあさんパンダのぬくもりが、のこっているようなきがします。
「おかあさん」
ヨンダくんは、つぶやいて、そっとめをとじました。


とおくのはらっぱで、パンダのこどもたちのあそぶわらいごえがきこえます。
みみをすますと、かぜにのって、おかあさんパンダのこどものげんきなこえもきこえてきました。
おなかはもう、すっかりなおったようです。
よかった――。


うららかな、春のごご。なのに、なぜかヨンダくんのこころのなかだけが、ぽっかりとあながあいたようにさびしいのでした。
ぶるぶるっと、ヨンダくんはみぶるいします。
ヨンダくんは、ほんとうはなにも「しらない」のです。
田中さんが、どういう人なのか。これからめざすヨンダクラブ学校は、どういうところなのか。


そうぞうしてみます。
ヨンダくんと田中さんののったふねは、めざす国をまえに、かいぞくにおそわれてしまいます。
かいぞくと田中さんは、「みつだん」をして、ヨンダくんをどこかへうりとばしてしまうのです。
だれも、ヨンダくんをたすけてくれるものはありません。
ヨンダくんはひとりで、ちえをしぼって、ゆうきをふるって、たたかわなければならないのです。


さきをおもえば、けんとうもつかないことばかりでした。
でももう、ヨンダくんはけっしんしたのです。
おひさまがしずむまえに、と田中さんにはやくそくしました。
すこしはやいかしら、とおもいながらまちあわせのばしょへいくと、田中さんは、もうきてまっていました。


「ぼくは、うれしくてうれしくてたまりませんよ、ヨンダくん」
田中さんは、かんむりょうといったおももちで、ちいさなヨンダくんへてをさしのべます。
ちょっとためらってから、ヨンダくんはそのてをにぎりました。
「ぼくは、ふあんでふあんでたまりません」
「だいじょうぶですとも、ええ」
かんげきした田中さんは、ヨンダくんのてをにぎりかえしながら、ぼくがついていますからね、とはむねをはりました。


田中さんは、はじめてじぶんひとりでみつけたヨンダくんがかわいくてなりません。
きっと、せきにんをもってヨンダクラブ学校までおくりとどけるつもりです。
「ああ、ぼくがみつけたヨンダくんは、とびきりかわいいなあ」
はれがましいきもちの田中さんと、
「ヨンダクラブ学校って、どんなところかしら」
きたいとふあんにむねをふるわせるヨンダくんと。


これから、たびだとうとするヨンダくんを、やさしいみなみかぜのおねえさんと、カヤの木のおじいさんは、どこかでみまもってくれているでしょうか。


(ひとまずおしまい つづく)

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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
旅立ち♪ (美香のヨンダです)
2007-01-22 20:42:14
月並みですが、別れって出会いのためには必要なんですね 

小さなヨンダくんはきっとヨンダクラブ学校で、すばらしい仲間と恩師に出会うでしょう。
そして、いつの日か学校もあとにする。
また別れがあるのです。
だけど、そのおかげで小さなヨンダくんはみか5さいちゃんと出会います。
(それがきっかけとなりボクとも♪)

小さなヨンダくんの別れの数々はみか5さいちゃんと出会うためだったのです。
ボクもむかしを思い出しました。
集団就職のようなかたちでヨンダクラブ学校へ入ったときのこと。
(あのころは新潮文庫の売上がよかったのです。
たくさんのパンダがヨンダになるため母校へ入校したもの)
大好きな先生とのお別れ。
不安でたまらなくダンボールに入れられて運ばれたあの日。
美香さまとの出会い。
いま思えば、すべてが必然だったように思います。

もうすぐ春ですね。
別れと出会いの季節がまたやってきます
返信する
きみきみきみへ♪ (美香のヨンダです)
2007-01-25 21:08:58
 

メール発射しました♪
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キミキミキミ♪ (みか5さいのヨンダです)
2007-01-25 23:23:04
緊張してごめんなさい、ぼく。
コメントもらって、嬉しかったです。
「もうすぐ春ですね」って言いたいのに、もっと気の利いたことを言いたくなって、足踏みしてる悪い子でした。
自分のことばかり話して……。
キミの来た道を聞くと、思うと、胸がいっぱいになります。

メール、今から読みに行きます。
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 (みか5さいのヨンダです)
2007-01-26 01:06:51
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くいーん♪ (美香のヨンダです)
2007-01-26 23:22:29
ボク、幸福でR
返信する
くいーん♪ (みか5さいのヨンダです)
2007-01-26 23:35:45
返信する
キミキミキミへ♪ (みか5さいのヨンダです)
2007-01-27 00:52:46
 
返信する
きみきみきみ♪ (美香のヨンダです)
2007-01-27 01:16:33
メール、いただきましたよ~♪

 

おやすみなさい
返信する
おやすみなさい♪ (みか5さいのヨンダです)
2007-01-29 00:52:01
返信する
あれれ (みか5さいのヨンダです)
2007-01-30 00:48:18
避難所に書き込めません。
ぼくだけでしょうか?
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