5月8日(土)、9日(日)と二日間に渡って、川口市立アートギャラリー・アトリアで開催されたワークショップに参加した。お題は「細密画を描こう」。本ギャラリーで開催中だった「見つめる」展(会期終了)に関連したイベントで、細密画の技法でデッサンを試みる講座だそうだ。
ろくすっぽデッサンなど出来ないのに何となく申し込んでしまったが、「当選しました」という通知ハガキが来た途端不安が押し寄せてきた。初心者はご遠慮下さい、とは書いてなかったものの、きっと上手い人が集まるんだろうなぁ。
あっという間にその日はやってきて、そういえばあのギャラリーのどこに実技指導が受けられるような部屋があるのだろう、と思いながらアトリアへ。
呑気に時間ギリギリに到着して受付を済ませると、何と先日「見つめる」展で拝見した野田弘志氏の展示室が教室であった。あの超絶写実作品に四方を囲まれて自分が絵を描くことになるなんて。
既に沢山人が集まっていて、各々画材やモティーフを持って机の間をわさわさ動いている。50代以上の方が多そうな印象だったが、一人ニット帽をかぶった若い男性がいる、と思ったらそれが今回講師を務められた日本画家の加藤丈史先生だった。勝手に年配の先生を想像していたもので。後でギャラリーのサイトを見たらちゃんと先生のプロフィールが載っていました。すみません。
さて、モティーフは、ギャラリー側が用意した貝殻、石、木の枝から選ぶことになっている。私はギリギリに行ったので余り選択の余地はなかったけれど、一つ、小ぶりで描きやすそうな巻貝を見つけてにんまり(もうこの時点でアティテュードが間違っています)。
がしかし先生は私のそんな魂胆を見抜いたのか、見回りに来られた時に「これはちょっと小さすぎるなぁ」と私の机からその貝殻をひょいと手に取られ、モティーフの並ぶ台へ持ち去ってしまった。残ったモティーフを覗き込んでいる先生に「貝がいいんですよね?」と聞かれた私は「なんでもいいです」とつい。そして先生が私の目の前に置いたのは、見た瞬間マイッタと思う石だった。
先生、これ描くんですか?(心のつぶやき)
ちなみにこの石は加藤先生が群馬の河原で拾ってきて下さったものだそうで、講座終了後お持ち帰りとなった(今も目の前にあります)。
描き始める前に配られたプリントには以下の要領が書いてあり、先生もホワイトボードを使って講義して下さった:
① 形をとる
② 陰影をつけて立体感を出す
③ 細部(質感・手触り・表情)を描く
④ 細部と全体のバランスを整える
⑤ ③と④を繰り返す
はい、わかりました。
とスラスラ描けるわけもなく。
昔、初めてちょこっとデッサンを習った時、まずはその独特の鉛筆の削り方に面喰った。ボルゾイ犬の鼻みたいに、長~く芯を尖らせる。カッターで削る際、余り力を入れるとボキッといってしまうので、不器用な私は一苦労だった。それに芯をどんどん粉々に削り落としていくのが、貧乏症の私には勿体なくも思え。。。
これもまだ削りが甘い
だが細密画のデッサンとなると、更に芯が細いことが要求される。カッターで尖らせた上に紙やすりをかける。鉛筆はほぼ垂直に立たせて描き、ほんの少し描いては先を紙やすりで研ぎ、また描いては削り、を繰り返す。芯の濃さも、今回は3B~2Hまでで、普通のデッサンで使う6Bのような濃いものは基本的に使わない。とにかく薄い色で、繊細に色を重ねていく。
と偉そうに説明してるが、私はといえば形を取るだけで悪戦苦闘。
ふう、と顔を上げれば、野田氏の「人間業とは思えない」(とは加藤先生の弁)素描作品が壁に並び、お隣の方をチラ見すれば、これまた素晴らしい巻貝が紙の上に出現している。
でもいい。上手く描けなくても私はこの、対象物と向き合って悶々とする時間が好きなのだから(いや、本当なんですよ~)。
最後は1人ずつ、出来上がった作品を先生が講評して下さって終わったが、とりわけ木の枝を描かれた方の作品は本当にお見事だった。モノクロームの筈なのに、薄茶色の木肌が感じられるのには驚くばかり。
最後に、今回指導して下さった加藤先生のグループ展があるそうなので、ご紹介させて頂きます。「若手日本画系作家の現況と、今後の展開の一端をご紹介する展覧会」だそうです。お近くにお住まいの方がいらっしゃったら是非。
日本の画展2010
2010年6月29日(火)-7月4日(日)
Gallery 健
さいたま市南区関1-1-3
048-837-5642
加藤丈史先生のプロフィール:
2002年 東京藝術大学大学院 修士課程日本画専攻修了
