「既発生の」賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件を教えて下さい。
「既発生の」賃金債権の減額に対する同意の意思表示は,既発生の賃金債権の一部を「放棄」することにほかなりません(北海道国際空港事件最高裁平成15年12月18日第一小法廷判決参照)。
労基法24条1項に定める賃金全額払の原則の趣旨に照らせば,既発生の賃金債権を放棄する意思表示の効力を肯定するには,それが社員の自由な意思に基づいてされたものであることが明確でなければなりません(シンガーソーイングメシーン事件最高裁昭和48年1月19日第二小法廷判決参照)。既発生の賃金債権を放棄する意思表示が,社員の自由な意思に基づいてされたものであることが明確なものではなく,社員の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したということができない場合には,既発生の賃金債権を放棄する意思表示としての効力を肯定することはできません。