担保不動産競売における申立外建物の処理

2017-11-08 23:31:51 | 不動産法

【例題】Sは、甲地と、甲地上にある乙建物と丙建物をそれぞれ所有している。甲地と乙建物には、Gのために抵当権が設定されている。この度、Gが担保不動産競売を申し立てた。

 

[問題設定;申立外建物は従物か]

・抵当権の効力は、抵当不動産のみならず、その付加一体物にも及ぶ(民法370条本文)。この理は、抵当権設定時に存在した付加一体物のみならず、その後に登場した付加一体物にも妥当する。道垣内の例えでは、抵当建物(主物)の畳(従物)が入れ替えられた際に新しい畳に抵当権が及ばないとする帰結は不当だから。■道垣内136-7、潮見205

・畳やエアコン(←建物)、プレハブ物置(←母屋)といった従物(民法87条1項)にも抵当権の効力が及ぶことに争いはない。我妻以降の多数説は、両概念の沿革の違いにかかわらず、付加一体物には従物が含まれる、と素朴に解する。■道垣内137

・執行実務も、「申立外建物は従物要件を満たすか」という問題設定で処理している。すなわち、抵当建物の「従物=附属建物」と判断されれた売却の対象となり、それ以外の建物は単なる「件外建物」として対象外とされる(大判昭和10・2・20法律新聞3837号11頁)。■実務上376

 

[従物要件]

・要件その1;申立外建物と抵当建物の所有者が同一であること(民法87条1項)。所有者を異にすれば件外建物にすぎない(この主張が執行妨害として悪用されうる)。■実務上376-7

・要件その2;申立外建物が、抵当建物の「常用に供」されていること(民法87条1項)。反対に、抵当建物内の設備(トイレ、風呂など)を利用しなければ不十分は申立外建物も要件を満たす。■実務上377

・要件その3;申立外建物が、抵当建物に「附属」すると認められるだけの場所的関係にあること(民法87条1項)。■実務上377

 

[申立外建物と登記]

・不動産競売において申立外建物の処理が問題になる場合、多くは未登記であろう(たぶん)。

・これに対して登記実務では、実体的には附属建物(従物)であっても、それが1個の建物である限り、独立の表示登記をすることを認めている。その結果、執行の現場において「抵当建物の附属建物の実質でありながら、その抵当権が設定されていないような独立登記を具備したもの」が登場しうることになる。東京地裁では、このような「登記済み申立外建物」であっても、登記にとらわれず従物要件に忠実に判断している。もっとも、この「登記済み申立外建物(実体は附属建物)」も競落した買受人は、当該登記名義人に対する所有権移転登記請求訴訟を提起する必要がある。■実務上378-9、例題解説132-3

 

[件外建物として残ったものの扱い]

・申立外建物が件外建物と判断されれば、売却の対象外として現所有者の元にとどまる。この場合は、法定地上権の成立要件(抵当権設定時の件外建物の存在、設定時の所有者の同一)が問題となる。■潮見218-9

・なお、当該件外建物が未登記であっても法定地上権は認められる(最二判昭和44・4・18集民95号157頁は、この理を当然の前提としている)。■道垣内214-5

 

道垣内弘人『担保物権法〔第3版〕』[2008] ※4版買わなきゃ…

東京地方裁判所民事執行センター実務研究会編『民事執行の実務−不動産執行編(上)〔第2版〕』[2009] ※3版買わなきゃ…

財団法人法曹会編『例題解説不動産競売の実務〔全訂新版〕』[2012]

潮見佳男『民法(全)』[2017] ※1冊でまとまっているのはかなり便利

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