Q22 紛争調整委員会から,「あっせん開始通知書」が会社に届きました。どのように対応すればいいでしょうか?
紛争調整委員会が労働局長の委任を受けて行う「あっせん」とは,当事者の間に弁護士等の学識経験者である第三者が入り,双方の主張の要点を確かめ,紛争当事者間の調整を行い,話し合いを促進することにより,紛争の円満な解決を図る制度です。
両当事者が希望した場合は,両者が採るべき具体的なあっせん案を提示することもあります。
東京労働局によると,あっせんには,以下のような特徴があるとされています。
① 労働問題に関するあらゆる分野の紛争(募集・採用に関するものを除く。)がその対象となります。
(例)解雇,雇止め,配置転換・出向,降格,労働条件の不利益変更等労働条件に関する紛争,いじめ・嫌がらせ等,職場の環境に関する紛争,労働契約の承継,同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争,その他,退職に伴う研修費用の返還,営業車等会社所有物の破損に係る損害賠償をめぐる紛争など。
② 多くの時間と費用を要する裁判に比べ,手続が迅速かつ簡便です。
③ 弁護士,大学教授等の労働問題の専門家である紛争調整委員会の委員が担当します。
④ あっせんを受けるのに費用はかかりません。
⑤ 紛争当事者間であっせん案に合意した場合には,受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力を持つことになります。
⑥ あっせんの手続は非公開であり,紛争当事者のプライバシーを保護します。
⑦ 労働者があっせんの申請をしたことを理由として,事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
次に,弁護士である私の目から見たあっせんの主な特徴は,以下のとおりです。
① あっせんに参加するかどうか,あっせん案に応じるかどうかは,当事者の全くの自由であり,強制力が全くない。
② 原則として1回の期日で終了してしまうため,あっせん案に応じるかどうか十分に検討することができない。
③ あっせんの費用が無料ということもあり,事件のスクリーニングが十分になされず,訴訟であれば到底認められないような請求を受けることも多い。
①強制力がないという特徴があるため,裁判外の和解交渉と同様,当事者双方が納得しないことには合意が成立せず,紛争が解決しないため,紛争解決機能は必ずしも高くありません。
②1回のあっせん実施日で終了するという特徴があるため,たった1回のあっせん実施日で落としどころが判断でき,話し合いがまとまるような比較的軽微な労使紛争でない限り,合意成立による紛争解決が難しいというのが実情です。
③事件のスクリーニングが不十分という特徴があるため,わざわざ時間を取ってあっせん実施日に出頭するだけの価値のない事案も散見されます。
あっせんには以上のような特徴があるため,会社側の採るべき対応としては,概ね,以下のとおりとなります。
① 労働者の請求に全く理由がないため,会社側は1円も解決金を支払う意思がないなど,全く譲歩の余地がない場合は,あっせんに参加しない旨記載した連絡票を紛争調整委員会宛,郵送又はFAXすることになります。
あっせんに参加しない理由が客観的にもっともな内容で,労働者の納得を得ることができる可能性がある場合は,その理由を会社意見欄に記入した上で,「会社意見等について申請人(労働者)に知らせることについて」欄の「可」を○で囲んで提出してもいいとは思いますが,万が一にも後日の訴訟等で不利な結果になることがないよう,弁護士に相談した上で記載すべきでしょう。
② 労働者の請求にそれなりの理由があり,あっせんで解決しておかないと,後日,労働審判を申し立てられたり,訴訟を提起されたりするリスクがあるため,ある程度の解決金を支払ってでも早期解決するメリットがあるような場合は,あっせんへの参加を検討すべきでしょう。
その場合,あっせんに参加する旨記載した連絡票を紛争調整委員会宛,郵送又はFAXすることになりますが,会社の主張を事前に提出する必要があります。
労働者の請求にそれなりの理由がある事案は,後日,訴訟等になる可能性が比較的高いので,主張内容,証拠の収集選定について,弁護士と協議して決めることがより重要となります。
しっかりとした書面さえ提出できれば,あっせん実施日当日は,代理人弁護士が同行する必要はないケースも多いものと思われますが,不安なようでしたら,弁護士に代理人として同行するよう相談してもいいかもしれません。
ただ,弁護士費用を支払ってでも代理人弁護士に同行してもらわなければならないような事案は,そもそも,簡易迅速な紛争解決手続であるあっせん手続にはなじまない可能性もあると思います。
落としどころが微妙な事案については,一定金額以上の解決金は支払わないことを弁護士に相談して事前に決めてからあっせん実施日に臨み,その金額以下であれば合意を成立させ,その金額を超えなければ合意が成立しないようであれば合意不成立のまま,あっせん手続を打ち切ってもらえばいいのではないでしょうか。
