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社員の非違行為が懲戒解雇事由に該当する場合であっても,懲戒解雇が無効となることがありますか?

2015-10-16 | 日記

社員の非違行為が就業規則に定める懲戒解雇事由に該当する場合であっても,懲戒解雇が無効となることがありますか?

 労契法15条は,「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と規定しています。
 したがって,社員の非違行為が就業規則に定める懲戒解雇 事由に該当するように見える場合であっても,懲戒解雇が,客観的に合理的な理由を欠いたり,社会通念上相当でなかったりした場合は,懲戒権を濫用したものとして無効となります。

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まずは戒告処分をしてみて,反省の色が見られないなら懲戒解雇しようと思うのですが,問題ないですか?

2015-10-16 | 日記

まずは戒告処分をしてみて,反省の色が見られないようなら,同じ事実を理由として懲戒解雇しようと思うのですが,問題ないでしょうか?

 懲戒処分の有効性は,一事不再理の原則を考慮して判断されるため,懲戒処分を行った事実と同一の事実について,懲戒解雇 することはできないことを前提として,どのような懲戒処分に処するのかを決定する必要があります。
 戒告処分に処した場合は,同じ非違行為を理由として更に懲戒処分に処することはできないものと考えて下さい。
 懲戒解雇するには,戒告処分の理由とされた非違行為とは別の非違行為が必要となります。


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普通解雇すれば有効となりそうなのですが,懲戒解雇した場合には無効となるリスクがそれなりに高い場合

2015-10-16 | 日記

懲戒解雇したい事案において,普通解雇すれば有効となりそうなのですが,懲戒解雇した場合には無効となるリスクがそれなりに高い場合,どのように解雇すればいいでしょうか?

 普通解雇 であれば有効となりそうなものの,懲戒解雇 は無効となるリスクがそれなりに高い場合は,普通解雇を選択するか,懲戒解雇と合わせて普通解雇の意思表示も明示的にするかすべきでしょう。
 当初,懲戒解雇のみを行ってしまったが,訴訟の審理が進むにつれ,懲戒解雇としては無効となる可能性が高いことが判明したような場合も,予備的に普通解雇の意思表示をしておくべきです。

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懲戒解雇の意思表示は,同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められますか。

2015-10-16 | 日記

懲戒解雇を通知した場合に,懲戒解雇の意思表示は,同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められますか。

 この問題は,結局のところ,当該解雇 の意思表示の解釈(事実認定)の問題であり,事案ごとに検討するほかありません。
 懲戒解雇 のみを行ったことが明らかな場合は,普通解雇 であれば有効な事案であっても,懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められません。
 裁判例の中には「使用者が,懲戒解雇の要件は満たさないとしても,当該労働者との雇用関係を解消したいとの意思を有しており,懲戒解雇に至る経過に照らして,使用者が懲戒解雇の意思表示に,予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合には,懲戒解雇の意思表示に予備的に普通解雇の意思表示が内包されていると認めることができる」とするもの(岡田運送事件東京地裁平成14年4月24日判決)もありますが,「使用者が懲戒解雇の意思表示に,予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合」を広く考えることはできません。
 解雇する時点で,普通解雇にするのか,懲戒解雇にするのか,その理由はどのようなものなのかを明確にしておくべきであり,懲戒解雇とともに普通解雇も合わせて行うのであれば,解雇通知書にその旨明記しておくべきでしょう。


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当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が後から判明した場合

2015-10-16 | 日記

懲戒解雇した時点で既に存在していたものの使用者に判明しておらず,当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が後から判明した場合,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることはできますか?

 懲戒解雇 した時点で既に存在していたものの使用者に判明しておらず,当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が新たに判明した場合,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることができるかに関し,山口観光事件最高裁第一小法廷平成8年9月26日判決(労判708号31頁)が,「使用者が労働者に対して行う懲戒は,労働者の企業秩序違反行為を理由として,一種の秩序罰を課するものであるから,具体的な懲戒の適否は,その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって,懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから,その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである。」と判示していますので,懲戒解雇した時点で使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることはできません。
 この点は,原則として解雇事由の追加主張が認められる普通解雇と大きく異なります。
 懲戒解雇した時点で認識していなかった非違行為が新たに判明した場合は,
 ① 山口観光事件最高裁平成8年9月26日判決のいう「特段の事情」があるかどうか
 ② 懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇 の意思表示でもあると評価することができるか
 ③ 当初の懲戒解雇とは別途,予備的解雇をする場合の懲戒解雇又は普通解雇の理由とするか
等について検討していくことになります。


