弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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労働時間を記載した社員の日記,手帳へのメモ等と残業代の請求

2013-12-10 | 日記

労働時間を記載した社員の日記,手帳へのメモ等によって,残業代の請求が認められることがありますか?

 使用者が労働時間管理を怠っている場合,残業代割増賃金)の請求をしようとする社員側としては残業時間の正確な立証が困難となりますが,使用者には労働時間の管理を適切に行う責務があること(平成13年4月6日基発339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」)もあり,裁判所は,直ちに時間外労働・休日労働の立証がなされていないとはせず,社員の日記,手帳へのメモ等の証拠から,時間外労働・休日労働時間を推認することができるかどうかが審理されるのが通常です。
 使用者としては,タイムカードのない会社で,入社直後から出社時刻と退社時刻の記録をメモ等に残してきた(と労働者が主張している)ケースも多くなっている現状(≒退職したら残業代を請求してやろうと考えながら,在職中は黙ったまま仕事を続け,残業している労働者が増えている現状)を,よく認識しておく必要があります。
 こういった社員は,在職している限りは残業代を請求してくる可能性が低いのですが,何らかの問題を起こして退職させられそうになったり,経営者や上司に嫌われたと感じて傷ついたりした途端,残業代の請求をしてくることになります。

 社員の日記,手帳へのメモ等は,実際の労働時間に合致した内容で記載されているとは限らず,後になってまとめて適当に作成された可能性もあり,残業代請求をする意図で労働時間を記載したとなると,いきおい労働時間を水増しして記載する動機が働くなど,それだけでは証明力が高いとはいえませんので,社員が作成したメモ等だけから労働時間を推認することができる事例はそれ程多くありません。
 しかし,社員の日記,手帳へのメモ等であっても,その記載内容が詳細なものだったり,全部又は一部が客観的証拠に合致していて矛盾点がないような場合は,そのメモ等により労働時間について一応の立証がなされていると評価できる場合もあります。
 これに対して使用者側がそれなりの反証できなければ,メモ等によって労働時間が推認され,残業代の支払を命じられるリスクが生じることになります。
 労働時間の管理を怠っていた使用者が,1年も2年も前の社員の時間外労働・休日労働時間について反論することは困難なことが多く,手間の割には反論が功を奏しないことも珍しくありません。

 なお,労働者の手帳等の記載の信用性が不十分な事案であっても,民訴法248条の精神に鑑み,割合的に時間外手当を認容することも許されるとして,労働者請求の時間外手当の額の6割を認容するのを相当とした裁判例もあります。
 どのようなイメージかというと,250万円の時間外手当が未払となっていると主張して労働者が訴訟を提起したのに対し,労働者の手帳等の記載の信用性が十分ではないとしつつ,裁判官が諸事情を検討し,150万円の時間外手当の支払を命じたというようなイメージです。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


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特例措置対象事業場の時間外労働時間

2013-12-10 | 日記

特例措置対象事業場では時間外労働時間をどのようにカウントすればいいのか教えて下さい。

 労基法施行規則25条の2は,小規模事業場における労働時間の特例を定めており,
 ① 物品の販売,配給,保管若しくは賃貸又は理容の事業
 ② 映画の映写,演劇その他興行の事業
 ③ 病者又は虚弱者の治療,看護その他保健衛生の事業
 ④ 旅館,料理店,飲食店,接客業又は娯楽場の事業
のうち,常時10人未満の労働者を使用するもの(特例措置対象事業場)
については,労基法32条の規定にかかわらず,1週間については44時間,1日については8時間まで労働させることができるとしています。
 特例措置対象事業場については,日曜日を法定休日として月~土に1日9時間ずつ労働させた場合,土曜日に4時間を超えて労働し始めた時点から週44時間超の時間外労働時間となります。
 1日8時間を超えて労働させた時間については,1日ごとに時間外労働としてカウントされていますので,週44時間を超えて労働させた時間には重複してカウントしません。

 日曜日 法定休日
 月曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 火曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 水曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 木曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 金曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 土曜日 9時間(時間外労働5時間)←週44時間超


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