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**アカシアの木蔭で**

流れていく時間と逆らわずに流れていく自分を、ゆっくりペースで書いて行こうと思います

鈴の音 Part2

2011年03月14日 | 病棟

以前に 幽かな鈴の音 と題して 怖い体験を書きました。

聞こえるのは私ともう一人だけ、他のスタッフからは

気のせいだと信じてもらえませんでした。

 

それがね、一週間に二人亡くなった時、おむつ交換中に助手さんとナースが

はっきり チリ~ン…チリ~ン…と聞いたそうです。

「マムさんが言ってたの、ほんとだった!!!

 お遍路さんの鈴みたいにチリ~ンチリ~ン聞こえた!!怖~~っ!!」

 

あの世逝きの渡し舟は三人乗り、だから続けて逝ってしまう。

あの音は、渡し守が手首に付けている鈴なんだよ、きっと。

 

非科学的・非現実的と分かっているけど きっとある世界です。


死のデジャブ

2011年03月14日 | 病棟

今年は一月から ツイてます。もちろん、病棟用語のほう。

急変で送り、エンゼルケアを受けるパターンで、ほぼ全部のエンゼルやってます。

もう、みんなから「★★さん明日逝くね。マム勤務だから。」と死神扱いされてます。

 

うちはナースの数が圧倒的に足りないので、夜勤バイトさんを4~5人頼んでいます。

そのうちの、月に2回位しか来ないMさんが あたしといいコンビです

先日も「●●さん 今夜逝くと思います。任せてごめん」とMさんに送り、

翌朝6時28分 「只今亡くなったが他患ケア入れず。早めに来て~~」とメール着。

病棟の6時から申し送りまでは やること多くて只でさえ多忙なんです。

検温・モーニングケア・採血・内服介助・食事準備・トイレ介助・記録と報告・・・・・。

目が覚めれば患者さんからのナースコールもぐんと増えます。

「 6時28分!? そりゃ大変!今行く!」  またしてもエンゼルケア係の出番だ。

 

 

そのMさんから また6時25分メールあり。

(おかしいなあ?危なそうな患者さん 、いないはずなのに・・・)

メールを開くと 「只今一人亡くなった。早めに来て」

・・・・デジャブ???送信ミス???

「あの~ 間違いメール?デジャブ?」と送り返すと、「マジだから早く来て!!!!」

 

6時には笑顔で手を挙げて挨拶してたじいちゃんが

25分後に経管栄養を外しに行ったら すでに心肺停止だったそうです。

 

ご遺体を送り出してから、頭のてっぺんから体の裏表、盛大に塩を振ってもらいましたよ。

「マムの漬物が出来そう(笑)」とからかわれても、あたしは本気。

 

・・・ああ、ナンマンダブ ナンマンダブ・・・


鬼の選択

2010年11月15日 | 病棟
70歳になったばかりの頑固爺が入院してました。
公園でうっかり転んだのを近所の人に見られたのが恥ずかしいという、
たったそれだけの理由でベッドから出なくなり、あれよあれよという間に筋肉は落ち
廃用症候群で痛みを訴えるは 誤嚥するは の状態になりました。
他には病気も認知症状も全く無く、頑固でわがままで依存的な性格が「 病」 でした。
勿論家族にとっては非常に厄介な存在になり、
妻の関節手術の間だけ預かるはずがズルズルと長期へと移行したのでした。

入院から入所へ変わり、爺は更に依存が強くなり
足の位置を変えたり食事をすることすら 自分でしなくなりました。
「足の位置をかえろ。・・・痛てえなあ 全く。もうちょっと丁寧にやれよ」
「食べろ食べろって急かすんじゃねえよ。待ってろ!!」
一口食べさせる度にギャッジベッドを上げ下げして時間を稼ぎます。
まるで 嫌がらせのように。
介助しなければ家族の持ってきたお菓子しか食べず
どんどん痩せていくので、仕方なく爺に手を掛けていたのでした。



