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H社事件東京地裁平成22年4月9日判決(労経速2079-14)

2010-10-11 | 日記
本件は,被告と雇用契約を締結して労務を提供し解雇された原告が,被告に対し,解雇の無効を主張して,雇用契約上の権利を有する地位の確認を求め,賃金請求権に基づいて,平成19年10月から平成20年10月までの13か月分の賃金合計325万円,平成19年12月及び平成20年6月に支給されるはずであった業績給又は考課給40万円並びに平成19年8月までの給与から控除した69万9000円の合計未払賃金434万9000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年11月11日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払,平成20年11月から毎月25日限り25万円の割合による賃金の支払を求めた事案です。
本判決は,本件解雇の有効性を認め,請求の中心的部分については請求棄却としていますが,賃金から69万9000円の控除がなされた点については,原告の明示ないし黙示の承諾があったものとは認め難く,被告によって一方的になされた本件各家賃控除は賃金の全額払の原則(労働基準法24条1項本文)に反して認められないと判断し,原告の請求を認めています。

原告は問題行動が多かったため,解雇が有効と判断されましたが,そのような場合であっても,賃金の全額払は,当然,行わなければならないことに注意が必要です。
実務上多いのは,労働者の問題行動が酷いため解雇が有効であることに争いはない(あるいは労働者が自発的に退職した)ものの,残業代をしっかりと支払っていなかったため,割増賃金の請求を会社が受けるケースです。
たとえ問題社員であっても,労基法32条で定める時間を超えて残業すれば労基法37条に基づく割増賃金の請求ができることになります。
問題を起こした社員に対し,大金を支払うことに場合,残った社員の納得を得られないことになりかねません。
そのようなことがないよう,最低限,労基法等の法律は守るようにしなければなりません。
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