本件は,被告から採用についての内々定を得ていた原告が,被告から内々定の取消しを受けたことは違法であるとして,債務不履行又は不法行為に基づいて,被告に対し,損害賠償を請求した事案です。
本件内々定による労働契約の成立については否定されていますが,本件内定取消は,労働契約締結過程における信義則に反し,原告の期待利益を侵害するものとして不法行為を構成するとされ,慰謝料100万円,弁護士費用10万円,合計110万円の支払が命じられています。
本件内々定による労働契約の不成立については,通常の内定手続において行われることが行われていなかったことなどが理由とされています。
不法行為成立の理由としては,本件内々定取消しの直前まで新卒採用を断念しなかったこと,内々定取消しの具体的理由の説明が不十分だったこと,誠実な態度で対応しなかったことなどが挙げられています。
損害額については,①賃金相当の逸失利益については否定,②慰謝料については100万円を肯定,③就職活動費については否定,④弁護士費用は10万円を肯定,という内訳で,合計110万円が認められています。
内々定を出しただけでは労働契約が成立したとは言えない事案が多いと思いますが,採用応募者の就職が困難となる遅い時期に内々定を取り消した場合,紛争が生じる可能性が高くなります。
どうせ,内々定を取り消さなければならないのであれば,応募者が他の企業に就職しやすいような早い時期に取り消す必要があります。
内々定取消しの具体的理由の説明がないことが問題とされていますが,取消し時期が遅れれば遅れるほど,応募者のダメージは大きくなりますから,より具体的な説明(+何らかの金銭補償)が必要となると思います。
慰謝料の金額の根拠の中で,「原告の就職活動の状況及び現在も就職先が決まっていないこと」が挙げられていますが,まさにこの点が重要だと思います。
同日出された同地裁の判決で,他社の内定を得て就労できている応募者に対する慰謝料額は75万円であり,25万円の開きがあります。
実際問題としても,就職が決まった応募者から訴えられるケースは,余程内々定取消しのやり方がに問題があって恨みを買わない限り,それ程多くはないのではないでしょうか。
現実には,25万円という見かけ上の金額の開き以上に,大きな差が生じると思います。
応募者の内々定取消し後の他社への就職を,単なる結果論であるとして軽視するのではなく,「内々定を取り消さざるを得ないのであれば,せめて,他社に就職しやくなるようできるだけ配慮しよう,迷惑を少しでも少なくしよう。」と考える発想が重要となります。
藤田進太郎
本件内々定による労働契約の成立については否定されていますが,本件内定取消は,労働契約締結過程における信義則に反し,原告の期待利益を侵害するものとして不法行為を構成するとされ,慰謝料100万円,弁護士費用10万円,合計110万円の支払が命じられています。
本件内々定による労働契約の不成立については,通常の内定手続において行われることが行われていなかったことなどが理由とされています。
不法行為成立の理由としては,本件内々定取消しの直前まで新卒採用を断念しなかったこと,内々定取消しの具体的理由の説明が不十分だったこと,誠実な態度で対応しなかったことなどが挙げられています。
損害額については,①賃金相当の逸失利益については否定,②慰謝料については100万円を肯定,③就職活動費については否定,④弁護士費用は10万円を肯定,という内訳で,合計110万円が認められています。
内々定を出しただけでは労働契約が成立したとは言えない事案が多いと思いますが,採用応募者の就職が困難となる遅い時期に内々定を取り消した場合,紛争が生じる可能性が高くなります。
どうせ,内々定を取り消さなければならないのであれば,応募者が他の企業に就職しやすいような早い時期に取り消す必要があります。
内々定取消しの具体的理由の説明がないことが問題とされていますが,取消し時期が遅れれば遅れるほど,応募者のダメージは大きくなりますから,より具体的な説明(+何らかの金銭補償)が必要となると思います。
慰謝料の金額の根拠の中で,「原告の就職活動の状況及び現在も就職先が決まっていないこと」が挙げられていますが,まさにこの点が重要だと思います。
同日出された同地裁の判決で,他社の内定を得て就労できている応募者に対する慰謝料額は75万円であり,25万円の開きがあります。
実際問題としても,就職が決まった応募者から訴えられるケースは,余程内々定取消しのやり方がに問題があって恨みを買わない限り,それ程多くはないのではないでしょうか。
現実には,25万円という見かけ上の金額の開き以上に,大きな差が生じると思います。
応募者の内々定取消し後の他社への就職を,単なる結果論であるとして軽視するのではなく,「内々定を取り消さざるを得ないのであれば,せめて,他社に就職しやくなるようできるだけ配慮しよう,迷惑を少しでも少なくしよう。」と考える発想が重要となります。
藤田進太郎