昨日判決が出たMassachusetts v. EPAですが(判決文、今朝のNYT一面トップ記事Justices Rule Against Bush Administration on Emissions)、真面目な反応をするには内容も分量も全くブログ向きじゃないのでファーストインプレッションというか感覚論を。
一応さらっと中身を説明すると、Clean Air Actに基づく新車温室効果ガス規制をしない、としたEPAの2003年の決定に12州がその撤回を求めて提訴して、D.C. Circuitでは負けたけど、昨日の最高裁判決でそれがひっくり返ってEPAが再考を迫られることになったのでした。
っとこれで終わってもいいのですが(笑)、一応争点にさらりと触れると、
①原告が裁判所で争える立場(原告適格)を有しているか
②EPAがClean Air Act上温室効果ガス(とりわけ二酸化炭素)を規制する権限を有しているか
③権限不行使はEPAの裁量の範囲内か
といったことで、最高裁判決は
①原告適格あり
②規制権限あり
③EPAの理由づけは違法、やり直せ
ってことになったのでした。5-4の判決で、①についてロバート主席判事の、②③についてスカリア判事の反対意見がついています。多数意見・反対意見とも本案(②③)についてはChevron Deferenceキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!という感じ(原審判決の結論がChevronに基づかない異様な判決だったんですよぉ)。率直にいうと、両反対意見の方が法律論として洗練されているのではないかとの印象を受ける人も多いだろう(含む私、深い論点まで達していますからね)というか、サスガChief Justiceというエクセレントな意見とTextualistの面目躍如といったスカリア判事の緻密な文理解釈は読んでいて面白い。とは言ってもそんな反対意見にも突っ込みどころは満載であって、脚注なんかでお茶を濁さずに多数意見のうち誰か(ブライヤーあたり)補足意見を書いておけばよかったのに、という気がします。
実は同級生の中には今回の裁判は(州側が)負けた方がいいんだ、という話があって、なぜかというと、州側が勝ってEPAが敗訴すると、再考の義務は行政府=ブッシュ政権だけど、EPAが勝訴すると、法解釈はそこで確定するので、残された手立ては法改正すなわち立法府の仕事になるっていう発想なんですね。民主党が両院とも多数派になっているということもありますが、こと環境政策に関して言うと、ブッシュ政権のそれ、特に温暖化政策は民主党だけでなく共和党のかなりの部分からも支持されていないので、立法府に委ねられたほうがいいというのも一理あるかとその話を聞いたときは思いました。が、昨日の判決でここまで原告側が完勝すると(実際大方の環境派の予想を超えたものだったんじゃないか。例えばコレ)、CAAで温暖化規制を実施できるという状態がデフォルトの状態になったわけで、CAAの直接規制を食らうぐらいならもうちょっと柔軟な制度、もっというと今議会で議論されてる排出量取引の方がいい、という事業者側の動きも想像に難くなく、要するにEPA敗訴ではありましたけど、立法府の活動も活発になるんじゃなかろうか、という印象を持ちました。段々反応が出揃ってくるとどういう動きになるか分かってくると思いますが、政治の動きは非直線的なので、突然ドドドドドっと動き出してもおかしくない状況に近づいたことは間違いないと思います。
あと全然別の点ですが、環境法におけるランドマーク・ケースというだけでなく、特に原告適格(standing)の部分でLaidlaw以来の重要判決になるわけで、standingを勉強しないJD生はいませんから、恐らく今後あらゆるロースクール生がこの判決を読むことになります。これって結構なことだというか、非常に間接的ですがこういう将来のlawyer達への教育効果が5年10年と経つと結構効いてくるかも。
本当言うと想像される影響というのは思いつくだけでも他にもじゃんじゃかあるのですが、まぁファーストインプレッションってことでこの辺で
追記:報道振り、NGOの反応等R氏さんが丁寧にまとめていますので、そちらもご参考に。
一応さらっと中身を説明すると、Clean Air Actに基づく新車温室効果ガス規制をしない、としたEPAの2003年の決定に12州がその撤回を求めて提訴して、D.C. Circuitでは負けたけど、昨日の最高裁判決でそれがひっくり返ってEPAが再考を迫られることになったのでした。
っとこれで終わってもいいのですが(笑)、一応争点にさらりと触れると、
①原告が裁判所で争える立場(原告適格)を有しているか
②EPAがClean Air Act上温室効果ガス(とりわけ二酸化炭素)を規制する権限を有しているか
③権限不行使はEPAの裁量の範囲内か
といったことで、最高裁判決は
①原告適格あり
②規制権限あり
③EPAの理由づけは違法、やり直せ
ってことになったのでした。5-4の判決で、①についてロバート主席判事の、②③についてスカリア判事の反対意見がついています。多数意見・反対意見とも本案(②③)についてはChevron Deferenceキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!という感じ(原審判決の結論がChevronに基づかない異様な判決だったんですよぉ)。率直にいうと、両反対意見の方が法律論として洗練されているのではないかとの印象を受ける人も多いだろう(含む私、深い論点まで達していますからね)というか、サスガChief Justiceというエクセレントな意見とTextualistの面目躍如といったスカリア判事の緻密な文理解釈は読んでいて面白い。とは言ってもそんな反対意見にも突っ込みどころは満載であって、脚注なんかでお茶を濁さずに多数意見のうち誰か(ブライヤーあたり)補足意見を書いておけばよかったのに、という気がします。
実は同級生の中には今回の裁判は(州側が)負けた方がいいんだ、という話があって、なぜかというと、州側が勝ってEPAが敗訴すると、再考の義務は行政府=ブッシュ政権だけど、EPAが勝訴すると、法解釈はそこで確定するので、残された手立ては法改正すなわち立法府の仕事になるっていう発想なんですね。民主党が両院とも多数派になっているということもありますが、こと環境政策に関して言うと、ブッシュ政権のそれ、特に温暖化政策は民主党だけでなく共和党のかなりの部分からも支持されていないので、立法府に委ねられたほうがいいというのも一理あるかとその話を聞いたときは思いました。が、昨日の判決でここまで原告側が完勝すると(実際大方の環境派の予想を超えたものだったんじゃないか。例えばコレ)、CAAで温暖化規制を実施できるという状態がデフォルトの状態になったわけで、CAAの直接規制を食らうぐらいならもうちょっと柔軟な制度、もっというと今議会で議論されてる排出量取引の方がいい、という事業者側の動きも想像に難くなく、要するにEPA敗訴ではありましたけど、立法府の活動も活発になるんじゃなかろうか、という印象を持ちました。段々反応が出揃ってくるとどういう動きになるか分かってくると思いますが、政治の動きは非直線的なので、突然ドドドドドっと動き出してもおかしくない状況に近づいたことは間違いないと思います。
あと全然別の点ですが、環境法におけるランドマーク・ケースというだけでなく、特に原告適格(standing)の部分でLaidlaw以来の重要判決になるわけで、standingを勉強しないJD生はいませんから、恐らく今後あらゆるロースクール生がこの判決を読むことになります。これって結構なことだというか、非常に間接的ですがこういう将来のlawyer達への教育効果が5年10年と経つと結構効いてくるかも。
本当言うと想像される影響というのは思いつくだけでも他にもじゃんじゃかあるのですが、まぁファーストインプレッションってことでこの辺で
追記:報道振り、NGOの反応等R氏さんが丁寧にまとめていますので、そちらもご参考に。