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**アカシアの木蔭で**

流れていく時間と逆らわずに流れていく自分を、ゆっくりペースで書いて行こうと思います

覚えたのかい?

2008年07月26日 | 病棟
私は99歳の菊さんが大好きで、
激動の時代を生きてきた彼女を尊敬しています。
だから心を込めて、「わたしのおばあちゃん」と呼びかけています。
菊さんは 「・・・・ふ、ふ、ふぁあい。」と10秒後に返事をくれます。
ちょっぴり恐竜のような反応の遅さですが・・。

ところが今日のこと。
つい、「○○菊さん」と本名で呼びかけたところ、
菊さんったら ふぉっふぉっふぉっと笑った後
「覚えたのかい?」って言ったんです。
・・・・・・もしかして、名前を覚えられないから「私のおばあちゃん」と呼んでいたと思ってたの???
ち・が・い・ま・す!!!ってば!!!!!
・・・もしかして返事にかかる10秒は、
「どうしたもんだか・・」という心の逡巡だったの???

お年寄りってこんなもん、なんて決め付けてると
見落とすことが出てきますね。


「の」って、変な名前だねえ

2008年02月04日 | 病棟
99歳の菊さんの記憶は 数分間だけ有効です。
でも 菊さんはとても可愛くて
象さんの様な優しい目をしていて、
気持ちが通じるので 病棟のアイドル。

菊さんに 誰が名前を覚えてもらえるか
今日はベッドサイドに4人が集まりました。
「菊さん、私はI子、分かった?」
「・・・はあ~い、I~子さん」
「菊さん、私はのり子、のりちゃんです。
 いつも来るよね?知ってるよね?」
「…一回ぐらい、会ったようなあ…」
「…昨日も今日も 毎日のように面倒見てるでしょうよ…(がっくり)」

「ねえ、私は誰?」
「・・・・・・・」
「I…だよっ!!思い出してっ!」と、助手さんの応援が入ります。
「…I…子?」
「そうそう♪菊さん、大~好き♪」

「じゃあ、私は?」
のりちゃんが尋ねました。
菊さん、固まっています。…5分経過…

「菊さん、の… だよっ! の… なんだっけ?」あやちゃんの応援。

「の…、変な名前だねえ。『の』 だけなんて」

のりちゃん、「…いいもん、どうせ私は 『の』 だよ。」

すっかりいじけてしまいました。
みんなは大爆笑。

究極の脅し文句

2007年10月02日 | 病棟
タミさんは寝たきりの期間が長く、お尻に褥創(床ずれ)ができ
それが悪化したので、入院してきました。
それだけなら往診・訪問看護で対応予定でしたが、
家族が介護に疲れたのか
「胸痛を訴えている」といって救急車を呼び
休日に救急搬入だったのです。
来て見れば心電図・X-P異常なし。
熱はあるものの、本人けろっとしていました。
(休日ならば 先生もとりあえず入院させてくれるに違いない)
そんな 家族の思惑が80%感じられるいきさつ。

タミさんは気難しい。
気に入らないと「痛い、痛い!痛いわよっ!」と大声を上げます。
まだボタン外しただけですけど・・・と突っ込みたくなるけど
認知症もあるしね、高齢だから我慢我慢。
最初のうちは いつも顔をしかめて文句ばかりだったけれど
最近やっと慣れて打ち解けてきたのか
ふっと笑顔を見せてくれることも増えてきました。

昨日、世間話をしながらオムツ交換をしていた時のこと。
タミさん機嫌よく
「あたしはね、ここの病院が気に入ったから
 暫く面倒見てもらうことにしたよ。
 よろしくね。」
なんて言ってます。
あやちゃんが優しく握手してやりながら
「でも体交は厳しくやりますよ~。お尻が治らないからね」と言うと

「そんなこと言うと あの世で可愛がってあげないからねっ!!!」

と睨まれました。
「・・・・まいりました」
あの世じゃ タミさんは間違いなく先輩だもんね。
究極の脅し文句に 負けちゃったあやちゃんでした。

「寝てる場合じゃ ねえっ!!!」

2007年09月13日 | 病棟
申し送り時、夜勤さんがやけに疲れていたので
「何かあったの?」と聞いたら、そう答えました。

「・・・一体 何よ?」
「Nさんがね、「寝てる場合じゃねえっっ!!」って叫びながら 
 夜中の3時にに 廊下 這ってたんだよ・・・・」
「ええっ、寝たきりでベッドから動けないはずじゃん!」
「それがさ、職人で鍛えた腕力って言うのか
 考えられない力でベッド柵越えて
 廊下を這っていたんだよ。
 どこを目指していたのか 力強く ぐいぐい進んでたよ・・・」