就業規則がない会社や就業規則を周知させていない事業場でも懲戒解雇することはできますか。

2015-10-15 | 日記

就業規則がない会社や就業規則を周知させていない事業場でも懲戒解雇することはできますか。

 フジ興産事件最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決が,使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要し,就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとしていることからすれば,就業規則に懲戒解雇事由を定め,就業規則を周知(従業員が就業規則の存在や内容を知ろうと思えばいつでも知ることができるようにしておくこと。)させておかなければ,労働者が重大な企業秩序違反行為を行った場合であっても,通常は懲戒解雇 することはできないと考えられます。
 もっとも,フジ興産事件最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決は,労働組合との労働協約に懲戒の種類及び事由が定められていて当該労働者に労働協約の効力が及んでいる場合や,個別労働契約において懲戒の種類及び事由が定められているような場合であっても懲戒解雇することができないとまでは言っておらず,これらの場合に懲戒解雇することができないと考えるべき理由もありませんので,私見ではこれらの場合にも懲戒解雇することができるものと考えています。
 私見によっても,就業規則に懲戒の種類及び事由が定められて周知されておらず,労働組合との労働協約に懲戒の種類及び事由が定められていて当該労働者に労働協約の効力が及んでいる場合でもなく,個別労働契約において懲戒の種類及び事由が定められてもいない場合には,労働者が重大な企業秩序違反行為を行った場合であっても懲戒解雇することはできず,普通解雇や退職勧奨 等で対処することになります。労働契約上の根拠規定がなくても民法627条により行うことができる普通解雇 とは大きく異なる点です。

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懲戒解雇の有効性を判断する際の検討項目を教えて下さい。

2015-10-15 | 日記

懲戒解雇の有効性を判断する際の検討項目を教えて下さい。

 懲戒解雇 の有効性を判断する際には,
 ① 就業規則の懲戒解雇事由に該当するか
 ② 懲戒権濫用(労契法15条)に当たらないか
 ③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
 ④ 解雇 が制限されている場合に該当しないか
等の項目を検討する必要があります。

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懲戒解雇とはどのような解雇のことをいうのですか?

2015-10-15 | 日記

懲戒解雇とはどのような解雇のことをいうのですか?

 懲戒解雇 とは,使用者が有する懲戒権の発動により,一種の制裁罰として,企業秩序に違反した労働者に対し行われる解雇 をいいます。

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勤務態度が悪いなどと伝えると角が立ってしまうので,事業縮小に伴う整理解雇とするのはいかがですか?

2015-10-15 | 日記

勤務態度が悪く,能力も極端に低い社員を解雇しようと思うのですが,勤務態度が悪いだとか能力が低いだとか伝えると角が立ってしまいます。そこで,会社の事業縮小に伴う整理解雇ということにしようと思っているのですが,いかがでしょうか?

 解雇 される社員の気持ちを考えてのことなのだとは思いますが,本当のことを伝えると角が立つから解雇の本当の理由を伝えられないというのでは,会社経営者としてなすべき仕事から逃げていると言わざるを得ません。
 会社経営者は,社員に言いたくないことであっても,会社を経営していく上で必要なことであれば言わなければなりません。
 解雇の理由が,勤務態度が悪いことや能力が極端に低いことなのだとすれば,まずはその事実を伝えて理由を説明するとともに,改善を促すのが本筋でしょう。

 労働契約を終了させなければならないほど勤務態度の悪さ,能力不足の程度が甚だしいことを証拠により立証できるのでしょうか?
 有効に解雇 できるだけの証拠がそろった状態でそのように仰っているのであればまだいいのですが,普通解雇 (狭義)も懲戒解雇 もできない状態でその台詞を言ってみても,全く説得力がありません。
 「勤務態度が悪いとか,能力が低いと言ったら,労働者が反発して解雇の効力が争われる可能性が高いが,整理解雇 であれば本人に落ち度があると言っているわけではないから,解雇の効力が争われるリスクが減るのではないか。」と考えている,といった程度の話ではないかと疑われてしまいます。

 整理解雇の有効要件を満たしていないのに整理解雇したところ,社員が整理解雇の効力を争ってきた場合,そのまま整理解雇が有効であると押し通しても勝てませんから,解決金を支払って合意退職してもらうか,解雇を撤回して出社を命じることになるのが通常です。

 整理解雇しないと失業手当を受給する上で解雇された社員が不利になるということもありません。
 解雇した場合であっても,重責解雇と評価されなければ,解雇された労働者は特定受給資格者に該当し得ることになり,失業手当を受給する上で不利に取り扱われません。
 退職勧奨 により合意退職した場合も同様です。

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整理解雇に臨むスタンスとしては,どのように考えていますか?

2015-10-15 | 日記

整理解雇に臨むスタンスとしては,どのように考えていますか?