「ねえ、問題は手が掛かる事じゃなくて 手を掛けちゃうことだよね?」
「私たち 爺が悪くなる手伝いをしているようなもんだよね?」
「早くリハビリを受ければ、機能回復の可能性は充分あると思う」
「でも、うちの病院にはPTもいないし スタッフも足りないから
 ストレッチを時々 無理矢理することぐらいしか出来ないよ」
「家族は転院を受け入れないよね。長期になってホッとしてるもん。
 この間なんて 早く死んでくれたほうがいいって話してたし」


何度となく 爺の看護の方向性について話し合い、迷って迷って決めました。
「爺からも家族からも苦情が出ても、鬼になろう!」です。


家族が来るたびに 爺はうちの病院の対象じゃないから
リハビリ病院を探して欲しいと繰り返し、
「親が何も出来なくなるのを望むのは 良いことではないよね?
早くリハビリを始めなくては 受けてくれる病院もなくなるよ」なんて
プレッシャーかけて脅迫まがいの話もしながら、
リハビリを受けてくれる病院を探しました。
そして最後には、追い出されるという受け取り方で不満を持ちつつ
転院されて行きました。
みんな、爺がどうかいい方向に向かいますようにと 願って見送りました。


先日 爺のご家族が病棟に来てくれました。
爺は体重も6キロ増え、厳しいリハビリに最初は嫌々
でも車椅子の自走が出来るようになった今は、
「仕方ねえなあ、リハビリ行ってくっから」と
言葉こそ渋々なのですが、頑張っているそうです。

「今回もね、ここに行くって話したら
 俺も車椅子で行こうかなってそわそわしちゃってね。
 鬼看護婦たちに会いに行きたいって。
 爺ちゃんは最初にここの病院に入院してよかったって
 今は家族で話してるんです。
 転院を勧めてくれた意味も 今はよく分かるし
 最初に言われた時に早く動いていれば良かったって
 ちょっと後悔してます。」


病棟の鬼たちは 次は爺が車椅子で来てくれるのを待ってるよと
伝言を託しました。







誇りに賭けて

2010年05月11日 | 病棟
介護で預かっている64歳の「お父さん」が 急変しました。



高校生・中学生のお子さんを抱え
バリバリ働き盛りの年に 突然 クモ膜下出血で倒れました。
範囲が広く 命を落とさなかったことが不思議なくらいのダメージでした。
第一発見者の息子君は すぐに救急車を呼ぶことが出来ずに
働いているお母さんが帰ってくるのを お父さんの傍で待ちました。
どんなに不安で 怖かったことでしょう。

お父さんは 全く意思疎通の出来ない 
「横たわる人」に変わりました。
意思の存在さえも あるとは言えません。
息子君は あの時自分がすぐに救急車を呼んでいたら…と
大きくなった今 後悔の念に苛まれています。
お父さんの病室に入ることが出来ません。
向き合えないのです。


うちの病棟に預かって もう7年になります。
脳の表面が 半分溶けているような状況と
脳外科の医師から 説明がありました。
予備体力も無いので 何度も生死を彷徨いました。
(風邪を引いて 熱が出た)
(下痢をした)
(突然 痙攣を起こして 呼吸が止まった)
それでも 乗り越えて7年 ずっと同じベッドで横たわっています。


今回は 黒色の吐物を多量に嘔吐してから発熱、急激に血圧が下がりました。
ショック状態です。
全身にチアノーゼが出て 足底は紫色、SPO2は測れません。
気切部から 痰を吐き出す力も残っていませんでした。
血圧は昇圧剤を使っても 60/台。
酸素5リットルで SPO2=60~80%↑↓
HRは120~150、点滴のため タヒってます。

奥さんは 昼間仕事をしながら
2日間 病棟に泊まりました。
私が夜勤の昨晩、
「疲れちゃったから家で休んでくる。
 お父さんは 死なないから大丈夫。
 明日の朝来るから、今晩は よろしくお願い」
そう言いました。
笑顔だけど 目が笑ってない。
お願い の言葉が 重い。

…ええ~~い!
寿命を司る神様と 戦ってやろうじゃないの、看護婦の 誇りに賭けて!!