 
彼女は 引き止めて興奮させたら 
他の患者さんの安眠を妨げると思って
エレベーターホールに続く廊下の端に 長いソファを移動して
そこで成り行きを見守ったそうです。
・・・仮眠 無し。
明け方になって 疲れて廊下の途中で力尽きて寝込んだNさんを
ベッドに引きずり戻した、と 大層疲れた顔で報告がありました。

・・・お疲れ様でした。
ゆっくり 夜勤明けを楽しんで寝てね。

今日の与ひょうさん

2007年03月15日 | 病棟
今日はずーっと寝ていました。
声をかけても返事もせず、御飯の時だけ食べさせてもらって。
大人しい一日でした・・・最終ラウンド(見回り)までは。

記録もあらかた終わって 
最後に熱の出ている患者さん(熱発者と呼んでいます)の再検や
吸引、点滴と尿のIN-OUTのチェックをするのが
最終ラウンドです。
穏やかな一日を終えようとしている私の視界の隅を
ナニモノかの影が横切りました。
(げげっ!誰・・・って、与ひょうさんしかいない!!)
慌てて駆け寄ると、与ひょうさんパジャマの上着に
オムツ一丁です。
それも よく見ると横チンはみ出ています!!!!
・・・あああ・・・・
とりあえず部屋に誘導。
モノをきちんとオムツ内に片付けてから他室を回ります。

「さっき、爺さんが見回りに来たよ。
 なんだか ぷらぷらさせながら 各部屋巡回したみたいだよ」
うちは皆さん高齢。人生経験も豊富。
横チン・はみ出しチンなんかにゃ、びくともしません。

でもね、あやちゃん、あなたはまだ23でしょ?
げらげら笑ってちゃ いけません。
顔赤らめて可愛く「キャ♪」位言わなくちゃ。
深く心配した おばさんのマムでした。

与ひょうさんの脱走

2007年03月13日 | 病棟
与ひょうさん 94歳。発熱と脱水で入院。
WBCは正常値だけどCRPが二ケタ、た、高い!
高齢なので、白血球の生産が炎症反応に追いつかないんだろう。

呼びかけにも反応が鈍く
御歳を考えると もしかしたら逝っちゃうかも・・状態。
点滴しても抗生剤使っても 意識レベルは変わらない。

それがやっと全介助で食事が取れるところまで回復。
口元に持っていくと口を開ける。
雛鳥の反射のように。 
でも、相変わらず発語もないし ただ天井を見てじっとしている。

その与ひょうさんが、夕食時ベッドにいない!!!
・・ド、ド、どういうこと?!
誘拐?まさか 神隠し?!
スタッフ一同パニックになり、捜索開始。
ここは2階、非常階段には重い鉄のドアがついている。
エレベーターは動いていない。
大体、歩けるはずが無い!!!

1階で厨房のおばちゃんが教えてくれた。
なんだか電気治療室に人影があった様な気がする、って。
慌てて走った私たちの見たものは・・・・。

おむつ一丁でマッサージベッドに横になってる 与ひょうさん。
私たちに気付くと 手を挙げて
「おう」だって。
初めて聞いたよ、与ひょうさんの肉声。
あまりのことに同僚の紀ちゃん、笑いが止まらず訊ねる。
「どうやってきたのよ、ここに」

「階段下りてきたぞ。
 いろいろボタン押したけど ちゃんと動かないぞ、このベッド」

ちゃんと回復のステップ順に踏んでよね。
一足飛びに健康になられると あたしたち附いていけないよ。



老人の虐待~めりるさんへ~

2007年02月01日 | 病棟
お友達、辛い思いをされたんですね。
誰からも構われなくなることは
人間性までも否定されたように きついと思います。
子供のいじめでも 「無視・しかと」が
一番心を傷つけるもんね。
小さな子供のことならば、世の中も大声で訴えるけど
お年寄りや病人のことになると トーンダウンします。
(病人抱えて大変だから、しょうがない)
(介護は犠牲が大きくて 投げ出したくなって当然)
そんな 同情で誤魔化していいとは思いません。
これから どんどん高齢者が増え、
反対に介護する手が減っていくのが 目に見えています。
こんな事例が珍しくなくなるのかもしれません。

少子化対策も介護保険も年金問題も
みんなこんなところに繋がってくるのね。
これからの日本はどうなっていくのか・・・。

老人に対するネグレスト

2007年01月28日 | 病棟
昨夜遅く入院してきたおじいちゃん。
訪室して 驚きました。
まるで浮浪者のようなのです。
・・・確か 息子・娘が付き添ってきてたよね?