2008年 第34回春季創画展 初入選 以後09・10年入選/第35回創画展 初入選奨励賞受賞 以後09年入選
他、グループ展多数出展 / 現在、さいたま市在住 創画会会友
ろくすっぽデッサンなど出来ないのに何となく申し込んでしまったが、「当選しました」という通知ハガキが来た途端不安が押し寄せてきた。初心者はご遠慮下さい、とは書いてなかったものの、きっと上手い人が集まるんだろうなぁ。
あっという間にその日はやってきて、そういえばあのギャラリーのどこに実技指導が受けられるような部屋があるのだろう、と思いながらアトリアへ。
呑気に時間ギリギリに到着して受付を済ませると、何と先日「見つめる」展で拝見した野田弘志氏の展示室が教室であった。あの超絶写実作品に四方を囲まれて自分が絵を描くことになるなんて。
既に沢山人が集まっていて、各々画材やモティーフを持って机の間をわさわさ動いている。50代以上の方が多そうな印象だったが、一人ニット帽をかぶった若い男性がいる、と思ったらそれが今回講師を務められた日本画家の加藤丈史先生だった。勝手に年配の先生を想像していたもので。後でギャラリーのサイトを見たらちゃんと先生のプロフィールが載っていました。すみません。
さて、モティーフは、ギャラリー側が用意した貝殻、石、木の枝から選ぶことになっている。私はギリギリに行ったので余り選択の余地はなかったけれど、一つ、小ぶりで描きやすそうな巻貝を見つけてにんまり(もうこの時点でアティテュードが間違っています)。
がしかし先生は私のそんな魂胆を見抜いたのか、見回りに来られた時に「これはちょっと小さすぎるなぁ」と私の机からその貝殻をひょいと手に取られ、モティーフの並ぶ台へ持ち去ってしまった。残ったモティーフを覗き込んでいる先生に「貝がいいんですよね?」と聞かれた私は「なんでもいいです」とつい。そして先生が私の目の前に置いたのは、見た瞬間マイッタと思う石だった。
先生、これ描くんですか?(心のつぶやき)
ちなみにこの石は加藤先生が群馬の河原で拾ってきて下さったものだそうで、講座終了後お持ち帰りとなった(今も目の前にあります)。
描き始める前に配られたプリントには以下の要領が書いてあり、先生もホワイトボードを使って講義して下さった:
① 形をとる
② 陰影をつけて立体感を出す
③ 細部(質感・手触り・表情)を描く
④ 細部と全体のバランスを整える
⑤ ③と④を繰り返す
はい、わかりました。
とスラスラ描けるわけもなく。
昔、初めてちょこっとデッサンを習った時、まずはその独特の鉛筆の削り方に面喰った。ボルゾイ犬の鼻みたいに、長~く芯を尖らせる。カッターで削る際、余り力を入れるとボキッといってしまうので、不器用な私は一苦労だった。それに芯をどんどん粉々に削り落としていくのが、貧乏症の私には勿体なくも思え。。。
これもまだ削りが甘い
だが細密画のデッサンとなると、更に芯が細いことが要求される。カッターで尖らせた上に紙やすりをかける。鉛筆はほぼ垂直に立たせて描き、ほんの少し描いては先を紙やすりで研ぎ、また描いては削り、を繰り返す。芯の濃さも、今回は3B~2Hまでで、普通のデッサンで使う6Bのような濃いものは基本的に使わない。とにかく薄い色で、繊細に色を重ねていく。
と偉そうに説明してるが、私はといえば形を取るだけで悪戦苦闘。
ふう、と顔を上げれば、野田氏の「人間業とは思えない」(とは加藤先生の弁)素描作品が壁に並び、お隣の方をチラ見すれば、これまた素晴らしい巻貝が紙の上に出現している。
でもいい。上手く描けなくても私はこの、対象物と向き合って悶々とする時間が好きなのだから(いや、本当なんですよ~)。
最後は1人ずつ、出来上がった作品を先生が講評して下さって終わったが、とりわけ木の枝を描かれた方の作品は本当にお見事だった。モノクロームの筈なのに、薄茶色の木肌が感じられるのには驚くばかり。
最後に、今回指導して下さった加藤先生のグループ展があるそうなので、ご紹介させて頂きます。「若手日本画系作家の現況と、今後の展開の一端をご紹介する展覧会」だそうです。お近くにお住まいの方がいらっしゃったら是非。
日本の画展2010
2010年6月29日(火)-7月4日(日)
Gallery 健
さいたま市南区関1-1-3
048-837-5642
加藤丈史先生のプロフィール:
2002年 東京藝術大学大学院 修士課程日本画専攻修了
2008年 第34回春季創画展 初入選 以後09・10年入選/第35回創画展 初入選奨励賞受賞 以後09年入選
他、グループ展多数出展 / 現在、さいたま市在住 創画会会友