分け入っても分け入っても本の森

本読む日々のよしなしごとをそこはかとなく♪

●ちいさなヨンダくん21

2006年06月20日 23時39分28秒 | ちいさなヨンダくん
「キミのところのチビ、ちかごろずいぶんつきまとうね」
大きいパンダのこどもが、ヨンダくんのおかあさんパンダのこどもにはなしかけます。
「よせやい」
おかあさんパンダのこどもは、ヨンダくんにきこえないように、こえをひそめて、
「あんなの、うちのこじゃないよ」
それでも、いつもとすこしちがうようすで、いっしょうけんめいきのぼりしたり、ニコニコしながら、なにかいいたそうに、こちらのようすを見ているヨンダくんのことが、きになります。

「あ、あぶない」
ほかのパンダのこどもたちより、ひとまわりもふたまわりもちいさいヨンダくんが、つるりとてをすべらせて、木からおちそうになりました。
おかあさんパンダのこどもは、おもわずてをのばして、ヨンダくんをささえます。
「ありがとう」
ぼく、あぶないとこだったね。そういって、にっこりするヨンダくんを、あきれたようにながめながら、
「ちいさいのに、むちゃしてらあ」
「キミみたいに、ぼくもおおきくなりたいな」
「じゃあ、もっともっとたべなきゃね」
「ササの葉ばかり、そんなにいっぱいたべられないもの、ぼく」
パンダのくせに、ササの葉をたべられないなんて、へんなこだな、というかおで、おかあさんパンダのこどもは、ヨンダくんを見ました。
ササの葉は、夏も冬もかれることなく、あおあおとして、パンダのすむ森にしげります。
春になると、あまいタケノコがかおをだすのでたのしみですが、それいがいは、くるひもくるひも、ササの葉をやまのようにたべて、パンダのこどもたちは、大きくなるのです。
じつは、パンダのこどもたちは、ササの葉いがいの、くだものや「きのみ」もだいすきです。でも、おいしいくだものや「きのみ」は、そういつもいつも、あるわけではありませんものね。

「あのね、ぼくね」
はなしをするのが、うれしくてしかたがないようすで、ヨンダくんは、目をかがやかせています。(いままで、おかあさんパンダのこどもと、こんなにいっぱい、はなしたことは、なかったのです)
「おいしい『のいちご』がなっているところを、しってるんだけど」
「え、ほんとう」
おかあさんパンダのこどもは、くいしんぼうです。
ヨンダくんがはなしおわるのもまたずに、そこへつれていけと、せきたてました。
あんないする、ヨンダくん。
みなみかぜのおねえさんがおしえてくれたはらっぱで、あかい『のいちご』は、いまをさかりに、たわわにみのっています。
「わあ」
なんて、おいしそうなのでしょう。おかあさんパンダのこどもは、かけだしていきました。

「いちどにたくさんたべたら、おなかをこわすよ」
ヨンダくんが、しんぱいになっても、おかあさんパンダのこどもは、とりあおうとしません。
「なんだよ、ケチケチするな」

そんなヨンダくんたちを、もっとしんぱいそうに、かげから見ているものがありました。
――ヨンダクラブたんさくたいの、田中さんです。