院長と連絡を取りながら できる事はみんなやった。
一晩の2/3は お父さんのベッドサイドに 居た。
昇圧剤調節しながら、クッション使って排痰促したり。
こういう状況では 動かせば血圧下がり
昇圧剤UPすれば HRがタヒり
動かさなければ 痰が詰まってSPO2下がり。
消化管出血はフレッシュじゃない。
WBC33000超え CRP11超えだから
誤嚥性肺炎が直接のショックの原因だろう。
じゃあ、やんなきゃいけないのは…。

空が明るくなって HRもSPO2も 落ち着いてきた。
HR120台 BP80/台 SPO290~94%(5㍑)
まだまだ正常範囲じゃないけど
手の届くところに お父さんは 帰ってきた。
尿が300ml出た(まだIN OVERだけどね)。
上半身の小刻みな痙攣も治まった。
カルテ記載:「循環動態安定傾向みえる」
やった~~!!


うっすらと生気の戻ったお父さんの顔を眺めておもった。


誇りに賭けて戦ったのは
私じゃない。
お父さんが 父や夫の誇りを賭けて 神様と戦った。


それでいいや。
それが 私の仕事。

大ちゃん

2010年04月15日 | 病棟
大ちゃんは 96歳のおじいちゃん。
誤嚥性肺炎で入院中です。

でも、元気、元気!!

性格が明るく ひょうきんなので
大ちゃんの病室からは いつも笑い声が聞こえています。


「大ちゃんは 昔 何の仕事しとったの?」

「はあはあ、風が強いですなあ」

「そうじゃなくて、えっと、仕事 です」

「ああ、孫は もう大きゅうなって 元気にしとります」

「違う違う!! お仕事  だってば!!」

紀ちゃんが  耳元で 叫ぶようにして尋ねました。

「おおおぉ、お仕事聞いておったのかい。

 わしゃ もしかして 耳が遠いのか、のう?


…… 大ちゃん、今頃気付くなんて 遅すぎ!!

確執

2010年04月15日 | 病棟
「カ・エ・シ・テ」

じいが真っ直ぐに私を見つめて言いました。

「カ・エ・シ・テ」


「・・・なにを返すの?
    なにを探せばいいの?」


「…家二…帰シテ…」 

小さな声で 酸素マスクの下から。

一瞬返事に詰まって 手をさすりながら 答えました。

「今 家に帰ったら、苦しいよ。
 私たち 助けてあげられないよ。」

「…イイヨ。家デ 死二タイ。
  カエシテ。オネガイ…」

「…他に してあげられること、ある?」

「…フロ…」


お風呂に入ったら そのまま逝ってしまうかもしれない。
でも、もう命の終わりは見えています。
最後かも知れない じいの願いを 叶えたい。



紀ちゃんと一緒に 洗濯物を取りにに来た長女さんに
お願いしました。

「家に帰れませんか?
 移動は 今が最後のチャンスだと思います。
 せめて お風呂に入れたいんです。
 命が縮むかもしれないけど
 本人が 希望しているんです」


「母と相談しなくちゃ 決められません」

無表情に言われました。



返事がこないまま、二日後に じいは天国に旅立ちました。





家庭内に 問題を多く抱えた患者さんでした。
入院時に握り締めていたお財布には

たった五千円しか入っていませんでした。

それでも 「妻には渡さない!!」と 強い目で言い切りました。

妻は 「どうせ死ぬんだから必要ない」 と

訪問入浴も 介護サービスも 拒絶し続けていたそうです。



どちらに非があったのか 知る由もないけれど

看取る者として じいの最期の希望を叶えてあげたかった。
 

あっ、ブルーシートが!

2010年02月11日 | 病棟
先日、といってもだいぶ前ですが
温かい風が吹き荒れた日がありました。
病棟の二重窓を通しても風鳴りが聞こえ
こんな日は 洗濯物も乾燥室行きです。
屋上で干しあがったパリパリのタオルが好きなんですが
患者さんのパンツが 空飛んだら困ります。


昼休みに3F休憩室で談笑していた私の視界を
青いものが横切りました。
「げっ!!!!!!」
指差す先を見たみんなが 猛ダッシュしました!