 使用者が労働者に対して人員削減の必要性を丁寧に説明し,退職の条件についてそれなりに配慮したような場合は,労働者が早期退職募集や退職勧奨 (合意退職)に応じてくれることも多く,退職勧奨 する必要性がある人数が大幅に減ることも珍しくありません。
 私としては,丁寧な説明・退職条件の提示により合意退職してもらうことを中心に考えるべきであり,整理解雇は,使用者が誠意を持って丁寧に説明・交渉しても合意退職が成立しない場合に限定して,例外的に行うべきものであると考えています。

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④手続の相当性については,どのようなことを検討する必要がありますか?

2015-10-15 | 日記

 

 

 労働協約で整理解雇 に先立ち労働組合と協議する義務が規定されているような場合は,労働組合と協議せずに行った整理解雇は原則として無効となります。
 事前協議義務を定める労働協約がない場合であっても,裁判所は,使用者は労働者に対して整理解雇の必要性と時期・規模・方法について説明を行った上で,誠意を持って協議すべき信義則上の義務を負うと考える傾向にあります。
 使用者が労働者の理解を得るための努力をどの程度したのかが問題となるわけですが,説明に十分な時間をかけず,資料の提示を行わず,抽象的な説明に終始したような場合には,この要素を満たさないと判断されることになります。
 整理解雇を検討せざるを得ない場合には,労働者に対し,人員削減が必要な理由,時期・規模・方法等について,できる限りの説明をして下さい。
 その説明ができない段階では,未だ整理解雇に踏み切る準備ができていないと考えるべきでしょう。

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③人選の合理性については,どのようなことを検討する必要がありますか?

2015-10-15 | 日記

③人選の合理性については,どのようなことを検討する必要がありますか?

 ③人選の合理性に関しては,人選基準そのものの合理性と実際のあてはめの合理性を検討する必要があり,その基準は使用者の恣意が入らない客観的なものであることが必要です。
 人選基準を設けなかった場合や客観性・合理性を欠く人選基準に基づいて整理解雇 がなされた場合は,③人選の合理性を欠くと判断されることになります。
 まずは客観的で合理的な人選基準の設定を行い,人選基準に基づいて整理解雇の対象となる労働者を選定して,後日,訴訟になった場合には,客観的で合理的な人選基準に基づいて整理解雇を行ったことを説明できるようにしておいて下さい。

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②解雇回避努力については,どのようなことを検討する必要がありますか?

2015-10-15 | 日記

②解雇回避努力については,どのようなことを検討する必要がありますか?

 ②解雇 回避努力として,使用者は,整理解雇 を行うに先立ち,希望退職の募集,配転,出向,一時帰休などの他の手段によって整理解雇回避の努力をする信義則上の義務を負うと考えられており,他の手段を十分に検討せずにいきなり整理解雇を行った場合,解雇権の濫用と判断されるリスクが高くなります。
 解雇回避措置の「検討」すらしていないのでは,この要素が否定されてしてしまいますので,必ず解雇回避措置を検討して下さい。
 解雇回避措置を検討したものの,現実には解雇回避措置を取ることができないというのであれば,解雇回避措置が取れない合理的理由を説明できるようにしておくべきでしょう。

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①人員削減の必要性については,どのようなことを検討する必要がありますか?

2015-10-15 | 日記

①人員削減の必要性については,どのようなことを検討する必要がありますか?

 ①人員削減の必要性は,整理解雇 が有効とされる上で必要不可欠の要素であり,他の要素の要求水準を設定する役割も有しています。
 裁判所は,人員削減の必要性の有無について詳細に検討しますが,使用者の経営判断を尊重する傾向にあり,明白に人員削減の必要性がない場合を除けば,人員削減の必要性自体は肯定されるのが通常です。
 ただし,人員削減の必要性がそれ程高くないにもかかわらず実施された整理解雇は,②解雇回避努力が尽くされていないなどの理由から解雇 権の濫用と判断されることが多いため,人員削減の必要性の程度についても慎重に検討した上で,整理解雇に踏み切るかどうかを判断する必要があります。
 ①人員削減の必要性では,整理解雇の前後で新規採用を行っている事実が問題とされることが多く,整理解雇の有効性を判断する上で不利に斟酌されることがあります。

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整理解雇が解雇権の濫用に当たるかどうかは,どのような要素を考慮して判断されますか?

2015-10-15 | 日記

整理解雇が解雇権の濫用に当たるかどうかは,どのような要素を考慮して判断されますか?

 整理解雇 解雇 権の濫用(労契法16条)に当たるかどうかは,①人員削減の必要性,②解雇回避努力,③人選の合理性,④手続の相当性(整理解雇の4要素)を考慮して,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合に該当するかどうかが検討されるのが一般的です。
 最低限,人員削減の必要性を労働者に説明し,客観的な整理解雇基準を定めてから,当該基準に則って整理解雇する必要があります。
 中小企業では難しいかもしれませんが,整理解雇する前に,早期退職募集をすることが望ましいところです。

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