主訴は ご飯が食べられなくなったこと。
バイタルも安定してるし、それでは 身体保清から始めましょうか。
まず 手浴。手を握って話がしたいから。
まっ茶色に濁るお湯。
顔中に伸びきった髭は・・・
「お髭は伸ばしているの?それとも伸びちゃったの?」
こくりと頷く。丁寧に剃刀をあてていく。
それから 全身清拭に取り掛かるが、服の下は痣や傷だらけ。
一体何度転んだんだろう。髪の中にも切れた後がある。
お尻には硬くなったうんちが お団子になってこびりついている。
赤黒く汚れた皮膚は ちょっとやそっとでは綺麗にならない。
何度もお湯を熱いものに換えながら 落としていく。

一時間格闘して 臭いは薄くなった。
こざっぱりして 別人のようだ。
よし、これで外来の胃カメラに出せる。

検査終了。胃に異常なし。
気になることを外来婦長が言っていた。
「ガスコンドロップをね、惜しむように最後の一滴まで啜ってた」
「食べられない」主訴に 違和感を覚える。
もしかして何日も食べさせてもらってないのかもしれない。
食事をゆるめの全粥キザミ食にしてもらい、
食事介助で観察する。

・・全量摂取。菜っ葉もかまぼこもお澄ましもむせない。
それより 私の胸が詰まったのは、
ゆっくり話しかけながら食べさせていたら
おじいちゃんの瞳から涙が流れていたことだ。
鼻すすりながら 食べてる。
お腹がすいていたのに 自力で食べられなかったのね。
誰も手伝ってくれなかったのね。

怒りを家族に向けた私の発言に、助手さんが なだめてくれる。
「子供たちだって 一緒に暮らしていなければ
 助けられないことが多いんだよ。
 老夫婦二人暮しの危険を掬い取れない社会が悪いんだよ。
 だから、この状態も受け入れようよ。」

深呼吸して いつものスマイルに戻る。

放置は ネグレストと呼ばれるれっきとした虐待だと
社会は家族はきちんと分かっているのだろうか。
弱者を救い上げられない社会は
責任の曖昧な虐待を行なっているのだと私は思っている。

超温厚と言われている私の憤り、察してください

で、でた~~っ!!

2007年01月23日 | 病棟
声だけですが かなりはっきり。

助手さんと並んで患者さんの横にしゃがみこみ
慰めていたんです。
今朝早く 他院に入院していた旦那さんが亡くなって
オロオロしていたから。

そうしたら 助手さんと私の間から
はっきりとした声が 聞こえたの。
内容は はっきりしないけれど
人の声が 会話に参加してきた。

「マムさん、ポケットにラジオ入れてるの?」
と聞かれたくらい 鮮明な話し声でした。
勿論 ラジオなど持っていないし
TVもついていない。
他に音源は無い状況でした。

その場は曖昧に済ませ、後で アレが心霊現象だよって
助手さんに教えると
そんな体験は初めての助手さんは きゃ~と悲鳴を上げました。

誰だったのかな?
でも心配してくれたのかも知れないし
嫌な雰囲気が漂わなかったので
悪いものではなさそうです。

・・・触ったねぇ?

2006年12月02日 | 病棟
セクハラ、病院でもたまにあるようです。
昼休みにコーヒー飲みながら 大爆発。

「あのさあ、訪問看護先のじいちゃんが
 こちらです、よく来てくれました。どうぞどうぞ、とか言って
 案内をする振りして腰とお尻に手を置いて来るんだよ~!!
 最近は後ろを見せないようにしてる」
「ちょっと手相見るとかいって、手をしつこく握られたり・・」
「え~それくらいましだよ。私なんか体交する時に
 体を横向きに支えてる隙に、白衣の袖口からブラの肩ひも
 ひっぱられた」
「きゃ~~~~~!!!」
「ドカンと告発します。両手に点滴持って歩いてたら
 すれ違いざま じいさまに下撫でられた」
「おしり?」
「違う。ダイレクトに 前」
「ぎゃああ~!!!!!!」
「半端に枯れてる年寄りは 困るよねえ。抗議しても聞こえない振りされたり」

笑ったり怒ったりしながら 完全に聞き役のわたし。

やっぱり女の色香に欠けているんだろうか・・。