l'esquisse

アート鑑賞の感想を中心に、日々思ったことをつらつらと。

あおひー個展 「すくいとる」

2010-05-26 | アート鑑賞
antique studio Minoru 2010年5月1日(土)-5月5日(祝・水)



ゴールデン・ウィーク真っ只中の5月3日にあおひーさんの個展、「すくいとる」を拝見しました。すぐに感想を書かせて頂くつもりだったのに、観に行った翌日の家丸ごとの燻蒸作業(結構大変)、その翌日の大掃除(更に大変)とタイミングを逸し、その後もドタバタして、はたと気づいたら5月も終盤という事態に愕然(ダメな私)。

今頃になって逆に失礼かもしれないと思いつつ、やはり自分用のアート鑑賞記録として残しておきたいと、あの日撮った写真の画像をPCに取り込んだりしていた矢先に、あおひーさんからご丁寧なお礼状と、作品をアレンジした素敵なしおりが!

 勿体なくて、しおりにはできません。

これからの季節にぴったりの、情緒あふれる作品。きっと雨の降る日に手に取ったら、しっくりと心に染みいることでしょう。あおひーさん、いつも細やかなお心遣い、本当にありがとうございます!

さて、個展「すくいとる」。経堂の駅から商店街を入ってすぐのその会場は、とても可愛らしいギャラリーでした。



扉を開けて「こんにちは~」と入っていくと、あおひーさんがちょうど先客の方々に作品の説明をされているところでした。

まずは作品を、と入口付近の壁に目をやると、昨年のグループ展で拝見したことのある作品が数点並んでいて、季節が異なるせいか、自分の心理状態のせいなのか、それらも少し異なって観えるから不思議でした。淡い風景に信号が浮かぶ『無題2』はやっぱり私のお気に入りです。

全体を見渡してみてまず思ったのは、モノクローム、カラー共に「黒」の存在感。目黒川に浮かぶ桜の花びらを撮った『限界線』は夜空にばらまかれた星くずのようだし(そいうえば今年の桜の花びらは、何だか白っぽかったなぁ、などと思いつつ)、黒い背景に赤いライトが連なって浮かぶ作品は色の対比にインパクトがありました。

そして、和紙に印刷したという一連の作品群。まるで銀河に浮かぶ惑星のようにも見えますが、全てグラスの中に入った水と氷を撮ったものだそうです。撮影時、少し酩酊状態だったりするそうですが、このような着眼点はさすが。

勿論ほんわりしたカラー作品もあり、椿をモティーフにした『椿(PINK&GREEN)」は色合いが本当に可憐で、今回とても人気があったそうです。

ところで、展示室のパネルにあおひーさんの解説があり、写真についてよく使われる「風景を切り取る」という表現に違和感を覚えていた、というくだりに興味を引かれた私。あおひーさんに「そもそもなぜこのようなピントをぼかした作品を撮るようになったのか」「どのようにしてその手法が出来上がったのか」と質問攻めに。。。

お答えによると(私の理解では)、デジカメ全盛で誰もが美しく写真を撮れるこの時代に、写真の作品でどのように個性を出し、識別化してもらえるか、ということがまず背景にあったとのこと。そしてぼかしのテクニックは、テクノのDJデッキの操作にヒントがあり(テクノもお好きだったのですね~♪)、本来カメラのマニュアルにはない操作で撮ってみたところ、期待していた通りの今の作風が誕生したそうです。

ひょいとポケットから取り出して見せて下さったカメラはとてもコンパクトで、そこからこのようなアーティスティックな写真作品が生み出されているなんて、改めて驚きです。

そして、いわば「切り取る」ことに違和感を覚えて生まれた「すくいとる」という個展のタイトルは、あおひーさんの柔らかい感性にぴったりだと思いました。何というか、私を含め普通の人が見落としてしまうような日常の中から、あおひーさんは何かをすくいとっているのだ、と。

今日もあおひーさんの感性は、あの小さなカメラを通して何かを捕えていることでしょう。次回はどのような世界を拝見できるのか、また楽しみに待ちたいと思います。

☆あおひーさんご自身が今回の個展の解説をされている記事をリンクさせて頂きます→こちら