弁護士 藤田 進太郎
紛争調整委員会が労働局長の委任を受けて行う「あっせん」とは,当事者の間に弁護士等の学識経験者である第三者が入り,双方の主張の要点を確かめ,紛争当事者間の調整を行い,話し合いを促進することにより,紛争の円満な解決を図る制度です。
両当事者が希望した場合は,両者が採るべき具体的なあっせん案を提示することもあります。
東京労働局によると,あっせんには,以下のような特徴があるとされています。
① 労働問題に関するあらゆる分野の紛争(募集・採用に関するものを除く。)がその対象となります。
(例)解雇,雇止め,配置転換・出向,降格,労働条件の不利益変更等労働条件に関する紛争,いじめ・嫌がらせ等,職場の環境に関する紛争,労働契約の承継,同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争,その他,退職に伴う研修費用の返還,営業車等会社所有物の破損に係る損害賠償をめぐる紛争など。
② 多くの時間と費用を要する裁判に比べ,手続が迅速かつ簡便です。
③ 弁護士,大学教授等の労働問題の専門家である紛争調整委員会の委員が担当します。
④ あっせんを受けるのに費用はかかりません。
⑤ 紛争当事者間であっせん案に合意した場合には,受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力を持つことになります。
⑥ あっせんの手続は非公開であり,紛争当事者のプライバシーを保護します。
⑦ 労働者があっせんの申請をしたことを理由として,事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
次に,弁護士である私の目から見たあっせんの主な特徴は,以下のとおりです。
① あっせんに参加するかどうか,あっせん案に応じるかどうかは,当事者の全くの自由であり,強制力が全くない。
② 原則として1回の期日で終了してしまうため,あっせん案に応じるかどうか十分に検討することができない。
③ あっせんの費用が無料ということもあり,事件のスクリーニングが十分になされず,訴訟であれば到底認められないような請求を受けることも多い。
①強制力がないという特徴があるため,裁判外の和解交渉と同様,当事者双方が納得しないことには合意が成立せず,紛争が解決しないため,紛争解決機能は必ずしも高くありません。
②1回のあっせん実施日で終了するという特徴があるため,たった1回のあっせん実施日で落としどころが判断でき,話し合いがまとまるような比較的軽微な労使紛争でない限り,合意成立による紛争解決が難しいというのが実情です。
③事件のスクリーニングが不十分という特徴があるため,わざわざ時間を取ってあっせん実施日に出頭するだけの価値のない事案も散見されます。
あっせんには以上のような特徴があるため,会社側の採るべき対応としては,概ね,以下のとおりとなります。
① 労働者の請求に全く理由がないため,会社側は1円も解決金を支払う意思がないなど,全く譲歩の余地がない場合は,あっせんに参加しない旨記載した連絡票を紛争調整委員会宛,郵送又はFAXすることになります。
あっせんに参加しない理由が客観的にもっともな内容で,労働者の納得を得ることができる可能性がある場合は,その理由を会社意見欄に記入した上で,「会社意見等について申請人(労働者)に知らせることについて」欄の「可」を○で囲んで提出してもいいとは思いますが,万が一にも後日の訴訟等で不利な結果になることがないよう,弁護士に相談した上で記載すべきでしょう。
② 労働者の請求にそれなりの理由があり,あっせんで解決しておかないと,後日,労働審判を申し立てられたり,訴訟を提起されたりするリスクがあるため,ある程度の解決金を支払ってでも早期解決するメリットがあるような場合は,あっせんへの参加を検討すべきでしょう。
その場合,あっせんに参加する旨記載した連絡票を紛争調整委員会宛,郵送又はFAXすることになりますが,会社の主張を事前に提出する必要があります。
労働者の請求にそれなりの理由がある事案は,後日,訴訟等になる可能性が比較的高いので,主張内容,証拠の収集選定について,弁護士と協議して決めることがより重要となります。
しっかりとした書面さえ提出できれば,あっせん実施日当日は,代理人弁護士が同行する必要はないケースも多いものと思われますが,不安なようでしたら,弁護士に代理人として同行するよう相談してもいいかもしれません。
ただ,弁護士費用を支払ってでも代理人弁護士に同行してもらわなければならないような事案は,そもそも,簡易迅速な紛争解決手続であるあっせん手続にはなじまない可能性もあると思います。
落としどころが微妙な事案については,一定金額以上の解決金は支払わないことを弁護士に相談して事前に決めてからあっせん実施日に臨み,その金額以下であれば合意を成立させ,その金額を超えなければ合意が成立しないようであれば合意不成立のまま,あっせん手続を打ち切ってもらえばいいのではないでしょうか。
弁護士 藤田 進太郎