病室に風呂を設置して
患者さんを入浴させることがあります。
水漏れを防ぐために 工事用ブルーシートを
二つ折りにして敷いているのですが
大きすぎて乾燥室には干せません。
仕方なくベランダの手擦りに掛けていました。
それが 道路に飛ばされている!!

駅前の通りなので 大きくて一直線の道路を
まるで帆船のように 風を受けて走るシート。
風が弱まると着地し もう少しで捕まえられるところで
また びゅ~~んと飛んでいきます。

「ま~~て~~っ!」

生き物じゃないから叫んだって仕方ないのにねえ。


「ま~~て~~っ!!!」

(…あれっ?今 おやじ声で 待て~って聞こえた…)
振り返ると 工事のおっさんもヘルメットを被ったまま
追いかけてきます。

自転車に絡まってやっと捕らえた時には
みんなゼイゼイ息が切れて 動けず。
ブルーシートは工事現場の物でした。
病院のシートは植え込み陰の高い木に引っかかってました。

休憩時間が半分になっちゃったけど
自動車や通行人に絡んだりして
事故にならなくて良かったよ・・・。

幽かな鈴の音

2010年01月27日 | 病棟
夜勤をやっていると 
時折幽かに鈴の音が聞こえていました。
・・・ちりん・・・ちりん・・・と、
病棟が寝静まった頃に 聞こえるのです。
風鈴のような澄んだ高い音ではなく
お財布に付いているような 小さな鈴の音。
でも 思い当たる音源は無く
気のせいか ECGモニターの電源の
高周波か何かだと 自分を納得させていました。


この間 夜勤バイトのNさんが何気なく
「私には下の階の物音は拾えないなあ。
 鈴の音は聞こえるんだけど・・・・」
と言ったんです。


鈴の音、聞こえるのは私とNさんだけのようです。

内服薬すべらーず

2009年09月17日 | 病棟

食思不良でずいぶんと体重を減らして、Hさんが入院してきました。
夏の間 週に1回位の頻度で外来で点滴をしていましたが
体力が尽きて 帰宅途中に転倒するようになったため
うちの病院のおいしい食事と点滴で回復させることになったんです。

Hさんは90歳近いけれど 痴呆は全く無く
奥さんと二人で生活しています。
無口ですが穏やかでユーモアもあるおじいちゃん。
ところが 奥さんのほうに問題が・・・。

アナムネをとっていると奥さんが横から入ってきて
話し出しました。
邪険にとめるわけにもいかず 適当に相槌を打っていると

「最近、うちの主人、風呂が困っているんです。
 よく転びそうになるんです。
 滑らなくなる良い飲み薬を出してもらってください」

・・・・・の、飲み薬ですか!?


真顔で話す奥さんを見て、体重減少の原因は
この辺りにあるんじゃないかと感じました。
きっと真面目でしっかり者のHさんは
誰にも相談せず、頼らず一人で対処してたんじゃないのかな?


ご神託?!

2008年08月01日 | 病棟
春江さんは、オウム返しがほとんどで
会話は成り立つような、成り立たないような
微妙な患者さん。
それでもおむつ交換後に
「有難うございます」と言ってくれる事もあり
全く意思疎通が出来ないわけではなく。
だから、一緒に唱歌を歌ったりしています。

先日は人手不足で忙しく、
なかなか状態の落ち着いた患者さんの傍で過ごせず
代わりにラジオをつけていました。
つけた時には歌謡曲が流れていたのですが・・・・。

「2-5、出ました!!」
「○○○、コーナーで抜けた!」
あれれ、春江さんの大きな声が聞こえる。

いつの間にかラジオが競馬中継に代わっていたんですね。
冗談で 「春江さん、次は何番が来そう?」と尋ねると
ちゃんと番号を教えてくれる。
・・・・もしやこれはご神託??

「欲とは全く関係ない春江さんのご神託なら
 案外当たったりするかもねぇ」
「…ねえ、ちょっと試しに買ってみようか?」
冗談ともつかぬ顔の あやちゃんとわたしでした。