パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

IPCC AR4 WGII

2007-04-08 21:10:00 | 環境ネタ
 なんかWGI(Physical Science編)よりも騒ぎが大きくないような気もしないでもないのですが、読んでみました、金曜公開の影響編Summary for Policymakers。んでそれも納得というか、unequivocalだとかvery high confidenceだとかを連発されてクラクラされたWGIに比べてちょっとボヤケタ印象。なんか表現を弱めるように政治的にゴジャゴジャ揉めてたみたいですね。いやこんなマーク→***で確からしさをあらわしてはいますけど。

んで勝手に面白いと思った点をいくつか。
○現在進行形で影響が出ています ←って点、改めて
○氷河や雪の水源機能が低下し、世界の1/6の人口が影響を受ける

○生態系の炭素吸収力は(80%以上の確率で)今世紀前半にピークを迎え、その後減少し、現状が続けば逆に排出に転じる。
 いわゆるティッピング・ポイントor Point of No Return(自然のバランスで吸収<排出になってしまって、温暖化傾向に歯止めがかからなくなる)の話しだと思うんですが(違うかな(・ ・?)※)、NYに来た時「Long IslandがShort Islandになる」というびみょーなネタを披露したNASAのハンセンは後10年ってよく言ってましたけどね。まぁ話半分だと思ってたのですが、10年後じゃなくてもその後30年ぐらいしかないんですかと
※追記違いました 「生態系」ではなく「陸上生態系」だけで、海があるのでこのパラだけでは話が終わらないってことです(コメント欄参照)。

○(50%以上の確率で)低緯度地域で食糧生産が減少する。世界的には、温度上昇が1-3℃までは上昇し、以降減少する。
○(80%以上の確率で)継続的な温暖化で魚の分布が変化し、漁業に悪影響をもたらす。
 うーん これって太平洋やカリブの島国にとっては踏んだり蹴ったりではないかというか、「(90%以上の確率で)特に脆弱」とか同情!?してくれるんなら金をくれと言いたくなるでしょうね。食糧の需給事情の逼迫は当然日本も他人事ではないですけど。お魚のそれはダイレクトだしぃ。

○Very Likely(90%以上の確率)で過小評価としつつ、温暖化のネットコストの予測の2005年の現在価値
 ・平均 US$ 43 /tC (=US$ 12 /tCO2) 
 ・幅 US$ 10 /tC (=US$ 3 /tCO2) ~ US$ 350/tC (=US$ 130 /tCO2)
ですって。まぁそんなものかという気がしますけど、オーバーアロケーションで価格が暴落しているEU-ETsの第一期の価格破壊振りが改めて露わになってる気が。だって現在 0.83 EUR / tCO2(4/5)ですよ(第2期は15EURぐらい)。今度はちゃんとやりましょうね。

○北大西洋の海流の深層循環が大規模に阻害されることは21世紀中には90%以上の確率で起こらない。ただ循環が遅くはなる。
 まぁ半分ネタというか、映画のDay After Tomorrowの元ネタtheoryは今からする必要はないってことです(残りの10%が気になるけど)。グリーンランドの氷が融けて真水が大量供給されるって話がその根拠ですが、関連で数百年かけて海面上昇が5-7m云々というのが前のパラに書いてあるので、ファンタジーと切って捨てて忘却のかなたってわけにはいかなさそうです。